行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団のシム・ギュソン理事長が、強制動員問題解決法と関連し、「被害者の問題を包括的に解決できる唯一の方法は特別法の制定しかない」と述べた。
11日、本紙が入手した「強制動員問題の解決に向けた公開討論会」でのシム・ギュソン理事長の発題文によると、シム理事長は年末と年始の4日にわたり、強制動員被害者で構成された特別委員会および諮問委員会と面会し、「遺族支援のための特別法、いわゆる『ムン・ヒサン法案』のようなものを作るため、財団が先頭に立つと説明した」とし、このように明らかにした。
シム理事長が言及した「ムン・ヒサン法案」とは、ムン・ヒサン元国会議長が2019年12月に代表発議した法案で、記憶・和解・未来財団に韓日両国企業と個人などからの寄付で基金を作り、強制徴用被害者に慰謝料を支払う内容が含まれていたが、最高裁(大法院)判決を形骸化しようとする法案という批判を受け、国会では議決されなかった。
シム理事長が特別法の制定に言及したのは、寄付によって基金を作り財団が被害者に賠償を行った場合、法的問題が生じかねないと判断したためだ。韓国政府はこれまで、強制動員被害者支援のために設立された日帝強制動員被害者支援財団が韓日両国企業の自発的寄付を募り、その金を戦犯企業の日本製鉄と三菱重工業に代わって被害者に支払う「併存的債務引受案」を進めてきた。問題は、財団の設立根拠となる「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者などの支援に関する特別法」には財団が被害者に対する補償と賠償問題に関与できる根拠条項がない点にある。財団は定款に「被害者補償および返済」内容を追加したが、親法を越える改正と指摘された。これを踏まえ、ムン・ヒサン法案のように被害者認定の範囲、賠償方式まで全て盛り込んだ特別法を新たに作り、法的な問題を避けようとしているものとみられる。
シム理事長はこれと関連して「現在、政府が考えている案よりはるかに良い案があるにもかかわらず、それが可能であるにもかかわらず、屈辱的な外交をしているわけではなく、不可能な最善よりは可能な次善を選ぼうとしているようだと、(被害者に)説明した」と強調した。
シム理事長は強制動員賠償に使われる財源と関連しても「『社会的貢献』や『企業の社会的責任』(CSR)という側面から自発的に参加するよう誘導することが、被害者と企業が互いにウィンウィンとなる方法」だと強調した。また「請求権協定の恩恵を受けた企業は財団に寄付金を出す法的義務もなく、財団も寄付金を要求する権利がない。しかし被害者たちは当然これらの企業の参加を要求し、期待しているのも事実」だと語った。
外交部は12日、国会議員会館で「韓日強制動員被害者問題の解決に向けた討論会」を開催し、このような案などを公開し、最終的な意見収集に乗り出す予定だ。シム理事長は「財団が特別法の制定のために努力すると公開的に明らかにしたのは初めて」だとし、「私はこの約束を守るために最善を尽くす予定だ。財団内に特別法研究支援チームを作る予定であり、すでに予算も割り当てた」と明らかにした。
しかし、シム理事長の主張どおり特別法を制定するためには、野党の同意が欠かせない。だが、被害者と野党は戦犯企業の反省と謝罪もなく、損害賠償ではない他の企業の寄付金で賠償金を支払うのは明らかに強制徴用犯罪に免罪符を与えることだとして、併存的債務引受案に反対しており、難航が予想される。