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[ルポ]「死のトンネル」を避けて韓国に押し寄せた日本のナベヅルの群れ

登録:2022-11-24 06:49 修正:2022-11-24 10:30
ナベヅルの国内最大の越冬地である順天湾では、通常毎年11月10日頃にはナベヅルが到着を終えて越冬準備に入る。ところが、今年はこの時期が過ぎたにもかかわらず、数千羽がのナベヅルが集まる現象が起きている=順天市提供//ハンギョレ新聞社

 今月19日、全羅南道順天市(スンチョンシ)の順天湾湿地。

 周辺の農耕地にナベヅル数百羽が集まっていた。夕暮れ時になると、空から数十羽規模のナベヅルの群れが現れた。農耕地はすでにナベヅルたちで黒く染まっており、足の踏み場がないほどだった。毎朝ナベヅルをモニタリングする順天湾の名誉湿地案内員のカン・ナルさん(63)はこう語った。

 「18日の朝もナベヅルの数を数えましたが、3千、4千、5千…7千羽を超えていました。『これは大変だ』と思いました。日本の出水市でナベヅルの群れが斃死しているという話を聞きましたから」

隣国日本で起きたナベヅルにとっての「最大の災い」

 最近になって全羅南道の順天湾にナベヅルが「急増」し、1万羽近い個体が観察されている。 世界最大のナベヅル越冬地である鹿児島県出水市で発生した鳥インフルエンザを避け、ナベヅルが大挙して移動しているものと推定される。

 順天市順天湾保全課のチャン・イクサン課長は22日、「今月10日まではナベヅルが平年並みの3千羽到来していた。ところが先週から突然個体数が大きく増え、今日の調査では9800羽余りが観察された」と話した。

 ナベヅルはロシアで夏を過ごした後、冬を越すため韓国の順天湾と日本の出水に集まる。 普通11月10日頃にはほとんど到着し、冬支度に入る。

 ところが、今年は到来時期が過ぎたにもかかわらず、順天湾にはナベヅルが集まっている。18日以降、例年の2倍ほどの5~6千羽のナベヅルがさらに飛んできて、21日基準で9841羽が観察された。過去最大の規模だ。

ナベヅルが順天湾湿地近くの農耕地に集まっている。今年は1万羽近いナベヅルが到来した=カン・ナルさん提供//ハンギョレ新聞社

 専門家らは、日本の出水で発生した鳥インフルエンザ(H5N1)と関連があるとみている。ナベヅルは出水に到着するやいなや、かつてない死のトンネルを通っている。 21日までに367羽が斃死した。一時、一日に発見された死体数が97羽まで急増し、最近は少し落ち着いて40羽台になった。

 韓国水鳥ネットワークのイ・ギソプ代表は「日本でナベヅルの群れが長崎の海岸を経て北側に移動する姿が観察されたという」として、「群れが死んでいく姿に驚いたナベヅルが順天湾に押し寄せているようだ」と話した。彼は「このようなケースは初めて」だとし、「母親のナベヅルがここ(日本の出水)にいたら死ぬと判断し、順天湾に基盤を移しているのではないかと思う」と語った。

 ナベヅルは全世界で2万羽しか残っていない絶滅危惧種だ。この速度でナベヅルが斃死すると、種の持続可能性に赤信号が灯る。イ代表は「今年の冬、鳥インフルエンザのパンデミックが続くというのがより大きな問題」だと述べた。

「日本より密集度が低いため、パンデミックが収まることを期待」

 国内最大のナベヅル越冬地である順天湾でも防疫が緊急事態となった。残念ながら野生の渡り鳥に流行する感染症を人間が防ぐには限界がある。環境部のナム・ヒョンヨン野生動物疾病管理チーム長は「ウイルスが拡散しないように死体を早く回収するのが優先」だとし、「順天市と協力して鳥インフルエンザ緊急行動指針(SOP)に従って対応している」と述べた。 22日までに順天湾で斃死体として発見されたナベヅルは18羽。 23日、カン・ナルさんは「幸い今日は死体がなかった」と話した。

 チャン・イクサン課長は「出水ではナベヅルが限られた面積の水田で餌を探すが、この時に水を通じてウイルスが拡散したものとみられる。一方、順天湾ではナベヅルが乾いた農耕地で餌を食べて広い干潟を寝床にしているため、出水よりは密集度が低い方」だとし、パンデミックが収まることを期待した。

日本の出水とは違って、ナベヅルは順天湾で広い干潟を寝床として利用する。日本より密集度が低いため、順天市は鳥インフルエンザの拡散傾向が弱まることを期待している=順天市提供//ハンギョレ新聞社

 かつてナベヅルは、日本の出水に向かう途中、慶尚北道亀尾市(クミシ)の海平湿地など洛東江(ナクトンガン)で休んでいた。だが、4河川事業でこの一帯の砂地が消え、2010年代に入ってナベヅルは日本に「直行」する苦しい飛行をしなければならなかった。一部の群れは順天湾を中間寄着地にしたり、越冬地として訪れるようになった。

 ナベヅルは生態習性上、冬を過ごす間に生活の基盤を移さない。にもかかわらず、何かに驚いたかのように、日本のナベヅルはいま順天湾に大挙して移動している。引越し先を教えてくれた4河川事業に感謝するとでもいおうか。前例のない災いがナベヅルを襲っている。

 カン・ナルさんは「4河川事業で砂地がなくなり、順天湾の個体数が増えている状況だった」とし、「それでも幸い順天湾で2000年代から湿地保全活動をしていたため、代替生息地の役割を果たせた」と話した。カンさんは「日本の出水で斃死を目撃したナベヅルまで含め、来年からさらに多くの鳥が順天湾に来た場合、この一帯は感染症により脆弱になる可能性がある」とし、今年の状況を注視しなければならないと語った。

順天湾/ナム・ジョンヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1068511.html韓国語原文入: 2022-11-23 19:05
訳H.J

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