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[ハンギョレが会った人] "恥知らずな親日残滓ら、疎通できない怪物になった"

原文入力:2011-02-27午後06:59:43(6203字)
‘民族問題研究所20周年’イム・ホニョン所長

キム・ミンギョン記者、カン・ジェフン記者

←27日で20周年をむかえた民族問題研究所のイム・ホニョン所長が去る17日、ソウル、東大門区、清涼里洞にある研究所事務室で20周年を迎える感慨を打ち明けている。イム所長は「いつか国家と社会が植民残滓清算を当然の義務と受け入れ、もう研究所が必要のない日がくることを願う」と話した。カン・ジェフン先任記者 khan@hani.co.kr

堂々とした風采に黒縁のメガネを首にかけたイム・ホニョン所長は、インタビューの間‘廉恥’を強調した。親日残滓をきちんと清算できないために解放以後の我が国社会には‘恥知らずにも’羽振り良く生きた人々がとても多かったと語った。こういう‘恥知らず’な残滓が後代にそっくり続き、これらはさらに強力な世界化および新自由主義イデオロギーで武装し、まったく疎通できない‘怪物’になったとし彼は残念がった。文学評論家として知られたイム所長が7年を過ぎて文学に戻ることができず植民残滓の清算にこだわった理由でもある。

彼が身を置いている民族問題研究所が27日、創立20周年を迎えた。18年間に3000種余りの文献資料を収集・分析し、250万人の人物データベースを確認する膨大な作業の末に出した<親日人名辞典>は彼の話のとおり私たちの社会が‘廉恥’を取り戻すための足取りだった。20周年を迎える今年は‘日帝強制占領期間民衆生活歴史館’設立作業を本格的に始める計画だ。イム所長に去る17日、ソウル、東大門区、清涼里洞の民族問題研究所事務室で会った。インタビューが行われた研究所5階事務室には今後、歴史館に展示される日帝時期の史料らが高く積まれていた。

インタビュー/ソク・ジンファン 24時チーム長 soulfat@hani.co.kr

-二十周年をむかえる感慨は格別だと思いますが。

 "親日人名辞典を作った後に所感を聞かれて、オディッセイがトロイ戦争を終えて帰ってきたようだと話しましたよ。一日も気楽な日のない20年でした。2003年から副所長を1年務め、2004年から今まで所長を受け持っています。チョ・ムンギ理事長、キム・ポンウ、ハン・サンボム元所長たちが難しい時期に苦労を多くされ基盤をよく磨いておいてくれたでしょう。日帝植民地が始まった後、9年後に3・1運動が起きたじゃないですか。研究所が親日人名辞典も出して20年を迎えたことは、例えば解放後に親日派が支配した韓国社会で3・1万歳を叫んだようなものです。3・1運動を土台に上海臨時政府も建て独立運動が活発に行われたように、私たちの研究所がその礎石になるでしょう。"

-今後の計画はどんな事がありますか?

 "今までが親日清算に焦点を置いたとすれば、これからは親日清算がなぜ必要なのかを知らせなければなりません。20周年をむかえる今年、日帝強制占領期間民衆生活歴史館建設運動を本格的に推進しようと思います。親日の実状を具体的な資料を通じて国民が直接見て‘本当に恥知らずな人間どもが多いんだな’と感じさせなければならないですね。恥知らずな人間どもが過去にだけいたのではなく、今もいて未来にも出てくる限り、民主主義がどれほど危ういか知らせる場になるでしょう。"

-親日清算ができなかった歴史のために‘恥知らずな’人が生まれたということですね。

“‘恥知らず’という言葉は人間の基本を捨てたという意味ですね。ダンテの<神曲>の中の地獄編にこういう人間像が登場します。地獄の一番下にある9地獄が一番罪深い人を罰する所ですが、そこがまさに生前に恥を知らず誤った人間を集めたところです。国と民族と隣人を裏切った人々で、私たちの場合、親日派らがそこへ行くべきでしょう。他の地獄にいる人は自分の名前を言うが、9地獄にいる人々は自分の名前を明らかにすることを敬遠します。9地獄に行く犯罪は人間の行為の中で最も悪い犯罪ですからね。日帝植民統治はこういう恥知らずな人間を作る過程でした。だから日帝残滓清算というものも単純に人的清算だけを意味するのではなく、‘恥知らずな人間の大量生産’という植民統治イデオロギーを清算することでもあるんです。これができなければ民主主義も虚像で、経済も常に危機を体験するほかはありません。恥知らずだったり恥をかなぐり捨てて金を儲け、権力を追求するならどんなことでもできるでしょう? 高位公職者たちが任命を受ければ国会で聴聞会をするが、廉恥のある人は任命を受けても断るが、そのまま出てくるのは廉恥がないためです。そのような人に掌管させようとする人と、そんな人をなぜ長官にさせないのかと考える一部の国民も廉恥がないのは同じです。”

親日辞典、子孫らの訴訟が多かったが、正当な作業
内容に欠陥はない…追加する人物ら探し補完
“20周年は3・1万歳を叫んだだけ、これから独立運動をしなければね”

-現実に体験する矛盾を日帝残滓と結びつけて考えにくくないですか?

