「あなたは自分を良心的な人間だと考えますか。もしそうなら、あなたは認知症にかかる確率が低いでしょう」
米国の代表的なシンクタンクの一つであるランド研究所が最近発行した認知症関連の研究報告書の結論だ。
65歳以上の人口が5800万人に達する米国の場合、認知症の早期診断はきわめて重要だ。しかし現在、この年代の個人のうち約16%しか認知症検査を受けていない。比較的低い値だ。認知症検査を受ける割合をさらに高め、より多くの認知症発症者を早期に発見できれば、国民の健康を高めて医療費も節約できる。さらに、認知症発症の可能性が高い人たちを対象に認知症検査を受けさせることができれば、より効率的に国民の健康と医療費節約という二兎を得ることができる。これは、人口の老齢化が急速に進行している韓国の場合も同じだ。
ランド研究所はこれを受け、認知症発症の可能性を高める予測因子を発見する研究を行った。その研究では、米国の代表的なアンケート調査「健康および引退研究」から認知と認知症のデータを分析した。これは約2万人の米国の高齢者とその世帯を対象に1992年から実施している研究の関連データだ。
ランド研究所は、このデータのなかから181個の潜在的なリスク要因を検討した結果、全部で11個のリスク要因が認知症発症との相関関係が高いことを明らかにした。
そのなかでも目立つのが「非良心的に生きてきた」という自己認識だ。同研究所は、非良心的に生きてきたという自己認識が強いほど、認知症にかかる確率が高いことを発見した。なぜなのだろうか。
医学研究者らは、何より自分が良心的に生きてきたと認識するほど心理的ストレスが少なく、活動範囲も広がる点を指摘する。また、良心的に生きてきたと考える人たちは、非良心的に生きてきたと考える人たちに比べ、一般的にストレス指数が低いとされる。ストレスが強まると、炎症や海馬萎縮などの脳構造の損傷を誘発する可能性もあわせて高まる。
さらに、良心的に生きてきたと考える人たちは強い社会的ネットワークを維持し、意味のある関係を結ぶ傾向がある。こうした活発な社会的活動は、認知低下を予防する保護要因として作用する。
また、新しいことを学ぶ趣味活動に対する参加度が高い場合も、認知症にかかる確率が低くなることを明らかにした。
この他にも、9個の身体的・遺伝的特徴と行動習慣が認知症と関係があると指摘した。それらの要因は下記のとおり。
▽身体の健康が良くない場合。
▽脳卒中を経験した場合。
▽認知症の発症と関連する特定の遺伝子を保有する場合。
▽60歳になっても民間の健康保険に加入していない場合。
▽仕事をしたことがない、または数年しか仕事をしたことがない場合。
▽60歳で糖尿病を患っている、または肥満指数(BMI)が35以上の場合。
▽酒を過剰に飲む場合。
▽まったく運動しない場合。
▽様々な身体検査で握力、歩行速度、バランス能力などが低い場合。