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「強制動員認めない日本の立場を完璧に反映…最悪の屈辱外交」

登録:2023-03-07 05:15 修正:2023-03-20 07:42
パク・チン外相が6日午前、ソウル鍾路区にある外交部庁舎で日帝強占期の強制動員被害者への賠償の解決策を発表している=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国政府は6日、日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者への賠償問題の解決策として、韓国の財団を通じて賠償金(判決金)を支給する「第三者弁済」案を公式に発表した。強制動員に対する日本政府の謝罪に加え、戦犯企業の賠償への参加など政府が日本側に要求していた「誠意ある呼応措置」は結局実現しなかった。長きにわたる法廷闘争で勝ち取った被害者の法的権利を踏みにじった「最悪の屈辱外交」だとする批判が提起されている。

 パク・チン外交部長官はこの日、ソウル鍾路区(チョンノグ)にある外交部庁舎で記者会見を開き、「行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団(支援財団)が、強制動員被害者と遺族に対する支援と被害救済の一環として、2018年に最高裁(大法院)で確定判決が出た3件の原告に、判決金と遅延利子を支給する予定」だと述べた。パク長官は「財源は民間の自発的寄与などを通して用意し、今後は財団の目的事業に関連して使用可能な財源をよりいっそう拡充していく」とし、「現在係争中の強制動員関連およびその他の訴訟が原告勝訴で確定する場合、同じく財団が判決金と遅延利子を支給する予定」だと付け加えた。ポスコや韓国道路公社、KTなど1965年の韓日請求権協定で恩恵を受けた韓国企業16社が財源の用意に参加するものとみられる。

 韓国政府の解決策には、日本政府の謝罪や戦犯企業の賠償参加は含まれなかった。パク長官は「日本側が、日本政府の包括的な謝罪と日本企業の自発的な寄与で呼応してくることを期待する」と述べるにとどまった。政府は、1月末の韓日局長級協議の直後まで「日本側の誠意ある呼応措置が出てきてこそ、被害者に会って説明でき、最終解決策も発表できるだろう」と述べてきた。特に外交部は、強制動員被害者への賠償を、支援財団主導の第三者弁済方式で推進する過程で発生する(日本の戦犯企業に対する)求償権の行使について「現時点では求償権の行使を想定してない」として、事実上放棄する意向を示した。

 この日に政府が発表した解決策は、日本側の主張をそのまま受け入れたものだ。これまで日本政府は「強制動員はなかった。1965年の韓日請求権協定で過去の歴史の賠償問題は終わった」として「したがって、2018年の韓国大法院の強制動員賠償判決は国際法違反であり、韓国が解決法を用意せよ」という態度を崩さなかった。

 にもかかわらず、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこの日、ハン・ドクス首相との週例会合の場で「未来志向的な韓日関係に進むための決断」だとしたうえで、「韓日関係が新たな時代に進むためには、未来世代を中心に中心的な役割を果たせるよう両国政府が努力しなければならない」と述べた。パク長官も「高まる国の地位と国力にふさわしい大乗的決断による、我々主導の解決策」だと自評した。

 政府は、強制動員被害者の問題をこのように決着させ、日本の半導体素材の輸出規制の解除や韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化など、韓日関係改善を加速させる方針だ。これを通じて、経済や安全保障などで韓米日の3カ国協力の強化も勢いづけるという構想だ。大統領室の周辺からは、3月中の尹大統領の訪日の見通しが出ている。大統領室高官は「両国が首脳会談のために相互訪問することが中断され12年目」だとして、「この問題を両国政府は直視しており、必要であれば議論する可能性がある」と述べた。

 「大乗的決断」を強調した韓国政府の態度に比べ、日本側は淡々とした反応だ。岸田文雄首相はこの日午前、参議院予算委員に出席し、議員の質問に答えるかたちで「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として今後も引き継いでいく」と述べた。「強制動員」についての言及はなかった。林芳正外相も公式会見抜きで記者団の取材を受け、「韓国政府により発表された措置を、2018年の大法院判決により非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価」するとし、「日本政府は、1998年10月に発表された『日韓共同宣言』(金大中-小渕宣言)を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認」すると述べるにとどまった。過去の歴史に対する「痛切な反省と心からのおわび」を含めた日韓共同宣言を継承するという言葉で「包括的な謝罪」を繰り返したのだ。

 日本製鉄や三菱重工業などの日本の加害戦犯企業も「本問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みと認識している」として、これまでの立場を再確認した。これらの企業は「『解決策』が公表されたことは承知しているが、韓国政府の国内措置について、当社としてコメントする立場にない」と回答したと朝日新聞が報じた。

 この日の政府の発表について、民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長は「屈辱外交に選ばれる2015年の慰安婦合意でさえ、『多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題』だと日本政府が責任を認めた」として、「強制動員が存在したという事実さえ認めない日本側の立場が完璧に貫徹された最悪の屈辱外交」だと述べた。

 強制動員裁判の被害者支援団体と代理人団は「韓国の行政府が日本の強制動員の加害企業の司法的な責任を免責するもの」だと反発した。両者は、最高裁で判決が確定した3件の原告15人のうち存命の被害者3人など政府の解決策に同意しない被害者と、日本企業の韓国内の資産に対する強制執行の手続きを継続すると明らかにした。日本側の謝罪と賠償への参加がない支援財団を通した賠償金の受領は拒否するということだ。

 強制動員について何の法的責任もないポスコなどの韓国企業が支援財団に基金を出すことは「背任」に該当しうるという指摘もあり、韓国で法的問題が発生する可能性もある。

チョン・インファン記者、シン・ヒョンチョル記者、東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1082410.html韓国語原文入力:2023-03-07 02:44
訳M.S

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