米国が日本の広島と長崎に核爆弾を投下してから、いつしか81年が過ぎた。当時の約70万人の被爆者の中には、朝鮮人も約10万人いた。彼らは長きにわたり「強制徴用ー被爆ー無視」という三重苦にさらされながら、境界人のように生きてきた。2016年に「韓国人原子爆弾被害者支援のための特別法」が制定されたが、国の保護責任は不十分であり、被爆の苦しみを受け継いできた子孫たちには保護の手すら差し伸べられていない。今年の定期国会で特別法改正案の可決を目指して活動している韓国原爆2世患友会のハン・ジョンスン会長と、韓国原爆2世患友シェルター陜川平和の家のイ・ナムジェ院長にお話をうかがった。
-今年の定期国会で「韓国人原子爆弾被害者支援のための特別法」改正案の可決を目指しているが、現行の特別法とどのような違いがあるのか。
「原爆被害者と22の市民社会団体からなる『韓国人原爆被害者および被害者子女支援法推進共同対策委員会』の継続的な要求により、2016年5月29日に第19代国会で『韓国人原爆被害者支援法』が可決された。主な内容は、法的被害者は投下時に被爆現場にいた1世に限定する、原爆被害者支援委員会の審議を経て医療費と葬儀費を支援する、追悼公園を造成するというもの。しかし、この法には国の保護責任が明記されていない。世代を超えて被爆の後遺症で苦しむ2、3世を法的被害者から除外しており、全国的な実態調査や支援事務局の設置を欠いた、半端で形式的な支援法だった。そこで、2016年9月に原爆2世患友会と原爆2世患友シェルター陜川平和の家が中心となって『原爆被害者支援法改正推進委員会』を結成し、法改正を求めてきた。内容は、法的被害者を2世に拡大して医療費や葬儀費用、そして2世被害者団体を支援するとともに、国の介護・福祉政策の観点から原爆被害者唯一の共同生活施設である陜川原爆被害者福祉会館への入所資格を与えることが骨子だ」(イ・ナムジェ)
-改正案の骨子の一つは原爆被害者2世に対する支援だが、2世にも苦しんでいる方が多いのか。
「慶尚南道陜川には被害者が多く、2、3世は親の被爆によりゲノムに変異が生じ、生涯にわたって病魔と闘っているが、社会的偏見や差別、そして遺伝性疾患のせいで自らの身分をあまり外に出せない。2002年に故キム・ヒョンニュル烈士によって組織された韓国原爆2世患友会に加入し、各種疾患を訴えてカミングアウトした患友は1350人あまりにすぎない。相対的に人数が少ないのは、国からの支援がないうえ、被ばくによる遺伝性疾患を抱えているため、身分を明かすと結婚や就職などの社会生活が困難になるからだ。2004年12月に国家人権委員会が人道主義実践医師協議会に依頼し、「韓国人原爆被害者2世健康影響調査」が実施されている。調査報告は、被爆2世も3.4~89倍という高い疾病発生率を示すとしている。1991年と2018年の韓国保健社会研究院、2013年の慶南発展研究院の調査報告書も、原爆被害2、3世にも被爆後遺症が発生しているため、支援の法的根拠の整備が必要だと政府に勧告している。今も陜川にはダウン症、知的障害、精神疾患、大腿骨頭壊死症、皮膚疾患などの病を抱える2世が多い」(ハン・ジョンスン)
-韓国は原爆投下の当事国でもなく、日本のような戦犯国でもない。国の責任を認めてほしいという要求をなじみのないものと感じる国民もいるのでは。
「韓国の原爆被害者は、言葉では言い表せない苦しみを抱える被害者だ。これまで韓国の原爆被害者たちは、日本政府を相手取った34回にわたる困難な裁判闘争を通じて、被害者として最低限の人権と権利を回復してきた。この過程で韓国政府は被害者たちを無視し、むしろ訴訟を妨害してきた。1965年の韓日協定の過程においては、日帝の強制動員によって発生した原爆被害者に対する謝罪と賠償の問題に言及すらしていない。また、2011年に憲法裁判所が原爆被害者に対する政府の不作為を認めたにもかかわらず、政府は日本と米国の政府に対して何らの外交努力もしていない。さらに、韓国人原爆被害者の全貌を明らかにする全国的な実態調査を一度も行っておらず、追悼公園の造成などはもちろん、制度的支援策も進めていない。被爆から80年が過ぎたにもかかわらず、自国の原爆犠牲者を追悼する碑すら一つもない。このように韓国政府は、国民として保障されるべき普遍的人権と国の保護責任を無視し、自国の原爆被害者たちを放置してきた」(イ・ナムジェ)
-改正案に対する国会と政府の反応はどうか。
「改正案は与野党に意見の相違はなく、共同で提出された。その後もよく国会とコミュニケーションを取っている。今年4月に提出されたキム・ソンミン議員の改正案は、保健福祉部と十分に協議した上で提出されたものと認識している。国会保健福祉委員会において、政府案を提出するよう保健福祉部に対して積極的に要請している。現在、2つの法案が国会保健福祉委員会第2法案審査小委に付されているが、保健福祉部はまだ政府案を提出していない。これまで政府機関の調査報告書でも勧告されてきたように、今からでも私たち2世の切迫した状況を反映し、国の保護責任を果たしてほしい」(ハン・ジョンスン)
-日本では、原爆被害2世に対する支援はどうなっているか。
日本は1957年3月に原爆医療法を制定し、自国の被爆者に健康手帳を発行して治療を支援している。1968年5月には原爆特別措置法を制定し、自国内の原爆被害者の生活の安定と福祉向上のために手当を支給している。1994年には被爆者援護法を制定し、健康管理、生活向上、福祉増進に向けて包括的支援の法的根拠を整備した。しかし、被爆者援護法の対象に2世は含まれていないため、被害者認定の法的根拠がない。ただし、厚生労働省が定めた被爆2世健康診断調査事業の委託事業のかたちで、一部の地方自治体は実施要綱を定め、2世の健康診断を実施している。このような中、今年8月にハン・ジョンスン会長が被爆2世として初めて長崎で証言し、かなりの反響があった。これまで被爆2世は日本でタブー視されてきたが、ハン会長の証言を機に2世の苦しみにも関心を向けるべきだという声が高まることを期待している」(イ・ナムジェ)
-今後はどのようなことを計画しているか。
「政府に政府案の提出を求めることが要だ。保健福祉部は2020年3月から2024年12月にかけて『韓国人原爆被害者コホート構築およびゲノム解析研究』を実施している。この調査研究の結果を反映して政府案を出すことを約束している。しかし、ゲノム変異と被爆の因果関係が13%確認されたという調査報告書が出たにもかかわらず、それを公開しておらず、追跡観察調査が必要だとの理由で政府案を提出していない。生命権より大切な人権はない。遺伝の医学的、科学的証明にこだわることなく、被害者の命と健康を保護し、ケアの役割を果たすべき政府は、これまで保護義務を放棄してきた。人権保護という規範的観点からも『国民に対する国の保護責任』として、子孫を法的被害者として認めるのは当然だ。『原爆被害者支援特別法改正公対委』を被害者や幅広い社会団体とともに結成し、政府に改正案を速やかに国会に提出させるため、記者会見、国会公聴会、署名運動、文化イベントなどの様々な活動を続けていくつもりだ」(イ・ナムジェ)