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[寄稿]「類似同盟」に巻き込まれた韓国の安保、韓米同盟が守ってくれるだろうか

登録:2023-04-03 00:15 修正:2023-04-03 08:24
今年3月10日、慶尚南道昌原市鎮海区の海軍士官学校で開かれた第77期卒業および任官式で、韓米同盟70周年を記念して韓米海兵隊員が共に搭乗した水陸両用強襲車と装輪装甲車が上陸作戦の試演を行っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 ジレンマとは二つの選択肢のうちどれを取っても困難になる場合のことをいう。安全保障のジレンマとは、自国の安全保障の強化を目指した政策がむしろ安全保障を損ねる結果をもたらす現象だ。敵対国間で上昇する軍拡競争を表現する時によく使われる。安全保障の概念が経済、環境、サイバー空間などの領域に拡大され、軍拡競争以外の分野でも類似したジレンマが現れる可能性もある。

 友好国と軍事・経済同盟を拡大すれば、競争相手国も同じ政策を施行し、一対一の対決よりさらに複雑な事態に巻き込まれる危険性が生じるため、危機や紛争の規模はさらに大きくなりかねない。これは「陣営化のジレンマ」といえるだろう。第二次世界大戦はもちろん、冷戦時代にも陣営化のジレンマが現れた。大国と弱小国との軍事同盟でよく提起される非対称同盟のジレンマも難題とされる。弱小国側は安全保障において大国側の援助を受ける見返りに、政策の自律性をある程度手放さなければならない。その過程で大国の紛争に巻き込まれたり、協力を拒否してパートナーから同盟を破棄されたりするリスクを甘受しなければならない。

経済パートナーの中国との「断絶」を受け入れ

 安全保障のジレンマは国防のジレンマにつながる。これは二つの側面からみることができる。一つは、国防を強化するために必要な(たいていは過度な)国防費を支出した場合、限られた国家資源の配分が乱れ、経済が厳しくなり、それが国防費の支出余力の低下をもたらし、結局国防がむしろ弱まる現象だ。もう一つは、敵対双方の軍事力を構成する兵器の破壊力が過度な場合、戦争で「勝利」しても互いに回復不可能な破壊が発生し、本来の目的である国家の「防衛」が無意味になる場合だ。これは米ソ間の核兵器競争で提起されたいわゆる「相互確証破壊」(MAD:Mutual Assured Destruction)概念が克明に示す「過剰破壊のジレンマ」と呼べる。

 韓国の安全保障と国防においては、前述したジレンマがすべて現れている。他の国々とは異なる歴史と戦略的環境が作った「構造」のためだ。長い分断体制と停戦体制(法的な戦争状態)、そしてその過程で樹立された韓米同盟体制は、様々なジレンマが絡み合う基本条件を構成している。南北の通常戦力競争は、北朝鮮の核兵器開発によって新たな局面で加速化された。韓米同盟体制において核軍備は米国が担当する。核兵器は配備されないが、米国の拡大抑止(核の傘)の「コミットメント」が強化されたことで、韓国は核対応に向けた先端通常戦力の増強に注力してきた。北朝鮮はこれに対応するため、核ミサイル能力を高度化している。その間、核戦争の危険性は高まり続けている。

 一方、韓国は非対称同盟の弱いパートナーとして、政策の自律性が制限され、強いパートナーの世界戦略に協力することを余儀なくされる。韓国はすでに陣営化のジレンマの中に深く引きずり込まれている。米国は北東アジアで日本と韓国を束ね、中国を牽制するための事実上の3カ国同盟の結成を目指している。これに対する反作用は、中ロの結合とそれに対する北朝鮮の参加として現れるほかない。結果的に韓米日の「類似同盟」の最下位パートナーである韓国は、米国と日本の戦略的利益に服務しながら、軍事的には核保有国を相手にし、経済的には最も重要な貿易パートナーである中国との「断絶」を受け入れなければならない。

 国防費のジレンマは、韓国の経済規模が飛躍的に成長したことで緩和された。しかし、韓国の軍事力は世界6位と評価され、2023年の国防予算は国内総生産(GDP)の2.3%(57兆ウォン)を占める。2021年の場合、国防費の比重が2.55%で、同期間の日本(0.97%)、中国(1.23%)、ドイツ(1.33%)など経済・技術分野の主要競争国に比べほぼ2倍の水準だ(「2022国防白書」)。それだけ相対的に大きな機会費用を支出しているわけだ。

 北朝鮮の国防費のジレンマは、韓国よりも深刻なものとみられる。核兵器と各種ミサイル開発にかかる費用は、経済体制が異なるため貨幣に換算するのは難しいが、少なくとも「核・経済並進路線」を「経済建設総力集中路線」に変更し、再び「並進2.0」ともいえる国防力強化政策を推進している2019年以降の状況は、国防費のジレンマを必然的に伴うだろう。

米国の「略奪的経済政策」も当然視

 過剰破壊のジレンマは核軍拡競争の産物だ。相手の核攻撃は、「全部防げない限り、全く防げない」。3月の韓米合同演習期間中、米国の戦略資産は北朝鮮に対する即時核攻撃能力を誇示した。一方、北朝鮮が「運用訓練」を行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)、戦略巡航ミサイル、核無人水中攻撃艇などの攻撃兵器は、韓米合同軍事演習だけでなく国防そのものの意味(ジレンマ)を改めて考えさせる。北朝鮮またはその政権が怖いからではなく、実在的脅威に直面した人間の本性が危険であるためだ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足から1年間、極めて単純明快な安全保障政策の大枠が明らかになった。「力による平和」を旗印に掲げたが、その中身は韓米同盟であらゆる安全保障と国防の問題を解決していくということだ。すなわち、「韓米同盟による、韓米同盟のための、韓米同盟の」解決策である。要約すると次のようになる。

 「軍拡競争のジレンマは、韓米同盟の強化を通じて相手を屈服させることで解消される。陣営化は、米国主導の同盟体に確実に入り込んで米国の信頼と支持を確保することで、相手陣営の『攻撃』を防ぐ効果がある。政策自律性の低下は、米国が提供する安全保障の利益を通じて補填する。国防費のジレンマは存在せず、国防費の便益のほうが(機会)費用を上回る。過剰破壊のジレンマは、米国の拡大抑止の実行力に基づいた核抑止を通じて回避できる」

 このような宗教的信仰に近い韓米同盟への「全賭け」戦略は、ジレンマをさらに深める。核軍拡競争の加速化、陣営化の亀裂現象と同盟に向けた米国の「略奪的」対外経済政策、国家主権と威信の低下、米国に偏った高価の兵器購入、核戦争による民族共倒れの危険性の増大などだ。

 韓国または朝鮮半島共同体が払わなければならない費用も、日増しに大きくなっている。安全保障と経済は心理的側面が強い。現状を真剣に見守りながら、内面の不安と恐怖を感じない南北の国民はほとんどいないだろう。これは南北それぞれの政治経済的不安定を生み出し、朝鮮半島の平和と繁栄という共同の死活的利益を危険にさらしかねない。

ムン・ジャンリョル|元国防大学教授。盧武鉉政権の国家安全保障会議(NSC)戦略企画室国防担当、文在寅政権の大統領直属政策企画委員会委員などを歴任し、『軍事科学技術の理解』などの著者として参加した。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1086087.html韓国語原文入力:2023-04-02 09:10
訳H.J

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