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[寄稿]韓国進歩の5つのドグマとコンプレックス

登録:2022-06-09 02:09 修正:2022-06-09 08:06
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 1997年12月19日、自宅に届けられたハンギョレの1面には大きな文字で「金大中(キム・デジュン)当選」と記されていた。歴史上初の平和的な政権交代が起きた日だった。周辺に留まっていた進歩的政策パラダイムが主流の舞台に上がった瞬間でもあった。

 その後25年間、韓国には驚くべき進歩の時代が訪れた。南北関係も福祉も教育も、経済でも革新が行われた。保守陣営すら進歩パラダイムをかなりの部分受け入れるようになった。

 ところが現在、進歩パラダイムは古いと思われている。なぜだろうか。25年前は正しかったが、今は誤っている、硬直したドグマにこだわりすぎているから、このようなことが起きているのではないか。

 5つの代表的なドグマがある。

 第1に、脱原発というドグマだ。反核運動は1980年代以降の反米運動と、その後の環境運動と結びつき、脱原発を進歩の主流原則として浮上させた。しかし、原発が化石燃料より炭素排出が少なく、再生可能エネルギーより安定性が高いことは否定できなくなった。いまや原発と再生可能エネルギーが手を取り合って炭素中立(カーボンニュートラル)同盟を組むべきなのではないか。

 第2に、太陽政策というドグマだ。北朝鮮は25年前と異なり、事実上の核保有国となっている。太陽の光で旅人のコートを脱がすことはできても、彼のポケットの中の手榴弾を奪うことはできない。当面は「緊張の中の長い平和」が現実的な目標だということを受け入れ、対北朝鮮政策の基調を再考すべきなのではないか。

 第3に、平等教育というドグマだ。競争教育に反対する政策基調のせいで、「優越性」は進歩教育においてタブーワードとなっている。しかし、過度な競争は問題だが、競争を緩和しようとして競争力が低下したとしたら、さらに大きな問題だ。2000年には64万人だった新生児は、昨年は26万人になった。少数の子どもたちが私たちの社会の未来を背負ってゆけるよう、彼らの能力を育まなければならない。創意的で協力的でありつつも力量を培いうる、「みんなのための優越性教育」が必要になっているのではないか。

 第4に、地方分権というドグマだ。進歩は地方分権をけん引したが、結果的に権力は地域住民ではなく帝王的な市長や郡守(郡の首長)や公務員へと分散した。中央において大統領はサムスンに投資を乞わなければならないが、地域においては商売人たちが郡守に援助を乞いながら生きている。以前は無視していた市長、郡守、区長選挙に元国会議員たちが出馬する姿は、このような地形を反映している。今は地方自治体の権限の拡大はしばらくやめて、真の住民自治を高めるための新たな構造を設計する時が来ているのではないか。

 第5に、公共部門の拡大というドグマだ。進歩は、市場を牽制するためには国の権限を拡大すべきとの立場だった。その結果、韓国は数え切れないほどの公共機関と中間支援組織が民間を管理・監督しつつ運営する国になった。現場の人手は常に足りないが、行政と監査への対応業務は日増しに増えているように思われる。いまや公共部門の改革を進歩の議題とすべきなのではないか。

 一方、進歩はいくつかのコンプレックスのせいで、根源的価値の実践に消極的でもあった。

 「アカ・コンプレックス」が代表的な例だ。基本所得(ベーシックインカム)制などの破格の社会保障の拡大が議論されるたびに、かなりの数の「いわゆる進歩主義者」たちは「財政の無駄使い」という攻撃を心配する。失敗した不動産政策を批判されれば、失敗の原因はきちんと考えずに、まず減税を行ったりもした。このような反応は、財政の拡大や増税を主張するのは社会主義者だと攻撃されると恐れているから出てくるのだ。民主化運動にかかわれば「アカ」と後ろ指さされた過去から抜け出せていない認識だ。

 「経済無知コンプレックス」の問題も大きかった。政府が出した炭素中立案についてさえ「企業が反対するから」、「現実性がないから」だめだと主張する「いわゆる進歩主義者」も多かった。「進歩は経済を知らず成長に反対する」という批判に対するコンプレックスがあるからだ。しかし今、進歩の存在理由は、不平等と気候危機に立ち向かって闘うことにある。運転者が経路を柔軟に変えることまでは、乗客は受け入れる。しかし目的地を変えれば、乗客は下車せざるを得ない。

 コンプレックスに苛まれて目的地を忘れた結果は残酷だ。進歩の時代を経たにもかかわらず、気候危機と不平等問題の解決はむしろ遠ざかったという評価が支配的となっている。目的地を忘れてはならないが、柔軟に経路を設計しつつ、新たな政策パラダイムを打ち立てるべきだ。果敢な転換がなければ、進歩の時代はこのまま終焉を迎えるかもしれない。次の25年を迎える、新たな進歩の誕生を期待する。

//ハンギョレ新聞社

イ・ウォンジェ|LAB2050代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1046070.html韓国語原文入力:2022-06-07 18:14
訳D.K

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