本文に移動

“民主主義”通過(7.15教科部審議)→保守団体圧力(7.26 4人会同)→“‘自由民主主義”に急修正(8.9教科部告示)

https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/497569.html

原文入力:2011/09/23 08:38(2183字)
イ・ジェフン記者、チェ・ウォンヒョン記者、キム・ミンギョン記者


歴史教科書 字句変更過程および学界の意見


保守陣営、憲法の「自由民主的」なる字句を例に主張
憲法学界「政治体制としての自由民主主義の意味ではない」
進歩陣営「反共概念ばかり強調・・・かえって憲法精神違反」


去る7月26日ソウル市中区(チュング)国家ブランド委員会(委員長イ・ベヨン)会議室。 韓国現代史学会のクォン・ヒヨン会長とイ・ミョンヒ教科書委員長が、パク・ホンガプ国史編纂委員会編史部長長、チョン・イニョン歴史教育過程開発推進委員会副委員長と額を突き合わせて座った。今年5月20日に創立された韓国現代史学会はニューライト指向の歴史関連団体だ。

2時間にわたるこの日の非公開協議会で、韓国現代史学会側は「改正教育過程の“民主主義”という用語を“自由民主主義”に修正してほしい」という要求を強く伝えた。 7月15日開かれた教育科学技術部の「教育過程審議会」での審議通過時まで“民主主義”とされていた社会および歴史の改正教育過程の各論は、8月9日教科部告示で突然“自由民主主義”に全部修正された。 その上イ・ミョンヒ委員長は8月23日からほかでもない「歴史教科書執筆基準開発共同研究陣」の1人として活動している。 キム・ユジョン民主党議員は「教科部と国史編纂委員会が韓国現代史学会と全国経済人連合会、韓国キリスト教総連合会など保守団体の意見だけを収斂して教育過程を修正した」と批判した。


■憲法に“自由民主主義”の概念があるって?
 密室協議による教育過程修正に対して論議がおきるや、保守陣営では“民主主義”を“‘自由民主主義”に変えねばならない理由が憲法前文と第4条に「自由民主的基本秩序」という言葉があるため だと主張した。
しかし憲法学界では「自由民主的基本秩序」という言葉がそのまま政治体制としての“自由民主主義”を意味するのはないとみている。「自由民主的基本秩序」という言葉はドイツ憲法から取ってきたものだが、多元性を尊重する民主主義社会でもナチズムや全体主義のように許され得ないものは防がなければならないという意味が込められているというのが学界の大体の見解だ。


チャン・ヨンス高麗(コリョ)大教授(憲法学)は「憲法に出てくる“自由民主主義”や“自由民主的基本秩序”等の言葉は、具体的にどんな脈絡で使われているかを見なければならない」として「もしこの言葉を“自由民主主義はよくて社会民主主義はいけない”という式に使うならば適切でない」と指摘した。


また世界的にも“自由民主主義”だけを政治体制や基本理念として端的に標ぼうする国はほとんど見当たらないという。 よく自由民主主義的国家と見なされる米国の憲法も、その内容を見れば民主主義に対する包括的な規定だけをしているに過ぎないというのだ。


イム・ジボン西江(ソガン)大教授(法学)は「我が国の憲法でいう民主主義は自由民主主義、社会民主主義などを全部包括する広い範囲の民主主義であって、自由民主主義だけを強調するのは憲法の精神に合わない」と話した。


実際我が国の憲法は「自由民主的基本秩序」だけでなく、社会民主主義的性格を入れた条項も多数含んでいる。 119条第2項は「国家は…(中略)…適正な所得の分配を維持し、市場の支配と経済力の乱用を防止して、…(中略)…経済の民主化のために経済と関する規制と調整を行なうことができる」として、経済民主化と関連した規定を置いている。 だが、改正教育過程が“自由民主主義”に限定された用語を執筆基準などで告示すれば、教科書で経済民主化の部分を扱う内容は排除される可能性が大きい。


■ “自由民主主義”を否定すれば北朝鮮追従勢力?
 保守陣営の一部では「“自由民主主義”を否定する勢力は北朝鮮式“人民民主主義”を行なおうということだ」として理念論争を持ち出している。だが、これは“民主主義”の基本概念さえ分かっていない主張だというのが学界の大体の見解だ。

アン・ビョンウク カトリック大教授(国史学)は「人類の歴史は個人の自由が発展する過程を含んでおり、ここで自由と民主という概念は貴族と王族が治める封建国家から民主政治に変わる民主主義過程で通用されるもの」とし「だが、韓国現代史学会などは“自由民主主義”を反共秩序の確立という概念にのみ限定してみている」と指摘した。 パク・ビョンソプ尚志(サンジ)大教授(法学)は「“自由民主主義”という概念は冷戦時代に“共産主義は自由でなく私たちは自由だ”と宣伝する時なんぞに用いられていた、今では世界的にも廃棄された概念だ」と指摘した。


このために教育界では、政界や保守陣営が教育過程を理念闘争問題に変質させていると指摘している。


イ・ジェフン、チェ・ウォンヒョン、キム・ミンギョン記者 nang@hani.co.kr


原文: 訳A.K