韓国が急速に高齢社会に進入しているなかで予想される憂慮の一つは「労働力不足」だ。10%前後の高い青年失業率が示すように、現在は仕事をしたくてもできない人が多いが、今後は高齢化に伴い労働力不足を憂慮する状況が広がるということだ。
だが、定年を延長し女性の雇用参加を増やすなど、政府が雇用政策を積極的に展開するならばこうした憂慮の相当部分が解消されるという分析結果が出た。ただし、自動車や保健など高齢就業者比重が高い一部の業種では今後15年以内に労働力不足現象が現れると推計された。
10日、ソウル大のイ・チョルヒ教授(経済学)と韓国銀行経済研究院のイ・ジウン副研究委員が共同作成した「人口高齢化が労働需給に及ぼす影響」報告書によれば、研究陣は統計庁の将来人口推計に基づいて生産可能人口(15~64歳)と経済活動人口(就業者と失業者を合わせた人口)、就業者数の長期推移を基にして、政府の雇用政策により推移がどのように変わるかを分析した。まず2050年に生産可能人口と経済活動人口は昨年よりそれぞれ30%と15%程度減るのに比べ、就業者数はこれより少ない12.5%減少すると推測された。2016年基準で就業者数は2706万人だが、2050年には2367万人になり339万人減るということだ。このような差について報告書は「韓国の高齢人口(65歳以上)の多くが仕事をしているため」としながら「韓国の高齢人口の経済活動参加率は、経済協力開発機構(OECD)国家内で最高水準」と話した。15~64歳の生産可能人口推移だけを見れば、労働力の減少幅が大きく見えるが、歳を取っても働くケースが多い現実を勘案すれば減少幅は減るという意味だ。
報告書はまた、政府の雇用政策により労働力供給の減少幅はさらに減らすことができると分析した。仮に、定年延長、女性の経済活動参加増大、青年失業率減少という3つの政策がそろって効果的に執行される場合には、2016年に対する2050年の経済活動人口は政策効果を勘案しない場合より6%p前後縮小し、就業者の減少幅は4.6%p程度少ない7.9%(約210万人)程度にとどまることが明らかになった。政策別には、定年延長などを通して壮年雇用を拡大すれば就業者の減少幅を減らす効果が最も大きいと分析された。
また報告書は、実際の労働市場の労働力需給にどのような影響を与えられるかは断言が難しいと明らかにした。4次産業革命のような急激な技術変化が起きる場合、労働需要が労働供給以上に減少し「労働力不足」どころか「働き口不足」が現れることもありうるということだ。
こうした事情から報告書は、技術革新の速度を計り難いという理由を挙げて、比較的予測可能な今後10~15年内の労働市場需要についての分析結果を出した。その結果、自動車製造業と社会福祉サービス、保健業、金融および保険関連サービス業を、今後10~15年以内に労働力不足を来す可能性が高い産業に挙げた。これらの産業は他の産業に比べて雇用の安定性は低く、最近になって高齢就業者が大幅に増えて新規人材の進入が不足しているという理由からだ。イ・ジウン副研究委員は「比較的近い将来、労働力不足をもたらす最も重要な潜在要因は、ベビーブーム世代(1955~1963年生まれ)が高齢層に進入すること」とし「これらの世代完全に労働市場から引退する10~15年後には一部の業種で労働力不足が大きくなるだろう」と話した。