本文に移動

「処罰を」の声にも…性暴力被害「時効」過ぎ、厳罰は難儀

登録:2018-02-23 09:46 修正:2018-02-23 15:17
演劇演出家の李潤澤氏が芸術監督を務めた「演戯団コリペ」解体で閉鎖手続きを踏んでいるソウル鍾路区の「演戯団3コリペ30スタジオ」が今月22日午後、寂寥感に包まれている/聯合ニュース

 検察発の「MeToo」キャンペーンが文化界全般に拡散し、被害者の証言が洪水のようにあふれ出るなか、加害者に対する処罰はどうなるかに関心が集まっている。

 特に演劇界で数十年間“皇帝”として君臨してきた李潤澤(イ・ユンテク)氏と、大学講壇で学生たちを教えていた俳優のチョ・ミンギ氏などの具体的な加害事例が公開されると、22日、大統領府の「国民請願」掲示板には性犯罪の加害者に対する厳重処罰と損害賠償を要求する請願に「同意」が殺到している状況だ。

 李潤澤氏は、長い間演劇界を牛耳る大物演出家として個別の俳優たちの配役や出演だけでなく、職業的な未来までも左右することができた。そのため法曹界では、演劇団監督という優越な地位を利用して性暴行をしたなら「業務上威力による姦淫」、セクハラを行ったなら「業務上威力によるセクハラ」の疑いを適用を検討できるという。チョ氏も“教授”という優越的地位にあったため、同じような法の適用が可能だという解釈が出ている。彼らが被害者の拒否の意思表示や抵抗があったにもかかわらず犯罪を犯したなら、強姦罪や強制わいせつ罪に該当しうる。

 しかし、李氏にセクハラや性暴行を受けたという被害事例11件はすでに「公訴時効」がいずれも過ぎており、処罰できない。被害事例が性暴力犯罪に対する「親告罪」条項が全部廃止(2013年6月)される以前の2001年から2010年にわたっているからだ。李氏の性暴行またはセクハラが起きた当時、関連法律では被害者の告訴があればこそ捜査と処罰が可能で、告訴できる期間も6カ月に過ぎなかった。

 19日に謝罪記者会見を自ら要望した李氏がしきりに法律を口にしたことに対し、法曹界で「今まで出た事例だけでは処罰が不可能だという弁護士からの事前の助言を受けたようだ」という声があがったのも、このような事情のためだ。

 チョ氏の場合も同様だ。チョ氏が2010年3月から母校の清州大学芸術学部の教壇に立った点を考慮すれば、その後親告罪が廃止された2013年6月以前に行われた犯行については処罰できない。

 ただ、性暴力犯罪の親告罪が全面廃止された2013年6月19日以降、李氏やチョ氏または今後暴露されるであろう別の加害者の性暴力犯罪が明るみに出れば、これは告訴がなくても捜査と処罰が可能である。また、親告罪廃止前に起きた犯罪でも、当時の被害者が未成年者であれば19歳の成人になった日から公訴時効を計算する特例によって処罰できる。慶南警察庁がこの日、チョ・ジュンユン劇団「ボンジャギ」代表について捜査方針を明らかにしたことも、被害者らが未成年だった2007~2010年に行われた犯行という供述を確保したためだ。

 被害者たちが民事訴訟で被害を救済される道も現在はふさがっている。これらの被害者は、性暴力犯罪という違法行為の加害者が誰なのか知っていたため、その時点で3年以内に訴訟を起こせば救済が可能だ。民法に定められている「消滅時効」が3年であるためで、現在まで明らかになった被害事例はこの期間をすでに過ぎた状態だ。

 世論が沸きあがると、政府はひとまず積極的な反応を示した。李洛淵(イ・ナギョン)首相はこの日、政府世宗庁舎で開かれた国政懸案点検調整会議で、性暴力事件の加害者を“加重処罰”しなければならないと強調した。李首相は「最近は優越的地位、すなわち権力を利用して行う性暴力が相次いで公開されている」とし、「抵抗できない弱者に権力を悪用して思うままに暴力を行う場合は加重処罰すべきである。もし法の不備があれば、法を改正してでも加重処罰ができるように準備してほしい」と話した。しかし、加重処罰のための法律が制定または改正されても、現行の憲法(第13条)上、遡及適用は不可能だ。

カン・ヒチョル、ノ・ジウォン記者r(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/833343.html韓国語原文入力:2018-02-23 04:59
訳M.C

関連記事