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ベトナム戦争での民間人虐殺、何をなすべきか
何をなすのか。最優先は公式な真相調査の手順だ。この手順が進められてはじめて韓国政府は見解を出すことができ、謝罪や被害回復措置が可能となる。だが、何の準備や検討もなされていなかった。これは保守的な用法による「国益」にも合致しない無責任さだ。
公式な真相調査については、段階を踏んだアプローチが必要だ。被害国であるベトナム政府との共同調査が原則だろうが、ベトナム政府がこの問題に消極的なのは事実だ。したがって、共同調査は第2次調査で行うことにして、韓国政府単独で第1次調査を進めるべきだ。自国の軍の戦争犯罪容疑を調査するのは当然であり、調査する義務もある。調査対象は韓国政府の文書資料、米国の資料、参戦軍人の証言などだ。ベトナムの被害者の証言については、希望者の証言を聴取するという方式であればベトナムとの主権衝突の問題も発生しない。
韓国政府の単独調査は3つのやり方を検討できる。1つ目は、現存する過去事調査機関である真実・和解のための過去事整理委員会(真和委)を通じた包括的な職権調査。1968年2月24日に130人あまりが虐殺されたハミ村の事件の5人の被害者がすでに2020年に真和委に真実究明を申請しているが、真和委は政治的負担を理由として調査そのものを無期限に保留している。真和委がハミ村事件の調査開始を決定し、同時に職権で他の虐殺事件の包括的調査をはじめれば良いのだ。
2つ目は、2018年に政策企画委員会が提案した通り、国防部の傘下に調査委員会を設置するというもの。2017年に発足した「5・18(光州抗争)特別調査委員会」と同じ方式で、国防部訓令にもとづいて民間が主導的に参加する委員会を立ち上げ、3年ほどの活動期間を保障すれば良い。
最後のやり方は、立法を通じた独立した真相調査機関の設置だ。先の第20代国会で関連法案が上程されたものの、任期満了で廃案となっている。現第21代国会では民主党のカン・ミンジョン議員が代表発議者となり、第20代よりはるかに多くの議員が名を連ねる法案が準備されている。
ベトナムが望まない? 誤った合理化
ベトナム政府がこの問題に消極的だということは、これまで韓国政府が真相究明を無視する主な口実となってきたが、これは2つの面で誤っている。
まず、韓国政府が謝罪し、被害回復措置を取るべき対象は、ベトナム政府ではなくベトナムの被害者だ。ベトナムの被害者たちが韓国政府を相手取って訴訟まで起こして勝訴した状況にあって、いつまでベトナム政府を言い訳にするのか。ベトナムの被害者たちは謝罪と被害回復措置を望んでいる。
次に、ベトナム政府の態度も変わりつつある。今回の判決についてベトナム外務省の副報道官は7日、「フォンニィ・フォンニャットの虐殺は20世紀後半に外国の軍隊がベトナム国民に対して犯した多くの虐殺のひとつ」、「韓国の判決については大きな関心を持って見守っている」、「ベトナムはベトナム国民の正当な権利を保護することを非常に重視している」と述べた。ベトナム政府の公式見解は「虐殺は歴史的事実であり、この問題について政府は直に取り組みはしないものの、被害者の権利行使は保証する」だ。
韓国政府は速やかに第1次調査の準備をはじめるべきだ。ベトナムの退役将軍レ・チ・トゥアンは、1999年12月の「ハンギョレ21」でこう語っている。「国民代表、記者代表、政府代表、国防省代表を集めて調査団を組織せよ。そしてここに来て住民たちの話を直に聞け。ビンディン省19号線に沿ってどう猛なトラがベトナムの住民に何をしたのか。韓国軍がどう苦しめたのか。どうか来て事実を知ってほしいということだ」。この真っ当な要求に答えなければならない。
イム・ジェソン|弁護士(ベトナム戦争民間人虐殺国家賠償訴訟被害者代理人) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )