原文入力:2011/06/12 21:05(3188字)
パク・スジン記者
整理解雇を通報された労働者たち 昨年12月から全面スト突入
‘希望バス’に乗って来た市民たち はしごで塀を乗り越えて‘応援の集いの場’
←韓進重工業影島造船所85号クレーンで158日にわたり籠城中のキム・ジンスク民主労総指導委員を応援しに来た希望バス搭乗者が12日未明、韓進重工業が警備用益業者職員らを動員して出入り口を全て封鎖するや垣根を乗り越え造船所に入っている。 釜山/イ・ジョンウ先任記者 woo@hani.co.kr
6月12日未明 1時。釜山影島橋韓進重工業の塀から幅30cmの錆ついたはしごが降りてきた。
"さあ、上がってきて下さい。かまいません。上がってきて下さい。"
下から見上げた‘上がってこいとの手ぶり’は見慣れなくて恐ろしかった。淡藍色の作業服を着た彼らは濃い色眼鏡をかけ目を隠していた。鼻まで覆うマスクで顔も分からず、ひさしの広い帽子までかぶっていた。星の光と月の光と多くの人々がともしたロウソクのあかりでも、お互いの顔がよく見えない明け方に…。完ぺきに隠された顔はその人が味方なのか、敵なのか、危険な人なのか全く判断できない状態だった。
2m程になる塀は高く、はしごは不十分に見えた。あのはしごに上がってもかまわないのか。悩んだ刹那、彼らが差し出したはしごに一番最初に駆け寄ったのはムン・ジョンヒョン神父、ペク・キワン統一問題研究所長、ホン・セファ<ルモンド ディプロマティク>韓国版編集者たちだった。黒髪より白髪が多い元老がためらいなくはしごに上がると他の市民たちも先を争うようにはしごに手足を伸ばした。警察が駆け寄った。はしごを奪おうとする警察と市民・労働者間に激しい小競合いが起きた。
←韓進重工業影島造船所85号クレーンで158日間 籠城中のキム・ジンスク民主労総指導委員を応援しに来た希望バス搭乗者が12日未明、造船所内に入った後 ペク・キワン統一問題研究所長、ムン・ジョンヒョン神父らの演説を聞いている。釜山/イ・ジョンウ先任記者 woo@hani.co.kr
韓進重工業労働者が‘マスクマン’になった理由は
一度入れば出てこれないかもしれないという恐れにもかかわらず、希望バスの乗客は‘大胆な塀越え’を敢行した。 塀の下へ降りると「私たちが来ました」とはつらつと叫んだ。正体をうかがい知れない‘マスクマン’は思いのほか親切だった。 「気を付けて下さい。私どもが押さえています。心配ありません。おー気をつけて」3人の韓進重工業労働者がはしごを押さえて、降りて行く人々を支えてくれた。
彼らはなぜマスクマンになったのか。鼻先まで覆ったマスクを簡単にはずせない理由は会社側の罪証と告訴・告発乱発のためだ。韓進重工業で仕事をして10年目のある労働者は「去る3月、ストライキ中の労働者170人の3分の2が警察署から召喚状を発行され調査されたことがあった」として「警察署に行ってみると、いつ撮ったかも分からない瞬間の私の顔が出ていて、いつどこで撮られるか分からないという不安感がある」と話した。マスクマンはともすると25度を越える釜山の初夏の天気にも厳しいといった。
マスクマンは700人余りの希望バス市民たちの‘乱闘場’後方で動き回っていた。丸めた肩は持ち上げるのが難しく見えた。「ありがたくて涙が出る」「まるで水を得た魚のようだ」と言いながらも表情の片方はずっと暗かった。出口のない現実のためだ。彼らは更衣室として使う5階建ての生活館建物に食事をしている。寝る所はテントだ。400人が整理解雇通知を受け全面ストに突入した昨年12月20日からテント暮らしの生活が始まった。工場で飯を炊いたりラーメンを作って食べる。
労働者は400人整理解雇案は受け入れないと主張する。50日前に労働者に通知しなければならない規定も守らず、対象者選定基準も恣意的だった。解雇回避努力も経営上の緊迫した理由もなかった。
韓進重工業が2008年に取得したフィリピン スピック造船所には初期投資金だけで7億ドルで、韓国企業がフィリピンに投資した最大の金額が投入された。以後、追加投資を含め2009年までに計10億ドルを投資した。
影島造船所への投資額は0ウォンだ。受注物量も0件だ。今すぐ労使交渉が妥結したとしても、労働者は翌年7月からようやく仕事できるという。韓進重工業労働者ムン・ヨンボク氏は「会社が影島造船所を再び運営する意志自体が最初からないようだ」として「今私たちは法的解決に一抹の期待をかけること以外には何の期待もない」と話した。
←がんばってください 韓進重工業釜山影島造船所第85号クレーンで158日目の籠城中であるキム・ジンスク民主労総指導委員(右上 両腕を上げた人)が12日午前、自身を応援しに‘希望バス’に乗って全国各地から集まった1000人余りの市民・労働者が人間の帯を作り風車をクレーンに付ける間、手を振って答礼をしている。釜山/イ・ジョンウ先任記者 woo@hani.co.kr
ストライキ長期化…出口ない現実
ストライキは長期化し疲労度は高まっている。ここで仕事をして6年目のオ・某(32)氏は「6ヶ月間、月給を受け取れず生活苦が並大抵でない」と話した。オ氏の実兄も韓進重工業労働者として今回 二人そろって整理解雇対象になった。オ氏は「家庭が粉々に砕けた」と話した。勤めて4年目のキム・某(28)氏は精神的にあまりに荷が重い。「力で押され数的に押されて、そうしたことを見ながら毎日毎日が不安だ」と話した。キム氏は「この頃はほんの些細なことでも労組員が互いに争う場合も多いが、それだけ敏感になっているため」と説明した。家族に会えない点も辛い。チェ・某氏は娘が生まれて16ヶ月になるが、一緒に過ごしたのは1ヶ月にしかならない。チェ氏の妻は「娘がパパに馴つかないことに胸を痛める夫を見れば心が裂けそうだ」と話した。
彼らの最も大きな心配は‘希望バス以後’だ。自発的市民が大勢結合した希望バスの乗客が皆去った後、会社が用役を再投入する可能性があるためだ。パク・ドンヨプ韓進重労組労働安全部長は「今後残ったことは用役と警察力にどのように対応するかです。この間、用役は一度も会社内に入ったことはありません。合法ストライキを踏みにじる名分がなかったためです。だが、希望バスを意識した会社が12日明け方、対峙過程で予想できない強硬姿勢をとり、その過程で用役がケガしたといいます。感情が高ぶり、それによりいつ押しかけるかも分からないという不安感があります。」去る11日の衝突時は労働者たちも10人余りが負傷した。
6月12日午後3時30分。700人余りの希望バスのお客さんたちを送り、サングラスをはずしたマスクマンたちの目がしらが赤かった。「ありがとうございます」「ありがとうございます」。出発する‘希望バス乗客’たちは「戦場に置き捨てて行く気持ち」としながら、立ち去りがたい様子だった。彼らを見送った韓進重工業労働者は再び集合した。チェ・キリョン韓進重工業労組支会長は「会社側がいつまた用役を投入するか分からない。皆、緊張してあたらなければならない」と頼んだ。労働者はタバコ1本ずつを分けあって吸い、85号クレーンの警備に出た。また、長い戦いが始まった。
釜山/パク・スジン記者 jin21@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/482317.html 訳J.S