野党「共に民主党」が親日行為(編集者注:附日行為。日本統治時代に日本帝国に加担・協力した反民族行為)を擁護した人々の公共機関への進出を防ぎ、独島(トクト)領有権を否定する発言などを処罰する立法を推進する。親日議論に巻き込まれたキム・ヒョンソク独立記念館長の任命など、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の退行的な歴史認識に「対抗する」ためのものだが、表現・学問の自由を縛る違憲的立法という批判の声があがっている。
民主党のチン・ソンジュン政策委議長は20日、院内対策会議で、「民主党は売国的な行動を座視しない。国を守り国土守護のための立法を推進する」とし、「親日・反民族行為を称賛、鼓舞した人を公共機関に進出できないよう法制化し、独島の領有権を否定する行為も処罰するよう法制化する」と述べた。同党のノ・ジョンミョン院内報道担当は会議後のバックブリーフィングで、「特に独島領有権を否定する場合、これは大韓民国の国益を著しく損ねるものであり、内乱罪に該当する可能性もある」とも主張した。政策委レベルで準備中の同法案は、議員総会を経て党方針の法案として進められる予定だ。
歴史的事実を歪曲する発言を処罰しようという趣旨の「歴史否定罪」の立法が進められるのは今回が初めてではない。与野党を問わず政界では韓日の歴史問題が浮上する度に、罰金はもちろん懲役刑まで明示した処罰法が発議されたてきた。与党「国民の力」のウォン・ヒリョン前国土交通部長官は2005年に「日帝強占下の民族差別擁護行為者処罰法」を発議しており、独立運動家の李会栄(イ・フェヨン)の孫であり民主党所属のイ・ジョンゴル元議員も2014年に「日帝植民支配擁護行為者処罰法」を発議したが、全て廃棄された。違憲をめぐる議論を避けられないからだ。
第21代(2020~2024年)国会当時、民主党所属だったヤン・ヒャンジャ前議員が発議した歴史歪曲禁止法案に対する国会専門委員の検討報告書では、「ドイツなど反人倫的犯罪が行われた国家で歴史否定罪が施行されている。その必要性が一部認められるにもかかわらず、過去の歴史が現在の危険として繰り返される可能性があるという因果関係が十分に立証されるなど、厳しい要件の下で最小限に施行されなければならない」と指摘された。特に報告書は「歴史否定行為を処罰することは、国家が歴史的事実に対する判断を独占することになる結果を招くという根本的な問題提起と共に、表現の自由と学問の自由などを侵害し、違憲的要素がある」と指摘している。
尹錫悦政権の歴史観に同意しない専門家たちも、民主党の立法の動きに対しては懸念を示している。革新的スタンスの憲法学者である建国大法学専門大学院のハン・サンヒ教授は、ハンギョレとの電話インタビューで「歴史歪曲の問題は時代精神と憲法精神の問題であるため、社会的・学術的討論を通じて乗り越えるべき問題であり、法で規制する事案ではない。表現の自由を侵害するため、(違憲法律審判で)違憲判断が出る可能性が高く、私が意見書を書くとしても違憲意見を出すだろう」と語った。
このため、民主党が推進する今回の法案も、尹錫悦政権の親日的歴史認識に対する批判世論に便乗した一回性の立法案で終わる公算が高い。しかし、民主党がこれを「党方針」として採択し、圧倒的議席数に物を言わせ本会議可決まで進めた場合、尹錫悦大統領も再議要求権(拒否権)を行使することが明らかで、それにともなう政治・社会的コストは大きくならざるをえない。「議題と戦略グループ:ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長は、「民主党の議席が多く、とんでもない法案も現実化する可能性があるだけに、(民主党は)これからはその責任意識を明確に持つべきだ」と語った。