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バイデン氏・岸田氏の歓待よりも尹大統領が優先すべきもの

登録:2023-05-12 23:39 修正:2023-05-13 10:24
尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相が7日、ソウル龍山の大統領室庁舎で韓日拡大首脳会談のために入場している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「政治的勇気と個人的献身に深く感謝したい」(ジョー・バイデン米大統領)

 「決断力と行動力に敬意を表する」(岸田文雄日本首相)

 今年3月から続いた韓日、韓米首脳会談を通じて、韓米日協力基調の先頭に立った「功労」が認められた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、この2週間ほどのあいだに受けた賛辞だ。しかし外交の場で、正確には米国と日本の首脳に「感謝され、敬意を表される存在」になった尹大統領を見つめる国内世論はそうやさしくはない。韓日関係というコップの半分を韓国が先に満たす前に、世論収集や野党と市民社会に向けた説明の過程を省略したという点が、最大の理由として指摘される。11日に発表された大韓民国の成人1007人を対象にした全国指標調査(NBS)の結果によると、韓日首脳会談に対する「否定的評価」は52%、「肯定的評価」は38%だった。シャトル外交の復元、福島原発汚染水に関する視察団派遣、広島の韓国人原爆犠牲者慰霊碑共同訪問、地方航空路線の拡大などは、「コップの残り半分を満たすほど」十分ではないという評価だと読み取れる。これは、8日に大統領室が「尹錫悦政権になって推進してきた価値観中心の外交が成果をあげつつある」「韓日関係で主導権を握り、韓米核防衛共同宣言(ワシントン宣言)を引き出す重要なテコの役割を果たした」と自評したこととも、少なからぬ温度差がある。

 説得するという作業を省いた尹大統領の一方的な決定は、大統領に与えられた国民統合という課題を放棄するという宣言とも読み取られた。龍山(ヨンサン)の大統領室前はほぼ毎日のように、「一方的に与えるばかりの対日外交糾弾」や「韓米日三角協力歓迎」といった、相反する主張のプラカードを持った市民の叫びに覆われている。それでも尹大統領は9日、就任1周年を控えて「外交・安保ほど大きな変化がなされた分野はない」と述べ、最大の成果として外交分野を挙げた。

 尹大統領は19日から広島で開かれるG7首脳会議に招待され、再びバイデン大統領、岸田首相と顔を合わせる。G7出席を機に韓国を訪れるカナダのジャスティン・トルドー首相(17日)、ドイツのオラフ・ショルツ首相(21日)との首脳会談も予定されている。今回の会議を基点に、米国中心の西側体制への密着度を高めようとする尹錫悦政権の意志がいっそう露骨になるだろうという観測が出ている。

 G7の議題としては、ロシアのウクライナ侵攻、中国けん制という目的が盛り込まれたインド太平洋戦略などがテーブルに上る方針だ。会議の後にはウクライナを支援する内容が盛り込まれた別途の文書を採択するという報道が相次いでいる。強力な韓米同盟と韓米日協力、「価値観外交」を前面に掲げた成果をあげなければならないという目的に重点を置くあまりに、ともすれば対中、対ロ政策の基本の軌道が揺れかねないという懸念が出ているのもこのためだ。議長国である日本は、福島原発汚染水の放出問題に対する国際的な認証が切実だ。政府関連・傘下機関の専門家中心の「韓国視察団」が、日本政府の名目づくりに利用されるのではないかという不安は、杞憂だとばかりは言っていられないだろう。

 協力と競争の間、49対51の間のどこかで最大値の国益を確保しなければならない国際政治の現実にあって、戻れない川を渡っている尹大統領が、簡単に経路を変えることはなさそうだ。甘い賛辞と歓待よりも実質的な国益を優先してほしいという国民の願いは、尹大統領に届くだろうか。

キム・ミナ|政治チーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1091588.html韓国語原文入力:2023-05-12 19:04
訳C.M

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