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[話題の人] 校長室を遊び場に変えた“革新学校”の先導者

登録:2014-08-29 22:47 修正:2014-08-30 10:00
ソウル教育庁初等教育課長になるイ・ヨンファン校長。 写真:上院小学校提供

解雇教師から校長までの教職33年
全国教職員労働組合で教育改革運動

朝礼・学年別試験をなくし
授業時間は学級別に決める
校内暴力が減り生徒の満足度は高まる

 小学校の平教師、全国教職員労働組合(全教組)の解雇教師、復職、全教組政策室長、小学校校長、ソウル市教育庁初等教育課長。

 イ・ヨンファン氏(55・写真)の略歴だ。彼は公教育の在り方を変える“革新学校”の上院(サンウォン)小学校の校長だ。 9月1日からはソウル市教育庁教育政策局初等教育課長に変身する。

ソウル市教育庁のチョ・ヒヨン教育監(長)が強調した“一般高校全盛時代”を早める革新学校政策の設計者であり伝導師の役割を果たさなければならない。チョ教育監は、生徒たちのそばにいたいという彼に直接電話をして“手伝って欲しい”と繰り返し頼んだ。 同庁のイ・サンス スポークスマンは29日「革新学校を拡散・発展させると約束したチョ教育監の政策を展開する適任者と判断した」と抜てきの理由を説明した

 これに先立って25日、ソウル市教育庁はイ校長を小・中・高などの革新学校を担当する初等教育課長に任命した。韓国教員団体総連合会(教総)は26・27日に二日連続でこの発令を批判する報道資料を出した。保守指向で韓国最大の教員団体である教総が、市教育庁の課長人事を公開的に批判したのは前例がない。教総は「無資格公募校長出身の初等教育課長任用は、長期にわたって学校現場で教育にまい進してきた小学校教員に相対的剥奪感を与える」と批判した。

 イ校長は2011年にソウル地域で初めて校長資格証を持たずに「内部公募」で校長になった。彼は1981年にソウル教育大学を卒業し、忘憂(マンウ)小学校で教師生活を始めた。全教組活動のため1989年に解雇され、1994年に復職した。2001年からの2年間は全教組政策室長を務めた。その時から彼は、多様な教育改革運動を展開する「新しい学校ネットワーク」で活動した。 2010年3月から上院小学校で5年5組の担任を引き受けた。 その年の6月、進歩系のクァク・ノヒョン教育監が当選し、学校構成員を説得して革新学校指定を申請した。この過程で得た父母と教師たちの信頼を基に翌年に校長に選ばれた。

 彼が行った革新の要諦は、学校現場の長期にわたる慣行である「規律と権威」を「自律と平等」に代えたことだ。 全校生を運動場に集める朝礼と授賞式がなくなった。日帝強制占領期から受け継いできた軍隊式文化との決別でもある。

全校生を律してきた校則をなくし、学年・学級別に生徒たちが守らなければならないことを自ら決めさせた。 学年別に一括実施していた試験もなくなった。学級ごとに異なる遂行度評価を行う。授業の始まりと終わりを知らせる鐘の音もなくなった。 授業時間は学級別に決める。

 そのためか、校内暴力は大幅に減り、生徒や父母の満足度は着実に高まっていった。校長室は子供たちの遊び場だ。26日、ソウル蘆原区(ノウォング)の上院小学校で会ったイ校長は「校長室のドアはいつも開けてあり、生徒たちが気楽に行き来できるようにしたところ、鬼ごっこをしていた子供が私の机の下に隠れたりもしましたよ」と言って笑った。

 そんなイ校長を上院小学校の人々は手放したくなかった。チョ・ジェヒ学校運営委員長は「私達の子供たちだけでなく、他の子供たちも幸せにならなければならないという気持ちで送り出すことをかろうじて決めた」と話した。

 イ校長は「革新教育をする教師を持続的に育てるには(ソウル地域)11ある教育支援庁ごとに拠点革新学校を設け、教師たちが直接見て学ぶようにしなければならない」と強調した。2018年までにソウル地域の革新学校を200校に増やすという目標を実現するには、情熱あふれる教師の輩出が絶対的に必要なためだ。入試競争の余波で革新高校が革新学校全体67校のうち10校に過ぎない現実については、「京畿道(キョンギド)興徳(フンドク)高校、ソウル三角山(サムカクサン)高校では、すでに入試でも一般高校よりより良い成果を出している。高校が変われば大学入試も変わる。パク・ウォンスン市長のいるソウル市立大学から革新教育に合わせて大学入試方式を変えるよう要求することも一つの方法」と話した。

 今回の人事が「小学校教員の士気低下の原因になる」という教総の批判に対して、オ・アングン紫陽(ジヤン)高校教師は「他の地域では平教師がすぐに教育庁局長になるほどに変わったが、ソウルだけが唯一出遅れた。学校が良くなるには昇進点数を取ってから校長・教頭になる既存の昇進方式から、同僚教師たちの信望を得て生徒たちと良い関係を結ぶ人が昇進する方式に変えなければならない」と反論した。

キム・ジフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/653444.html 韓国語原文入力:2014/08/29 21:41
訳J.S(2142字)

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