韓国は、わずか7年で高齢社会から超高齢社会に突入するなど、世界で例のないほど急速に老いていっている。国連の基準にもとづく超高齢社会とは、65歳以上の高齢者の割合が人口の20%を超える社会のこと。
24日の行政安全部によると、65歳以上の住民登録人口は1024万4550人で、23日に総人口(5122万1286人)の20%を超えた。韓国は急速な高齢化だけでなく、低成長の常態化、貧弱な福祉、少子化問題に至るまで多層的な課題に直面しており、社会全般への悪影響が懸念される。
■世界最速の高齢化
韓国は2000年に、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が7.3%となり高齢化社会に突入したが、それからおよそ24年で超高齢社会となった。世界で最速だ。フランスは154年、ドイツは76年かかっており、これまでの最速だった日本(35年)よりも11年速い。
さらに、高齢化は今後さらに急速に進む見通しだ。約700万人にのぼる第1次ベビーブーム世代(1955~1963年生まれ)が本格的に高齢者となっていっており、950万人を超える第2次ベビーブーム世代(1964~1974年)が高齢者になる日も近い。統計庁によると、韓国は2044年に高齢者の割合が36.7%となり、日本(36.5%)を上回って世界で最も高齢化した国となる見通しだ。
さらに深刻なのは、少子化の常態化まで重なっていることだ。合計特殊出生率は2002年の1.18から上昇することなく最低値を記録し続け、昨年はついに0.72にまで下落。これにより、2020年には出生児数より死者数の方が多くなる、いわゆる「デッドクロス」と呼ばれる人口の自然減少がはじまった。生産年齢人口(15~64歳)が減るとともに高齢者人口が急速に増えることで、韓国の人口構造は40~60歳の多い現在のつぼ型から、2050年には高齢層の人口が圧倒的に多い逆ピラミッド型へと変化する見通しだ。
急速な少子化と高齢化は、経済に直接的な悪影響を及ぼさざるを得ない。ソウル大学人口政策研究センターのイ・サンリム責任研究員は、「高齢者の増加に伴って購買力が低下するだろう」として、産業的にも「若い人が減るため革新性が落ち、高齢者は引退するので熟練性も低下する」と語った。実際に韓国経済研究院(韓経研)は「人口構造の変化が国内総生産(GDP)に及ぼす影響の推定および示唆点」と題する報告書で、「少子高齢化の深化で生産可能人口が1%減少すると、GDPは約0.59%のマイナス成長となる」と分析している。
財政負担も大きく増える。統計庁の将来人口推計によると、生産年齢人口100人当たりの65歳以上の人口を意味する老年人口指数は、2022年24.8、2030年38.0、2040年59.1、2050年77.3、2060年90.3、2072年104.2と、大きく上昇する見通しだ。延世大学のチェ・ヨンジュン教授(行政学)は、「低成長社会に突入する中で高齢化が深刻化すると、成長率がより下がる可能性が高い」とし、「高齢者の生活の質を高めるために(福祉)支出を増やそうという意見と、経済のために(高齢者)福祉の支出を減らそうという声が、同時に高まるということが発生しうる」と懸念を示した。
労働力の供給不足も喫緊の課題だ。韓国労働研究院雇用セーフティーネット研究センターのイ・スンホ所長は、「生産人口が減るなど、おおよそ15~20年後から労働力の供給が総量的に不足するようになる」とし、「中長期的に、労働参加率の低い青年、女性、高齢層の労働市場への参加を拡大すべきだ」と助言した。
■「高齢者の貧困」1位、働く高齢者も最多
韓国の高齢者の貧困は、先進国で圧倒的な1位だ。65歳以上の高齢者の貧困率は40.4%(2020年)で世界最高水準であり、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(14.2%)の3倍近い。代表的な老後所得保障制度である国民年金の歴史が浅いうえ、基礎年金や各種の福祉政策などが貧弱だからだ。
高齢者が1人以上いる世帯の昨年の所得を項目別に見ると、勤労・事業所得が53.8%で最も多く、政府の福祉である公的移転所得は25.9%にとどまっている。オランダ、フランス、ドイツ、スウェーデンなどの欧州諸国の高齢者の所得に公的年金が占める割合が2003年にすでに80~90%にのぼっているのとは対照的だ。
やむを得ず生計のために働いている高齢者の割合も、世界最高水準だ。OECDの資料によると、昨年の65歳以上の高齢者の経済活動参加率は38.3%で、OECD平均(16.3%)の2.4倍だ。高齢層は積極的に経済活動をおこなっているものの、高齢者の雇用の質は低いため、意味のある所得の変化にはつながっていない。今年、高齢者向け雇用で働いている高齢者に占める単純労務の従事者は34.2%で、割合が最も高かった。
そのため、これまでの高齢者政策を変える必要があるとの声があがっている。韓国保健社会研究院のイ・ユンギョン先任研究委員は、「これまでは、経済的自立や健康などの政策での事後的な支援が多かった」として、「超高齢社会を迎え、先制的に経済的自立を支援する年金を改革することはもちろん、健康政策や福祉政策も予防と貧困の解消を焦点化する必要がある」と語った。仁荷大学のユン・ホンシク教授(社会福祉学)は、「韓国の公的所得保障システムは、増加する高齢者が貧困のリスクから脱せられるほどの支援には達していない」とし、「高齢者の貧困を緩和するためには、基礎年金などに対して財政的な投入が今より積極的に行われなければならない」と助言した。