20日午前、ソウルのサムスン電子瑞草(ソチョ)社屋の入り口は押し寄せた人で混みあった。定期株主総会に参加しようとする株主たちだった。サムスン電子側の予想の3倍近い参加者が殺到した。昨年の額面分割後、サムスン電子の株主は以前より5倍に増えた78万8千人にのぼる。最近国内外で活発に活動を続けているサムスン電子社内取締役のイ・ジェヨン副会長は、昨年に続き今年も株主総会に姿を見せなかった。
サムスン電子は座席800席を用意した。昨年より2倍に増やしたが、予想ははずれた。サムスン電子コミュニケーションチームはこの日、「株主1千人余りが参加したものと把握される」と述べたが、現場で会った行事進行要員は「2千人以上来た」と話した。
この日、朝7時30分から株主総会会場の入場が始まったが、株主総会開始時間の午前9時にも瑞草社屋の入り口周辺は100メートル以上待機の列が続いた。この列は株主総会が始まって1時間30分が経った午前10時30分頃になくなった。
何人もの株主が公式発言で不満を吐露した。ある株主は、「PM2.5がこんなにひどいのに1時間も並んで、ようやく入ってきた。額面分割で株主が増えたのは新聞紙上にも出ているのに、こんなかたちで株主を入場させなければならなかったのか」と言った。また、別の株主は「外で2時間も震えて待たせるとは、会社が株主をないがしろにしている。入ったら入ったで、追い込み係を前に出して扇動し『ハンコを押してください』という」と言い、謝罪を要求した。株主総会議長を務めたキム・ギナム半導体(DS)部門長(副会長)は、株主らにしきりに頭を下げなければならなかった。サムスン電子はこの日午後、ホームページに公式謝罪文を載せた。
パク・ジェワン元企画財政部長官とアン・ギュリ・ソウル大学医学部教授が社外取締役候補に推戴されたが、両候補はサムスンとの関連性のため、社外取締役としての独立性に懸念があると今月初めから提起されてきた。サスティンベストなど国内の議決権諮問会社や、米カリフォルニア教職員年金基金など国外の機関投資家が反対意見を出した。
株主総会の現場でも、彼らの選任に反対する意見が出た。株主のK氏はパク元長官に対し、「サムスンのために働く人を社外取締役に指名するのが、株主と公益のためのものなのかと疑問が湧く」とし、反対の意思を表した。パク元長官の選任は「サムスン電子の対外イメージにダメージを与えかねない」と反対する株主もいた。アン教授についても一部の株主は「医学部教授なので専門性が疑われる」と反対意思を示した。
サムスン電子と一部の株主は、反対意思を明らかにした人たちに「反対意見を撤回してほしい」と要求し、賛成議決を強行した。キム・ギナム副会長は、株主に「拍手で賛成を」と要請した後、拍手が沸き起こると、議事棒を3回たたいて議案可決を宣言した。サムスン電子の持分8.9%を保有した国民年金は賛成した。
「拍手による案件通過」に株主たちが過ちを指摘すると、キム副会長は「法的に問題はない」と答え、株主総会に参席したコ・チャンヒョン・サムスン電子諮問弁護士も「上場会社の場合、実質的な票決は事前先行投票と委任状(を通じた)議決権行使などを通じて進められる」と説明した。
超一流グローバル企業であるサムスン電子の株主が、PM2.5により空気の悪い中で時間を浪費し、「拍手の議決」に怒りを噴出させるのは、非常に見慣れない光景に思われた。電子投票さえ導入すれば、謝罪することもなかっただろう。国内上場企業2111社のうち、電子投票制を導入しているところは1350社(63.9%)だ。1350余りの上場企業の株主たちが電子投票により議決権を行使する際、大方はサムスン電子が作った半導体とスマートフォンが利用されているはずだ。