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[インタビュー]マスクつけても真っ黒に…50年前と変わらぬ労働現場

登録:2020-11-14 02:20 修正:2020-11-14 09:47
現代自動車全州工場でマスクをしつつも粉塵を吸い込みながら働く社内下請け非正規労働者の姿=金属労組現代自動車全州非正規職支会提供//ハンギョレ新聞社

 「50年前、チョン・テイル烈士が怒りを覚えた平和市場の窓のない縫製労働の現場と何が違うんですか」

 今月13日のチョン・テイル烈士の焼身自殺50周忌を前に、一枚の写真がSNSで共有され、反響を呼んだ。写真の労働者は、現代自動車全州工場の社内下請け業者「マスターシステム」で働くチェ・ヘリョンさん(32)だ。マスクをしていたとは思えないほど、鼻と口の周りはすっかり真っ黒になっている。もう一枚の写真では、マスクの内側まで真っ黒になっていた。

マスクによって粉塵の吸入量が違う。真ん中の最も黒くなったマスクが、現在下請け業者が支給しているマスク=金属労組現代自動車全州非正規職支会提供//ハンギョレ新聞社

 チェさんは12日、ハンギョレの電話インタビューで「鉄粉、ガラスの粉などの粉塵を集める集塵機を整備して出てきた直後の姿」と写真の中の状況を説明した。彼を含めたマスターシステム所属の12人の労働者は、現代自動車全州工場でエンジンを製作するための鋳物砂などを運ぶベルトコンベアの補修・維持業務を担当している。現代自動車の正社員も共に働いているが、「集塵機の整備のように粉塵が多く発生する仕事、高い所にある装置を操作したりベルトコンベアの回転体を扱うなどの危険な仕事は、下請労働者の役目」と述べた。

 チェさんは「粉塵が飛び続ける所でマスク一つで耐えねばならず、待機(または休息)する場所のすぐ隣にも粉塵排出施設がある。全州工場には正社員の友達がいるが、工場内にこんな所があると言ったら信じられないと言われた」と話した。そして「泰安(テアン)火力発電所で事故に遭った故キム・ヨンギュンさんが働いていた作業環境と似ており、2年前にそのニュースを聞いたときは『他人事ではない』と思った」と話した。まるで自分の同僚を見送る気持ちになったというのだ。

現代自動車全州工場素材部の作業の様子=金属労組現代自動車全州非正規職支会提供//ハンギョレ新聞社

 会社側はもともと3M社の防塵マスクを支給していたが、最近、相対的に品質の落ちるマスクに替わり、労働者たちから非難を受けてもいる。これに対し現代自動車は「10日から3M社の防塵マスクを再び支給している」と釈明した。

 チェさんの写真は、マスターシステム所属の40人あまりの労働者が9日からストを展開したことで知られるようになった。工場に常駐する業者なのにもかかわらず通勤バスにも乗れず、通行証も発給してもらえないため、毎日訪問証の発給を受けなければならないということも、写真とともに広まった。全面ストに突入すれば工場への立ち入りが制限される恐れがあるため、1日に7時間50分ずつストを行っている。

 チェさんと同じ場所で働いているイ・デウさん(33)は、「一日中粉塵を吸い込んているので、息苦しいだけでなく目もゴロゴロして眠れないほどだ。作業場の環境改善を要求してから2年近く経っているが、会社はただ『分かった』と言っているだけ」と話した。使用者である下請け業者は「権限がない」として、手をこまねいているという。二人の労働者は「少なくとも安全に働ける環境を保障してほしい」と声を強めた。健康診断の際に呼吸器疾患の検査を徹底的に行うなどの、具体的な改善措置を出してほしいというのだ。

 民主労総はこの日、この写真を添えたチョン・テイル50周忌に際しての論評を発表し、その中で「大統領はチョン・テイル烈士に勲章を追叙し、雇用労働部長官は墓参して『労働者に寄り添う』姿を強調しようとしているが、この写真について答えてみよ」と述べた。危険できつい仕事を非正規労働者に押し付けている労働の現実は、1970年の平和市場とさほど変わらないという主張だ。

チェ・ウォンヒョン、ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/969692.html韓国語原文入力:2020-11-12 15:27
訳D.K

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