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[寄稿]出生児1人当たり1億ウォンの養育費支給、できない理由はない=韓国

登録:2022-09-29 04:01 修正:2022-09-29 12:09
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 韓国のことわざに「足爪にトゲが挟まっているのは分かっても、心臓が膿んでいるのは分からない」というのがある。簡単に言えば「何が重要なのか」が分かっていないという話だが、人口問題に対する韓国社会の態度にぴったりの指摘だと思う。

 統計庁の資料によれば、2021年の韓国の出生児数は26万562人だ。2001年には55万9934人だったのが、20年間で半分以下に落ちた。1人の女性が妊娠可能な期間に産むと予想される子どもの数の平均である合計特殊出生率は、2012年の1.30から2018年には0.98、2021年には0.81にまで下がった。経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の1.6の半分水準だ。問題は、今後さらにどれだけ落ちるか分からないということだ。現水準の人口規模を維持するのに必要な合計特殊出生率は2.1だということだが、韓国社会はあまりにも遠くに来てしまった。15年くらい経てば韓国の人口は5000万人を下回るであろう。

 朝鮮半島を取り囲む中国、日本、ロシアはいずれも大国であり、人口も韓国よりはるかに多い。これらの国に挟まれて私たちが独立性と存在感を保つためには適切な水準の兵力や経済規模などの国力を維持しなければならないが、出生率の急激な低下はその根本条件を脅かす。

 少子化と人口減少の結果は国の地位の墜落にとどまらない。生産人口の減少と老齢人口の増加によるいびつな人口構造は、青壮年層に巨大な社会経済的負担を負わせるだろう。いずれは老年層の福祉の縮小問題をめぐって世代間戦争が繰り広げられるかもしれない。

 地方ではとっくに人口減少が厳然たる現実となっていた。面単位の行政区域は小さな小学校を1校のみ維持するのがやっとで、農村社会はもちろん地方の中小都市も近いうちに存在が難しくなるだろう。地方消滅が現実のものとなれば、国の消滅を心配しなければならないかもしれない。

 対策はないのだろうか。子どもを1人産んだら養育費と出産奨励金として1億ウォン(約1000万円)を支給してみよう。昨年の出生児数が26万人であったことを考慮すれば、年間で26兆ウォン(約2兆6100億円)ほどかかる。年間出生児数が50万人水準に達するまで実施してみよう。明らかに大きな変化があるはずだ。

 もちろん様々な批判の声があがるだろう。命を金で計算しているという皮肉、1億ウォンを補助したからといって子どもを産むのかという冷笑、子どもを産んですぐ児童養護施設に入れてしまったらどうするのかという懸念など。環境問題などを考慮すれば人口減少はむしろ喜ばしいことだという主張、外国人を大量に受け入れれば良いという提案も出てきうる。現実的には財源問題が指摘されるだろうが、すべての国民に1人当たり月8万ウォン(約8030円)、年に100万ウォン(約10万円)を支給する基本所得制を実施すると言っていた大統領候補もいた。その予算は51兆ウォン(約5兆1200億円)だ。子どもを1人産んだ時に1億ウォンを支給した方がはるかに未来志向的で生産的ではないか。政府支出を調整したり、人口税の新設を検討したりすることもできる。

 結婚はしないという人、あるいは子どもは生まないという人はそのまま尊重すればいい。出産奨励金兼養育費は住宅、育児、職場の問題のせいで出産を先送りしたり諦めたりした人々に子どもを産んでもらうのに使えば良い。

 抗がん剤は劇薬処方だ。しかし、その方法でなければがん患者を助けられないからこそ処方し、投薬する。人口問題も同様だ。地方を立て直し、国を立て直すためには特段の対策を講じなければならない。実は今からではもう遅い。すでに20年あまりの空白ができているためだ。私たちみなが「何が重要なのか」と問い、劇薬を処方しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ヨンテ|全南大学名誉教授・韓半島未来研究院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1060560.html韓国語原文入力:2022-09-28 18:17
訳D.K

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