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労災で脳損傷の中国同胞に韓国企業「韓国人と同じ賠償額は出せない」…裁判所の判断は

登録:2025-02-28 02:02 修正:2025-02-28 09:46
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 Aさん(56)はにおいがよく分からない。熱いコーヒーカップを脚の上に乗せても感覚がない。熱いカップは脚の上ではなくお盆の上に置いておけと姉に注意されても忘れてしまうほど、記憶力も損なわれた。Aさんはベッドの上だけで生活しており、食事も排便も家族の助けが必要だ。2017年4月21日。他国にやって来て7年後にあった事故は、Aさんに下半身まひと脳の損傷を残した。

 Aさんは中国から2010年に韓国にやって来た中国同胞(在中同胞)労働者だった。初めての韓国で仕事探しも適応も難しかったAさんは、様々な場所を転々とした末、2017年にソウル江西区(カンソグ)のある新築工事現場の配管チームで働くことになった。A社が現代エンジニアリングから機械設備工事を下請けした現場だった。現代エンジニアリングは、今月25日に10人の死傷者が発生した安城(アンソン)高速道路の工事現場崩壊事故の事故現場区間の施工業者でもある。Aさんは携帯用の引き上げ器具を用いてパイプ配管を地下1階から地上3階まで引き上げる作業をしていたところ、シャックル(つり金具の一種)が壊れ、落ちてきた配管に当たってけがをした。頭、額を含む顔、首、ろっ骨、足首が骨折していた。額が陥没し、脳が損傷した。元請けの現代エンジニアリングと下請けのA社を相手取って損害賠償訴訟を起こしたが、訴訟の過程はAさんと家族にとってもう一つの傷になった。元請けの現代エンジニアリングの社員が事件現場の安全担当者として勤務しており、直接Aさんに安全保健研修を実施してもいた。Aさんの作業内容も把握していた。だが元請けは、このような事故を防止するに足る措置は取っていなかった。事故当時、Aさんは配管担当となってからわずか39日の労働者だった。Aさんがおこなっていた配管引き上げは危険な作業だったが、現場には安全要員もいなかった。

 現代エンジニアリングは逆に、Aさんに過失があると主張した。「作業時、不注意で天井に開いている穴との十分な安全距離を確保していなかった」として、会社の損害賠償責任を70%に制限すべきという主張だった。現代エンジニアリングはまた、事故が発生した2017年から3年が過ぎてから訴訟が起こされたとして、消滅時効すら主張した。A社の関係者は訴訟の途中で、Aさんの家族に「人が死んでも2億しか賠償できないのに、会社の破産申告をしてしまった方がまし」とまで言い放った。

 事故後、Aさんを看病している姉(58)は「死ぬべきだったのに、死んだらこれほど会社に損害を与えずに済んだのに、死ななかったことを申し訳なく思うべきなのか、そんなことも考えた。弟が生きていることが罪だという思いがした。このくらいで妥協しろという意味で言われたことでとても傷つき、人に会うことも嫌になり、出歩くのも恐ろしいほどだった」と話した。

 約3年間の訴訟の末、裁判所は会社の損害賠償責任を認めた。仁川(インチョン)地方裁判所民事22単独のイ・ウォンジェ判事は今月18日、現代エンジニアリングとA社に、Aさんに対する9億4000万ウォン(約9730万円)あまりの賠償を命じる判決を下した。これはAさんの治療費、病床で使う医療補助器の費用、看病費などを合わせた金額だ。

 同地裁は、現代エンジニアリングには「事業主として、下請けが使う勤労者が工事資材の墜落または落下の危険がある場所で作業する際に必要な防止措置を取らなかったという過失」があると判断した。また「A社は、Aさんに対する安全配慮義務を怠ったという過失により、この事件事故を引き起こした」と判断した。

 同地裁は、Aさんの過失だとする会社側の主張も認めなかった。同地裁は「Aさんは安全装備を着用していたし、この事件事故はAさんの予想の範囲内にあったようにはみえない」とし、「Aさんは事故発生日の前には類似の作業にかかわったことがなかった」と述べた。会社側は看病費用に関しても、「必要なのは成人男女1人による4時間の介護(看護)だけであることを認めるべきだ」と主張したが、同地裁は「12年間、成人男女1.5人による一日12時間の介護が必要だ」とする神経外科の鑑定医の主張を認めた。

 会社側は賠償額の算定において、在中同胞であるAさんの所得は韓国の賃金を基準にしてはならないと主張したが、裁判所はこれを退けた。現代エンジニアリングは「Aさんは大韓民国の国民ではなく中華人民共和国人であるため、国内に滞在できる期間が経過して以降は中国で得られたはずの所得を適用すべきだ」と主張した。

 だが同地裁は「Aさんは2010年の入国後、国内で生活を続けてきており、重大な欠格事由が存在しない限り滞在期間の延長によって国内に滞在し続けることができたうえ、国内で得た居住地で最初の入国日から現在まで生活し続けてきた」として、会社側の主張を退けた。

 Aさんの姉は、事故後初めて会った時のAさんの姿が今も忘れられないと語った。稼ぐために韓国に行くと言っていた弟が、このような事故にあい、下半身まひを一生抱えて生きていくことになるとは思わなかった。他国において孤独で恐ろしい訴訟を行わなければならなかったAさんの姉は、「後に月給明細書を見たら、弟は月給も上がってきていたし、働き盛りの時にこのような事故にあった」とし、「弟は残りの一生を看護を受けながら生きていかなければならないのに、看護費が12年に制限されたことは残念だ。それでも、過ちもなく無念にも病床で過ごすことになった弟に対する会社の責任を認めてくれて、感謝の気持ち」と話した。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1184454.html韓国語原文入力:2025-02-27 09:30
訳D.K

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