“だから人々に過去の歴史清算が重要なことを現実の中で度々感じるようにすることが必要です。聴聞会で誰が見ても誤ったことなのに最後まで誤っていないと言い張るのは価値観が転倒しているためです。政府が国民生活とかけ離れた事業をしているのも同じでしょう。歳月が流れれば問題意識がかすんでこないかと言うが、私はそうは思いません。 国民の意識水準がとても高まりました。研究所が作られた1991年には皆助けたいが会員加入は難しいという雰囲気でした。ところが今は各種機関が何かしようとする時、私たちの研究所に該当の人の行跡を尋ねてきます。地方で恥知らずな人々が集まり親日派記念事業をしようとしても今はブレーキがかかります。それだけ私たちの社会が発展したということでしょう。”

-研究所の会員たちは主にどういう方々ですか?

“会員が6000人余りになりますが、市民団体の中では自動振替(CMS)比率が最も高いです。とても積極的です。 毎年、夏季修練会をするのですが、眠らずに夜を明かす程に真正性と情熱を持った方々です。公職にある方から学生に至るまで職業も多様です。会員の主軸は80年代民主化世代で、元老級は主に独立活動家の子孫の方々です。若い人々が少なくて、どのようにすれば若者たちの関心を引き出せるか悩み中です。”

-親日人名辞典が発行されて1年が過ぎたが発刊以後はどうだったのですか?

“出る前から色々な法的訴訟が多かったですが、内容と関連しては裁判所で正当性が立証されました。保守言論が辞典が出る前にあらかじめ予想して批判しました。例えば誰々は入っていないし、誰々は入ったというのが皆間違っていました。私はそれを見て果たして新聞がそうしても問題何のかと思いました。本当に恥知らずです。解放以後、韓国史全体でこれほどの業績の研究はないと思います。あらゆる分野の人物がいるので、どんな学問をする人でも辞典を見なければ各分野史の研究ができないでしょう。ところが賞を与える人もいないし、ののしる人もいません。こういう業績を出したら学問する人々が見て賞を与えるべきなのにですね。幸い国民には認められたので販売は予想より多かったのです。寄贈を含めて4000余セット近くなります。”

-辞典を修正する計画はありますか?

“誤字脱字を継続して直していますが、内容的欠陥はまだ見つかっていません。追加で辞典に入れなければならない人は継続調査中です。内容を修正・補完した親日人名辞典保存版と共に日帝協力団体辞典4冊、植民地統治機構辞典1冊、資料集4冊など‘親日問題研究叢書’全17冊を3・1運動100周年になる2019年までに完刊できるよう最善を尽くす覚悟です。”

-去る10年余り、政府が主導した過去史清算作業をどう評価しますか?

“政府の過去史清算作業を見ながら残念だった点は、清算作業が過度に被害者に焦点が合わされているということです。光州民主化運動、済州4・3事件、麗水順天事件、大邱10月事件も全て被害者に焦点を合わせました。補償も重要だが、さらに重要なのは加害者です。加害者の記録が出てこなければならないのに全くありません。加害者が明らかになってこそ辛い歴史の再発を防げますね。加害者は顔のない国家権力として残っています。日帝植民地時期以外にも加害者の人名を整理する研究所がさらに出なければならないと考えます。”

-現政権になり過去史清算作業をする委員会らが大部分、門を閉めました。

“過去史清算は特定の政権の問題ではないが、これをイデオロギーや政治的利害関係の次元で解釈しているようで残念です。難しくなった過去史清算の機会が未完の状態で終わってしまった側面が少なくありません。各種の過去史関連特別法に規定された資料館や財団設立など、その他の後続措置が一つもできていません。事実上、過去史清算作業が阻止されたといわなければならない状況です。個人的な意見ですが、この状態では後日必ず過去史清算問題がまた議論されると見ます。”

支配層、植民支配・新自由主義思想で武装
国民を恐れず善悪価値観 勝手に変えて
“現政権で‘疎通’を語ること自体が滑稽になる”

-現政権も3年経ちましたが、最近の政治・社会的現実をどのように見ますか。

“恥知らずな人が社会支配層になって人々を恥知らずにさせる非常に不幸な時代です。軍事独裁政権ですら廉恥が全く無かったわけではありませんでした。それで、その当時には民主化運動、独裁という言葉が通用しました。ところが今は廉恥のない社会だから、そのような言葉自体を認めません。例えば今‘民主化運動’を言えば‘今が民主主義じゃないか’と言います。集団的な裸の王様の時代なのでしょう。廉恥のある人が見るには真裸になっているのに、自分たちは服を着ていると確信しています。錯覚ではありません。錯覚なら恥じるが、確かに自分は服を着ていると考えるので真裸になったという人々を審判します。価値観が完全に転倒しているのでしょう。”

