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[寄稿]司法クーデターによるブラジルの民主主義の転覆

登録:2020-12-25 03:15 修正:2020-12-25 09:21

 今、ブラジルの民主主義は危機に瀕している。ブラジル民主主義の危機の特徴は、検察と司法府の“法の技術者”たちが法的手段と装置を動員して、見えもせず意識もできないうちに少しずつじわじわと民主的制度と規範を侵食し、民主主義を転覆させる司法クーデターであるということだ。

 ブラジルの司法クーデターを主導した法の技術者は、セルジオ・モロというブラジルのエリート連邦判事だった。モロの司法クーデターの作戦名は「洗車作戦(Operation Car Wash)」だった。2014年、モロはイタリアの政治腐敗を掃討した「クリーンな手(Mani Pulite)」をモデルとした洗車作戦の首席判事となり、ブラジルの政治家と高位公職者の大規模な資金洗浄、巨大な反腐敗スキャンダル、わいろと公金流用事件の捜査を指揮し、数多くの政治家と高位公職者を拘束して司法処理し、国民から絶大な人気を得た。しかし、モロの洗車作戦の捜査は、方法や目的の面でクリーンな手とは異なっていた。モロは、予備拘禁制度を利用して拘束を誘導し、大衆の怒りを爆発させて容疑者を不安に震えあがらせ、メディアを煽って政治家や高位公職者を攻撃した。イタリアのマフィア組織と腐敗した政治家の間のつながりを絶とうという反腐敗捜査を目的としたクリーンな手とは異なり、洗車作戦は民主政府を転覆させようという政治的目的を持つ司法クーデターだった。

 モロは洗車作戦でブラジルの政権党の労働党(PT)と政府関係者を拘束し、モロと野党は2016年5月13日、ルラ大統領の後任の女性大統領ジルマ・ルセフを予算作成規則違反という政策的ミスの容疑で弾劾し、労働党政権を崩壊させた。モロは司法クーデターを止めず、次期民選政権に標的を移した。司法クーデター勢力であるロドリゴ・ジャノット検察総長は、ルセフを継承したミシェル・テメル大統領を2017年6月26日に収賄罪で起訴した。テメルは下院議長ロドリゴ・マイアの助けで弾劾訴追こそ免れたものの、「植物大統領」として残りの任期を終え、次期大統領選に出馬することもできなかった。モロの最終目標は、世界的な民主化の指導者であるルラ元大統領だった。モロは当時支持率が80%のルラ大統領に対する司法攻撃を開始し、2017年に資金洗浄と間接的収賄の容疑で拘束したことで、ルラ大統領の2018年の大統領選への出馬を阻止することに成功した。

 モロの司法クーデターにより、2018年には、かつての軍部独裁時代に大佐だった右翼ポピュリストのボルソナーロが、ルラが指名した後継者フェルナンド・アダジを制して大統領に当選した。モロは、司法クーデターの功により2018年に法務長官に任命されたが、2020年にボルソナーロ大統領が連邦警察庁長官を解任したことに抗議して法務長官を辞任し、ボルソナーロ大統領を腐敗した右翼ポピュリストだと攻撃しつつ、同大統領に対抗して2022年の大統領選挙への出馬を狙っている。ブラジルの新興民主主義は、かつてのように軍部クーデターによって転覆するのではなく、司法権力と法律知識を動員した検察とメディアによって、音もなく、ステルス的なやり方で転覆させられているのだ。

//ハンギョレ新聞社

イム・ヒョッペク|高麗大学名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/975792.html韓国語原文入力:2020-12-24 16:09
訳D.K

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