11月10日に任期の折り返し地点を迎える尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のこれまでの国政運営は、いくつかのパターンを繰り返している。(1)小学校入学年齢の引き下げ、週69時間労働制、医学部増員などの政策懸案では「政策ぶち上げ・突出発言→対立拡大→批判に耳を貸さず押し通す→世論悪化→遅まきながらの収拾」の悪循環の繰り返し(2)4月の総選挙の与党敗北後は、少数与党の局面で「野党主導の法案処理→再議要求権(拒否権)行使→廃案→野党による法案再提出→拒否権行使」が日常化(3)与党「国民の力」のハン・ドンフン代表が尹大統領との差別化を急ぐと、その度に「大統領室内外での拒否感、不快感の表出→政府与党間の消耗的な対立の拡大→政府与党の支持率の同伴下落」の悪循環が繰り広げられる。
今週、激しく吹き荒れている大統領夫人のキム・ゴンヒ女史に関する批判に対する尹大統領の対応は(1)、(2)、(3)が全て入り混じっている。対立は増幅し、世論はどうしようもなく悪化している。
9月10日のキム女史のソウル麻浦(マポ)大橋訪問は、時期も公開のやり方も良くない突出した行動だった。「ブランドバッグ受け取り事件」に対する検察の嫌疑なし判断が差し迫っていた時期であり、野党がキム女史特検を狙っている中で、大統領や長官を連想させる写真と指示事項が公開されたのだ。与野党いずれからも不適切だとの声があがったが、この時、大統領室は「たゆまず弱者、疎外階層の困難に耳を傾け続けていく」と対応した。キム女史問題の解決策を議論しようとしたハン代表の「単独面談要請」も、尹大統領は事実上拒否した。尹大統領の「意固地」は、世論悪化と政府与党の対立のせいで手のほどこしようもなく悪化している。尹大統領が「キム・ゴンヒ特検法」に拒否権を行使し、検察が「ブランドバッグ受け取り」に対して大統領の職務との関連性はないとしてキム女史や尹大統領など事件の関係者を全員不起訴にした今月2日を基点として、政府与党は「共倒れの危機」に陥っている。
これに対する尹大統領の反応は、拒否権を行使した当日に「ハン・ドンフン代表抜きで」国民の力の院内指導部と常任委員長と幹事を大統領室に呼んでおこなった晩さんだった。この席で尹大統領は、「医療改革は絶対に必要だ」などの発言で「国政基調に変化はない」との意志を再確認するとともに、出席者たちと「我々は一つだ」というスローガンを叫んだ。謝罪は根本的な解決策ではないが、親ハン・ドンフン系の議員のキム女史に対する謝罪要求には「どんな決定をしても野党の攻撃を受け続ける恐れがある。謝罪する、しないと言い切るのは難しい状況だ」(大統領室のある関係者)と、はっきりとした回答を避けている。
これまで、このような対応は問題のさらなる悪化を防ぎ、現象維持に効果を示してきたが、今は状況が急変している。キム・ヨンソン前議員、政治コンサルタントのミョン・テギュン氏らに関する候補公認介入疑惑、キム・デナム元大統領室先任行政官が関与した「ハン・ドンフン攻撃教唆」疑惑、ドイツモーターズ株価操作の追加疑惑など、キム女史と直接、間接的に関連する各種疑惑が持ち上がり続けている。ハン代表側は「キム元行政官」の「背後」を標的としつつ、龍山(ヨンサン)との正面対決を準備する姿勢だ。野党は「キム女史特検法の必要性が高まった」として、内輪もめの拡大を狙って与党を強く圧迫している。
尹大統領は今回も「自分は正しい」という態度を保ちつつ、これまでの悪循環を繰り返すのか、それとも今度は悪循環を断ち切って別の選択をするのか。重要なのは、今回の選択に任期後半の自身の運命がかかっているということだ。