-現政権を批判的に見ているようですが、具体的にどんな部分がそうですか。

“どんな話も、どんな国民の意見も受け入れません。自分たちが無誤謬と考えているんです。これは唯一信仰とも関係があるでしょう。西欧が他国に踏み込む時の名分が宗教を伝播するということでした。こういう宗教観が恥知らずのイデオロギーと密着し巨大な壁を積んでしまいました。我が国では‘疎通’を言うこと自体が滑稽になりました。いくら正しいことを言っても聞かなければならない人には聞こえないから…。”

-最近、チェ・ジャンジブ高麗大教授は形式的な手続きなどを挙げて‘民主主義が正常に作動した’と言いましたが。

“かえって形式がない方がマシです。恥知らずな人々が自由主義経済体制下で自分の利益を追求する時、何がそれを統制できますか。西洋であればキリスト教倫理が資本主義の反倫理的な欲望を抑制すると言いますが、私たちにはそのようなブレーキもありません。形式的に国会と選挙がありますが、複雑になって巧妙になった政治工学は権力者にいくらでも自分たちを有利にすることができる手段を与えました。従って廉恥を持った社会支配層を創り出すことが民主主義の核心課題です。廉恥を分かれば、たとえ誤りがあり失敗があっても善悪は正すことができるでしょう。”

-価値観の転倒は政権のためですか、あるいは新自由主義イデオロギーの問題ですか?

“合作でしょう。支配勢力や企業、政治家たちが誤った世界化論理と日本の植民支配イデオロギー、新自由主義を組み合わせました。だから、とても力が強いのです。すべてのことがみな転倒しています。歴史、価値観、教育…。この頃、政治家たちが無償給食をポピュリズムだと言うでしょう。価値が転倒しているのです。貧しい人々に対する対策は用意せず、自分たちに気楽な論理のとおりに価値観を変えようとします。”

-現政権が傲慢だというお言葉ですね。

“まったく国民を恐れていません。何でもいくらでも自分たちが有利なようにすることができると感じているので、いくら批判を受けても疎通する必要を感じられないのです。こういう政権も本当に珍しいでしょう。価値観を変えてしまうことに、あまりにも堂々としています。教育を受けなかった人でもできる善悪の判断を、教育を受けた人々がしないしできません。誤りを犯しても拍手を受けられる技巧、恥知らずな行為でも称賛される才能、すごい権力の魔術でしょう。これらが国民を恐れない理由は、現代文明を通じてイメージ操作が可能と見ているためです。インターネットから映像媒体、印刷媒体、教育機関、全て掌握することができると思っているのです。恐ろしいです。それで私は野党が仲間内で争うのを見ると怒りが湧いてきます。‘私は大統領にならず他の人が大統領になるのを助ける’と力を集めればと思うが…。

整理 キム・ミンギョン記者 salmat@hani.co.kr

■イム・ホニョンと文学

“文学が自分の故郷ですが今は下宿屋の境遇

“私が冗談でこういう話をします。文学が私の‘故郷’であり、親日清算など社会問題は‘下宿屋’と言います。今は下宿屋が故郷の家のようになりましたが。”

イム・ホニョン所長は1966年<現代文学>を通じて文学評論家として登壇した後<月刊読書>、<ハンギル文学>、<韓国文学評論>等、文芸紙の主幹を務めた‘文人’だ。1974年には維新反対闘争に立ち獄苦を体験した。彼は今年からは自身の本業である文学に帰り、この間に書いておいた原稿を整理して本も出して批評活動も再開するつもりだと言った。民族問題研究所が<親日人名辞典>を出し重要な峠は越したという判断のためだ。

文学評論家として彼は最近、我が国の文壇に対する憂慮を語った。“最近作家たちは別の見方をすれば時代を忘れ、それこそ文学のための文学をしているようです。とても衒学的であったり。新春文芸小説を見れば文壇では良いと言っても一般読者たちは何を言いたいか分かりません。それで読者たちが読みますか?”イム所長は作家ならば須らく同時代人の痛みをもう少しわかってあげなければなければならないと強調する。“最近2~3年間、昔より困っている人がはるかに増えました。 以前なら、こういう時代には詩人と小説家らが胸を痛めている人々の話しを書いたはずですが、それがないのです。ややもすると文学人だけの文学として人々に見なされることになりはしないかと思えて残念です。”

彼は「文学も新自由主義経済のような論理でそれなりの商品流通構造が作られたし、そのために文学でも善悪の基準が曖昧になってしまった」となげいた。

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/465534.html 訳J.S