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[インタビュー]「無罪だから無罪求刑したのに非難…検察は過ちを直視できない組織」

登録:2019-12-10 08:39 修正:2019-12-10 12:39
宋建鎬言論賞の受賞者にイム・ウンジョン検事が選ばれた。写真はイム検事が2017年9月6日、ハンギョレのインタビューに答えている様子=カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「無罪だから無罪だと言っただけなのに、一部のメディアから『無鉄砲な検事』とか『中途半端な市民運動圏の検事』などと罵倒されたんです。検察の内外で耐えがたい誤解や非難を浴びて悔しい思いをするたびに、もう少しだけ頑張ってみようと自分を慰めました。青巖(宋建鎬)先生の時代と社会を目覚めさせる文章と人生は、自分が迷ったり悩んだりするたびに道しるべとなってきましたが、検察内部の小さなもがきに目を止め励まして下さったことが、疲れた私にとって大きな慰めになります」

 検察の恥ずべき素顔を公開し、自省と改革を求めたことで、「2019年宋建鎬(ソン・ゴンホ)言論賞」受賞者に選ばれたイム・ウンジョン蔚山(ウルサン)地方検察庁部長検事(司法研修院30期)は、6日のハンギョレの電話インタビューでこのように感想を述べた。イム検事は、内部告発者として検察組織で依然として「いじめ」を受けている状態であるとしながらも、気後れすることなく対話を続けた。イム検事は最近、韓国透明性機構の「今年の透明社会賞」も受賞した。

 イム検事は2012年12月、ユン・キルジュン進歩党幹事の反共法違反の再審事件で、検察首脳部の「白紙求刑」の指針を無視し、「無罪求刑」を行なった。これに先立ち同年9月、パク・ヒョンギュ牧師の民青学連再審でも無罪を求刑した。白紙求刑は検察職の責任と重さをあまりに軽く考えた違法な慣行だという考えからだった。このことで4カ月の停職という重い処分を受け、検事の適格審査で職を失う危機にも直面した。5年の訴訟の末、2017年に最高裁判所の懲戒取り消し確定判決を受けたことで、検事が信念を貫いて無罪を求刑できる先例を残したという評価を受けている。宋建鎬言論賞審査委員会(委員長イ・ヘドン)は、「ジャーナリストではないが、公益を掲げて検察内部の省察と反省を促したイム検事の奮闘は宋建鎬先生の鋭い批判精神に合致する」と選定理由を説明した。

 イム検事は受賞の知らせに戸惑ったという。イム検事は「メディア関係者にとって栄誉ある賞なのに、検事に下さったのは型破り。慣れなくて心苦しい気持ちのあまり辞退した方が良いのではないかと思った」とし、「でも、懲戒と脅迫に疲れていたが『あなたは間違っていない。疲弊してないでもっと頑張れ』という激励だと思えて嬉しかった。賞の名に恥じない人生を送りたい」と語った。ただ、「青巖賞の精神と激励だけを受け取る」と述べ、賞金は最後まで固辞した。

 イム検事は懲戒を受けた2013年から公然と検察の不義を批判してきた。時には前職・現職の検事の実名まで上げ監察と捜査を要求するなど、検察の選別的捜査、身内をかばう行為など、ダブルスタンダードを問題視した。「検察組織は自ら過ちを直視するのが難しい。慣行に慣れれば恥をさらせない。私は治癒のためにここが病んでいると強く言う。これをもめごとと言われるが、私は自浄能力だと思う」

 文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足して、少しは息抜きができただろうか。「今も閑職だし、いまだに透明人間扱いをされている。頑固な組織の集中管理対象者という立場が大きく変わったわけではない。親しい後輩たちに不利益が及ぶかもと思い、気楽に食事に誘うこともできない」。それでも平検事で退職すると思っていたが、部長検事になり、政権が変わったおかげだとしながら「社会が少しずつ変化している」と肯定的に評価した。イム検事は「去年9月に検事倫理綱領が変わった。メディアにコラムを書いたりインタビューを受けるのも承認制から申告制に変わり扉が開かれた」とし、「これまで闘争してきたことについて自分を褒めてあげたい」と語った。公職社会で表現の自由が拡大されれば、活発な批判精神で内部の自浄能力が円滑になり、透明な社会の到来を早めることができるという期待からだ。

 彼女の「目立つ」行動から、検察内外では「政界に出ようとしているのでは」という疑惑も常に提起されている。イム検事は「そういうことは2011年から言われてきた。来年の総選挙に出なければ止むだろうか。時間は真実と嘘、正しいことと間違っていることを分ける網のようなものなので、歴史の前で冷静な評価を受けるだろう」とし、「アン・ミヒョン、ソ・ジヒョン検事など、暴露する人が続いているのも励みになる。もう少し粘って“嫌われる勇気”を出そうと思う」と語った。

 イム検事はマスコミに対しても苦言を呈した。「私は法律に基づいて職務を遂行する平凡な検事だ。検事として当たり前のことが、なぜ大変なことのように報道されるのかわからない」とし、「無罪を求刑した時、最高検察庁の発表によって保守新聞は私を非難し、進歩新聞は勇敢な検事だと異なる評価をしたが、法曹担当記者が法律をきちんと調べて突き詰めれば私が正しいということが分かる。5年間つらい事を経験することになり、マスコミが恨めしかった」と吐露した。また、親疎関係によって公職者の嘘に対して沈黙したり監視しなかったりのマスコミのせいで権力が乱用されているという批判とともに、「検察とマスコミ改革が実現すれば大韓民国が正される」と強調した。

 司法正義は早いうちに実現はしないだろうとの判断から、しばらくは検察組織文化を変えることに力を注ぐ計画だ。いわゆる「踏み石となる判例作り5カ年」という抱負だ。イム検事は、ソウル南部地検の性暴力隠蔽事件と釜山地検の公文書偽造事件の2件について告発状を出している状態だ。「昔の同僚を告発するというプレッシャーを甘受して出したが、来年、再来年には公訴時効を迎える。裁定申立てをして判例を作ることに意味がある」。ブラックリストによる人事不利益と組織的いじめなどについて、国家賠償訴訟も進行中だ。彼女の前にはまだ長い闘いが残っている。

ムン・ヒョンスク先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/media/920176.html韓国語原文入力:2019-12-10 02:10
訳C.M

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