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「40年前とは状況が異なるのに…尹政権の労働政策はサッチャー政権と類似」

登録:2023-02-17 03:24 修正:2023-02-17 09:04
1986年5月、浦項工科大学を訪問した英国のマーガレット・サッチャー首相=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の労働政策は1980年代の英国のサッチャリズムを標榜しているようにみえる。しかし景気低迷の長期化、中産階級の崩壊や両極化などで新自由主義的処方に対する懐疑が広がっている今は、社会経済的背景が40年前とは全く異なる。新型コロナウイルスによる問題まで抱えた世界経済の状況に照らして、尹政権の政策は適切ではない」

 16日に韓国産業労働学会とハンギョレが共催した「労働改革、どこへ向かうべきか」と題する討論会で、梨花女子大学のイ・ジュヒ教授(社会学)は、現在までに明らかになっている尹錫悦政権の労働政策について「(企業のコストを考慮した)低賃金労働者拡大戦略、福祉受給資格の制限、労組に対する否定的規制などを推進した英国のサッチャー政権(1979~1990年)と似ている」と評価した。しかしイ教授によると、両政権を取り巻く社会経済、政治的状況には大きな違いがある。イ教授は「当時の英国は新自由主義政策で発生せざるを得ない貧困と両極化に伴う財政負担を、北海油田から得る収益などで隠しておくことができたが、(減税を推進する)韓国政府はこのようなコストに耐えられるとは思えない」、「サッチャー政権は雇用サービスや教育訓練に莫大な予算を注ぎ込んだ一方、尹錫悦政権は実効性のある教育訓練や雇用サービスの提供に対する関心が低い」と説明した。

韓国雇用労働教育院のアン・ジョンファ教授が16日午後、ソウル鍾路のチョン・テイル記念館で行われた「労働改革、どこへ向かうべきか」と題する討論会で発表している=パク・チョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 この日の討論会は、尹錫悦政権が「労働改革」を標榜しつつ打ち出した政策を批判的に考察し、代案を模索する場と位置付けられた。延長労働の改編を通じた労働時間の柔軟化▽成果と職務を強調する賃金体系改編の方向性▽「法治」を掲げた労働組合に対する攻撃などをめぐり、世界各国の経験、以前の政権との比較を通じてその性格を明らかにしようとするものだった。

 中央大学のイ・ビョンフン教授(社会学)は、労働改革を「労働力という特別な商品に対する取引規則を変えることで、柔軟性と硬直性とのバランスを取る作業」と定義したうえで、現政権の労働改革は「企業と経営界の宿願であった諸課題を偏向的に代弁しつつ、柔軟性を重視している」と評価した。とりわけそのやり方については「構造的な解決ではなく、労働者がストライキをすれば法と原則を強調しつつ違法性を強調し、労働組合を無力化しようとしている」と語った。

 専門家たちが提案した労働改革の方向性の一つは、労働基本権を保障する自律的な労使交渉の枠組みを作ろうというもの。とりわけ注目されるのは、企業ごとに別々に行われる労使交渉によって深まった両極化を、超企業・産業別団体交渉で克服するという方法を提案したことだ。誠信女子大学のクォン・オソン教授(労働法)は「特殊雇用労働者は労働者なのかという問題は、すでに裁判所の判断などで終わっている論争だ。彼らは明らかに労働者だ」とし、「超企業・産別交渉などを通じて、彼らの属する産業単位でどのように労働条件を作っていけるのかを考えるべき時に来ている」と語った。

 梨花女子大学のパク・クィチョン教授(労働法)は、企業別交渉にとどまらない様々な交渉を可能にするためには「交渉窓口の単一化」制度が持つ問題点の改善が必要だと指摘した。現行の労組法によれば、一つの事業所に労組が複数ある場合は統一された代表労組だけが使用者と交渉できるが、この制度は企業別交渉を前提としているため産別交渉を難しくしている。パク教授は「交渉窓口の単一化制度があるため、多数の下請け企業の労働者が(労働条件に対する実質的支配力を持つ)元請けとどのように交渉するのかも問題」だとし、「立法的解決策が必要だ」と語った。

パン・ジュンホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1080063.html韓国語原文入力:2023-02-16 20:12
訳D.K

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