(1)から続く
-任期を終えて帰郷する姿が本当に美しいと思いました。
「私にとっては故郷に帰るのがとても当たり前のことでした。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が退任した時も釜山に帰ってきました。釜山出身の長官もかなり多いですが、釜山に帰ってくる人はほとんどいませんでした。地域間の不均衡、首都圏の過密と地方の疲弊は結局人とお金の問題ですよね。地方の人材たちが退任後、故郷に戻って故郷のために活動してくれるといいのですが、ソウルを離れようとしません。盧武鉉政権で民情首席と秘書室長を務めたので、ソウルにいたら法律事務所の顧問でもしながら経済的な余裕を得ることができたかもしれませんが、私は当然釜山や慶南に帰るべきだと思いました」
-1980年代に読者と著者が共にする歴史紀行を約50回行い、書院やお寺で宿泊しました。韓国の歴史の中で書院や寺院は教育と修練の空間でした。文前大統領が平山(ピョンサン)村に本屋を準備していると聞いて驚きました。
「はい、本屋を開こうと思います。地方にも意味のある本を出版する出版社があります。私が住んでいる平山村に小さな本屋を作り、様々なプログラムを展開できると思いました。すでにいろんな地域で書店運動が起きていますよね。忠清北道槐山(クェサン)と全羅南道谷城(コクソン)、済州島(チェジュド)のオルレギルに書店がオープンし、地域文化運動と連帯しています」
-今準備している本屋は在任中に構想していたのですか。
「あらかじめ構想していたものではありません。この村の小さな家を改築してオープンしようと思います。まだ静かに準備している段階です。まず、私がこの平山村の役に立てることは何があるのかという考えから始まりました。平山村は本当に静かで美しい田舎なのに、私がここに自宅を建てたことで、デモによる騒音と罵詈雑言がこの静かで美しい村を覆ってしまいました。住民たちが精神的に大きなストレスを感じています。ここにある飲食店やカフェ、お店を経営する方々が被害に遭うのを見て、私がお手伝いできる方法はないかと悩んだ末に、村の本屋を思いつきました。近所の村の住民たちもいつでも本屋に来て本を読んで、お茶を飲んで、またコミュニケーションするサランバン(昔の家屋で書斎や応接間として使われた交流の場)になればと思いました。隣の空間と連携する小さな事業もできるのではないかと思っています。この地域の農産物を販売するコーナーを作れば、村の住民の所得にも多少は役に立つでしょう」
-本当に愉快な発想です。特に「小さな本屋」であることがいいですね。
「私は本の力を信じています。本が世界を美しく変えることができると思います。若者が携帯電話に集中するにつれて本から遠ざかっていますが、それでも本の価値、本の力は永遠でしょう。携帯電話に代えられない紙の本の固有の機能があると信じています」
-中国の南京に「先鋒書店」があります。軍用地下バンカーに作られた書店ですが、南京の文化スポットになりました。この書店を創立して率いている銭小華さんは2018年6月、浙江省松陽県陳家鋪村に先鋒書店の支店「平民書局」をオープンしました。本を愛する人たちが中国全土からやってきます。平民書局ができてから、陳家鋪村は文化芸術村として生まれ変わりました。構想している本屋は平民書局のようになるようだと思います。
「本屋をオープンしたら、地域の皆さんと一緒に展開できる企画を構想しています。学校の先生たちが行う生徒たちの本サークルと連携するプログラムもできるでしょう。すぐ隣に通度寺(トンドサ)があります。本殿も美しいですが17の庵も美しいです。通度寺と連携して仏教プログラムはもちろん、韓国の歴史と伝統を勉強するプログラムも企画できます。この村には陶磁器職人がたくさんいます。彼らと一緒に陶磁器作りの体験もできます。この地域と自然が持っている長所を活用すれば、本屋を越えて文化芸術的な企画ができると思います。全国と連帯するブッククラブを通じて読書運動もできるでしょう。出版関係者や作家、知識人と一緒に創意的な企画を作りたいです」
-各分野の本の専門家が良い本の選定を手伝ってくれるでしょう。本屋の名前は決まりましたか。
「『平山村の本屋さん』くらいで考えています。小さな本屋にしたいです」
-『世界書店紀行』を書きながら世界各地の名門書店を取材しましたが、それらの名門書店は一様にどんな本を並べるのか、つまり「選書」を最も重視していると言っていました。
「本屋独自のコンセプトを作って、このコンセプトに共感する方々が本屋に来て本を購入していく、そんな本屋にするのが良いのではないかと思います。単純に本の販売にとどまらず、著者と読者が会って対話する本屋、本を読む友達が訪問して討論する本屋にしたいと思います」
-霊鷲山を登ると、慶尚南道密陽(ミリャン)の表忠寺(ピョチュンサ)、慶尚北道清道(チョンド)の雲門寺(ウンムンサ)につながる嶺南アルプスが美しいですね。私は平山村の本屋を訪れる読者たちと、あの壮大な嶺南アルプスのススキ畑で本を討論する風景を頭に思い浮かべています。
「私は本屋の運営者として、どうすれば読者を本に招待するかを研究しています。出版もそうでしょうが、本屋もいろいろな人が手を携えて共にするプログラムだと思います。様々な地域の書店と提携するプログラムも考えられるでしょう」
-本屋を開くというのは、この時代が要求する人文芸術精神を共に具現化するというワクワクする計画ですね。いつ頃オープンする予定でしょうか。
「2月か3月にオープンする計画を立てています。本屋を開いたら私も本屋で働きながら、本を勧め、一緒に本を読みたいと思います。 ホームページを通じて本屋の日常の様子をアップしたりすると思います」
文在寅前大統領の読書精神と人文精神、本に対する愛が平山村の本屋を構想させ、「平山村の本屋」は私たちの時代の光になると確信する。