原文入力:2011/09/28 20:36(1564字)
チョン・ファンボン記者
「沈薫文学賞」受賞イ・ソジン氏
←作家のイ・ソジン氏が27日、京畿道安山市四洞の作業部屋で明るく笑っている。安山/イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr
机の上には「漂白」「未堂詩集」「史記列伝」など本数十冊がきちんと置かれていた。 部屋は今さっき淹れたコーヒーの香りで満ちていた。作家の作業部屋らしい。一つ違う点ならば、大きいタイヤとケーブルがあちこちで繋がっている電動車椅子がぽつんと置かれていることだけだ。
28日、小説家のイ・ソジン氏(本名:イ・ユンジャ・45)の京畿道安山の作業部屋を訪れた時、イ氏は部屋のドアの外へ体を長く差し出して嬉しそうに挨拶した。 イ氏は最近、小説「川辺に立つ」で第15回沈薫文学賞受賞者に選ばれた。イ氏は全身マヒ障害者だ。それで不便な手の代わりに口に棒をくわえて、丸3ケ月かけて、数万字分の原稿を書いた。イ氏が原稿を書く姿は「神技」に近かった。彼女は一番最初、箸のような約25㎝の木の棒を口にくわえた。不自由な左手をマウスに置いて、口にくわえた棒でゆっくりマウスを動かしてクリックすると、ハングルプログラムが開かれた。引き続き口にくわえた棒で母音1個、子音1個ずつをかわるがわるに押して、コンピュータ画面に文字を刻んでいった。
「あの時は、どうやって死ぬかばかり考えていました」。イ氏は26年前の事故の話から淡々と切り出した。イ氏は20歳だった1985年、交通事故に遭い全身が麻痺した。生きる意志を失い、飲食まで止めてしまった彼女は、もしかしたら娘に聞こえてしまうからと声を殺して一晩中泣いたお母さんを見て、はじめて障害を受け入れたと言った。 そうすると、思い通りにできるのは、見て・話して・考えることだけだった。それで趣味として身に着けたのが読書だった。「病院に入院していた2年6ヶ月間、1日15時間ずつ本を読みました。本当に『死に物狂い』で」。
彼女は慎ましく笑って、恋愛ストーリーも明かした。「事故後10年間、本だけ読んで生きていましたが、ふと本の外の世界も気になりました」。彼女は当時流行していたパソコン通信ハイテルの同好会「ドゥリハナ」で活動を始めた。そこでイ氏は自身に関心を示す1人の男性を知ることになった。イ氏は障害者だという事実を明らかにして彼の好意を断ったが、男性は「オフラインで会おう」と言った。このように「映画の様な」愛が始まり、イ氏は1996年イ・ヒョンス氏(47)と結婚した。
「子供を産んで育てて平凡な結婚生活をしていた2001年のある日、夫が新聞に載った『障害者文学賞公告』を持ってくると、一度応募みたらと言ったのです」。
夫の説得に負けて書いた彼女の初めての作品「延命」は、障害者文学賞で佳作を受賞した。
「不思議でした。それと共に勇気が出てきました」。2009年、「グリザベラのために」で天降文学賞金賞を得て、イ氏は本格的な作家の道に入った。
沈薫文学賞当選作「川辺に立つ」は、翻訳と時間講師の仕事をして生きている、ある夫婦の危なげな人生を描いた小説で、審査委員たちから「私たちの時代が話さなければならない問題を真剣に扱った」という好評を得た。
「全身マヒ、障害、棒を口にくわえて書いた文章という様な修飾語を付けて知られるより、堂々と文学で評価されたいです」。すでに今年の冬から書く長編小説の構想を始めたというイ氏は、「いつの日か伽揶の歴史を扱った小説も書こうかな」と言いながら、明るく笑った。
チョン・ファンボン記者 bonge@hani.co.kr
原文:https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/498426.html 訳 M.S