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「基本がなっていない」尹大統領が学ぶべき外交の基本(2)

登録:2022-10-04 02:47 修正:2022-10-06 06:51
「日本から見れば一種の虚勢を張る大統領、または本音では行動はせずに口で韓日関係を何とかしようとしていると解釈しうる」-キム・ジョンデ延世大学客員教授=パク・スンファ記者//ハンギョレ新聞社

(1のつづき)

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一度も行われたことのない韓米産業対話

[キム・ジョンデ] 全体的な過程を見なければならないが、5月21日の韓米首脳会談の共同声明の内容は「電気自動車(EV)、バッテリー、重要鉱物などについて回復力のあるサプライチェーンを重視し、そのため韓米で長官級の産業対話を開催することとした」というものだった。北朝鮮の核に対する拡大抑止公約を再確認した後にすぐに出てくる内容だ。ところが米国で7月に半導体法が成立し、8月にはインフレ抑制法が成立し、9月にバイオ産業振興の大統領令が下される間、韓米間の産業対話はただの一度も行われたことがない。インフレ抑制法が成立した後になって、イ・チャンヤン産業部長官があわてて出向いたのがすべてだ。

 さらに最近、米国は金利を引き上げるとともに、(韓国や台湾などの企業に米国に工場を建設させ)雇用を略奪している。米国が自由主義連帯や同盟国として世界金融とエネルギーの問題に対処するのではなく、はるかに強まった自国優先主義を示していることに対し、一度くらいは我々も怒る必要がある。

[ウィ・ソンナク] 国連総会を契機として特定国を非難するというより、「分水嶺に来ているのに自国利己主義ばかりに向かっていて、それでいいのか」というふうに、通商秩序について主張することもできる。シンガポールのような国はそうしている。自由貿易秩序に反するものは誰でも攻撃する。米国も例外ではない。韓国も相当な通商国家ではないか。対外依存度も高いため、2国間対話を行い、それで十分でなければ国連でも韓国の立場を表明できる。

 尹大統領の就任後、2回にわたって行われた外遊は、支持率調査に悪影響を及ぼした。韓国ギャラップが毎週行っている世論調査をみると、6月末のNATO首脳会議出席後、尹大統領を支持すると答えた人の割合(7月第1週)は前週より6ポイント下落している。今回の歴訪期間に実施された調査(9月第4週)でも、尹大統領を支持するとした人の割合は前週より5ポイント下がっている(信頼水準95%、標本誤差±3.1ポイント)。

 ニューヨークで尹大統領は日本の岸田首相と2年9カ月ぶりに韓日首脳会談を行い、冷え込んでいた関係を改善する糸口を見出そうとした。しかし岸田首相は、尹大統領を両国の国旗もない場所で非公開で迎えた。

尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相は先月21日(現地時間)、ニューヨーク・マンハッタンの国連総会が開催された国連本部近くのカンファレンスビルで午後12時23分から約30分間対話した/聯合ニュース

[キム] 尹大統領は韓日関係について歴史問題、安保問題、半導体問題を一緒くたにして1、2回の会談で一括妥結、すなわち「グランドバーゲン」ですべて解決するという。ある時には、国同士の膠着状態を首脳が会って一括妥結することも一つの方法たりうる。しかし韓日関係は異なる。韓国は三権分立と被害者中心主義という基調があるが、日本政府はこれが理解できていない。この場合、むしろ歴史問題と懸案問題を分離し、解決できないものはできないまま、歩み寄りが可能なものはできるだけ歩み寄るのが賢明なやり方だと、米国のシンクタンクも複数回にわたって注文している。解決せずに時間を確保することも最善の方法の一つだ。

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岸田「韓国が会ってくれと言うから会ってやった」

[ウィ] 韓日関係はこの数年間、徴用問題などの非常に紆余曲折の多い物事が絡み合っているため、判断は容易ではない。日本と首脳会談を行おうというアプローチは間違っていないと思う。だがそれに執着して、みっともなくしきりに下手に出て会談を行おうとするのはやめるべきだ。日本が首脳会談に応じること自体が(交渉)カードになってしまうからだ。日本は徴用問題について韓国の解決策が提示されない限り正式な首脳会談はできないとの立場だ。日本が「時間はないが、いついつにどこどこでならできそうだ」と言ったらどうなるか。行くことになるのだ。そのような状況は作るべきではなかった。

[キム] さらに衝撃的だったのは、首脳会談が終わった後だ。岸田首相が「韓国が会ってくれと言ったので会ってやった」と述べたと朝日新聞が報道したのだ。2番目の部分がさらに重要だが「今後の出方を見守る」、歴史問題の解決策を持ってくるのか見守るということだ。首脳会談直後に直ちにメディアプレーをしたのだ。

 韓国の大統領に(日本の)返事が荒々しく返ってきている。6月27日のNATO首脳会議に向けての出国の際も、まるで韓日首脳会談が行われるかのように言っていたが、行われなかった。頬を打たれるのが一度や二度なら「日本は本当にひどい」と言えるが、それが繰り返されれば打たれる方が変な人になってしまう。今その有様になりつつある。歴史問題のことを、韓日関係の障害物なのかそうでないのかという手段的なものとして見るのはやめようということだ。歴史問題は実存する問題だ。だが、この部分を(尹錫悦政権は)しきりに周辺部に押しやりたくて仕方がないのだ。そんなことなら解決を焦って追求してはならない。

