最高裁判所(大法院)全員合議体(裁判長キム・ミョンス最高裁長官)が21日、一般肉体労働者の労働稼働年限(稼働年限)を65歳に上方修正する判決を下した。1989年に55歳から60歳に引き上げてから30年ぶりのことだ。稼働年限とは、労働に従事して収益を得られると予想される年齢の上限を意味するが、一般的に訴訟において肉体労働者の稼働年限が推定収入を計算する基準になる。
平均寿命が延びて引退年齢が延びるなど、現実を考慮したものであり、最高裁が多少遅れたものの、時代の変化に合わせて合理的な基準を示したものと評価できる。しかし、保険料の引き上げなど、予想される波紋については、政府と関連企業などによる先制的な措置が求められる。もっと根本的には、定年延長問題など、社会的議論を急がざるを得ない状況となった。
最高裁は2015年8月、プールで事故で死亡したA君(当時4歳)の家族がプール運営業者などを相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、「社会的・経済的構造と生活環境が急速に向上・発展し、諸般の事情が著しく変化した」としたうえで、「肉体労働の経験則上、65歳までも稼働できると見るのが正しい」と判断した。具体的には、国民の平均余命(平均寿命)が1989年の男性67.0歳、女性75.3歳から、2017年それぞれ79.7歳と85.7歳に延びており、実質引退年齢も2011年から2016年まで男性72.0歳、女性72.2歳と調査された事実などを例に挙げた。基礎年金や国民年金法などに65歳の基準を適用した事実なども根拠として示された。
1989年、最高裁判所が稼働年限を60歳に引き上げてから、2017年1月になって法定定年が60歳に引き上げられたことから、稼働年数の上方修正が直ちに定年延長につながるのは難しい。しかし、今回の判決が、超高齢社会に対する懸念とあいまって、定年延長や老人年齢の上方修正などの議論を触発する可能性は高い。パク・ヌンフ保健福祉部長官は「6~7年後には人口の20%が65歳以上の超高齢社会になる」とし、数回にわたり老人年齢の上方修正と定年延長の必要性に言及してきた。定年が65歳の米国や日本、67歳のドイツに比べ、韓国の定年が低く設定されているのは事実だ。しかし、失業率、中でも若者の失業率が高い状況で、定年延長は急ぎ足で取り組むべき事案ではない。今からでも政府を含む各主体が膝を突き合わせて、社会的対話を通じて解決策を模索していかなければならない。