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韓日の歴史問題を周辺に押しやる政府

[ウィ] 政府は今、解決策をひとりで探している。支持率も高くなく、野党とも激しい対立関係にある。(強制動員問題は)被害者もいる。政府ひとりで世論の集約がきちんとできるか分からないし、できなければ反対がさらに増える可能性もある。そんなことならやらないというわけにはいかないから、政府ひとりではやらないでほしい。超党派的な協議体を作って様々な意見を集約して方策を立てた方が良い。

[キム] (文在寅大統領時代に)民主党が様々な生産的代案を多く提示している。今、韓日関係を改善したいなら国会に助けを求め、ある意味トップ会談などの協治を活性化する最適な時期ではないかと思う。しかし、韓日関係の改善(の意志)以外はすべて逆に進んでおり、さらに悪化している状況だ。こうなってしまうと、日本から見れば一種の虚勢を張る大統領、または本音では行動はせずに口で韓日関係を何とかしようとしていると解釈しうる。引っかかってしまえば逆にやられるというのが日本の自民党内の多数派の解釈だ。このことを現実と認めずにしきりに会ってほしいと言うのは、私から見れば「ストーカー」だ。

尹錫悦大統領が10月1日午前、忠清南道の鶏龍台の大練兵場で行われた第74周年国軍の日記念式で観閲している/聯合ニュース

 尹大統領は歴訪中に起きた暴言問題に対して謝罪せず、「事実とは異なる報道で(韓米)同盟を傷つけることは国民を危険に陥れること、まず真相を確実に明らかにしなければならない」と声を強めた。尹大統領の執務室の机の上には、2022年5月にバイデン大統領が訪韓した際に贈られた「すべての責任は私が取る」という文が刻まれた額が置いてある。「すべての責任は私が取る」というのは首脳外交の基本だ。インフレ抑制法の韓国製EV差別やウォン・ドル通貨スワップなどの懸案の解決がまだ見えないのは、威勢のいいことを言っても隠せない。

[キム] 尹錫悦政権は、前政権とは全く異なる環境で政権を獲得し、国政を運営している。パーフェクトストームが予想される時期において安保危機まで加われば、果たして国はこれに耐えられるのか、この部分はひとまず点検が必要だ。

 一時は4強がみな味方だった。北朝鮮を制裁し、北朝鮮の核開発を阻止する際には、国連も北朝鮮制裁決議に協力してくれた。これこそ、米中戦略競争といっても韓国がどちらかに偏れない理由だった。「安米経中」(安保は米国に、経済は中国に)とは言うものの、実は韓国が中国を重視するのは安保問題が大きく影響している。北朝鮮を管理するには中国という存在が必要だったのだ。

 だが尹大統領が当選すると、不幸にもこのような外交資産が急速に消えてしまった。日本は韓国を無視しており、米国は自国優先主義がドナルド・トランプ時代に劣らず強まっている。意外に大韓民国は孤立するのではないかという不安も抱きうると思う。重要な外交資産を手放すことなく対立を管理する外交の柔軟性を発揮しなければならないが、最初から今や世界は新冷戦だ、このように認識してしまったのではないか。

 今、韓米日の結束に劣らず重要なことは、朝中ロの結束を防ぐことだ。韓米日はもともと結束している。朝中ロの結束の衝撃は大韓民国の安保コストを増加させる効果がはるかに大きい。

[ウィ] 韓中関係の30年の歴史を振り返ってみると、韓国には対中政策や戦略があったのか、私はなかったと思う。ただ漠然と過ごしていたら貿易が増え、人的交流も増えたので、放置していても得になると思った。逆に中国にとって韓国は北京とも近く、米軍もいるので、非常に重要な場所だった。親しげに引き入れるか脅すか、何とか解決しなければならない問題だと考えた。中国には正確な戦略と政策があったが韓国にはそのようなものがなく、事案が発生するたびに事案ごとに一貫性なくやって来た。その間に韓国は中国に非常に依存するようになり、その構図から抜け出すことが難しくなった。

 もはや尹錫悦政権は、文在寅(ムン・ジェイン)政権に反対するという観点から、米国との同盟関係をさらに発展させるべきだと考えている。そうなれば当然、中国と北朝鮮、ロシアからのリアクションがあるはずだが、それにどのように対応するかについての構想はまだ見ていない。先の米国のナンシー・ペロシ下院議長訪韓の際の状況を見れば、口では何とか言いつつも、実際の行動は対処がないという印象を与えた。中国は、今は強気に出るか柔らかく当たるか尹錫悦政権を見て測っているが、まもなく決めるだろう。そうなる前に我々は政策を構想して発表し、事案ごとに右往左往してはならないと考える。(了)

文/イ・ワン記者、写真/パク・スンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1061099.html韓国語原文入力:2022-10-03 13:25
訳D.K

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