尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は欧州歴訪から帰国した26日、国家情報院のキム・ギュヒョン院長と第1次長、第2次長をまとめて交代させた。これは、内部の人事対立や権力闘争に対する問責の措置だと読み取れる。首脳部全員を交代させる強硬な姿勢について、大統領室を中心に、国家情報院内部の掌握力を高めるという意向が込められた人事とみられる。
国家情報院の内紛の始まりは、6月に国家情報院の1級人事が翻意されるという初の人事騒動からだった。当時、米国のワシントンやニューヨークなどの海外の各主要拠点のトップが国内に呼び戻された状況が、メディアにそのまま報道された。その後、キム・ギュヒョン院長の側近で秘書室長出身のA氏が、人事を牛耳る中心として名指しされた。キム院長を交代させるべきか否かをめぐり、様々な観測が出たが、尹大統領はキム院長を交代させなかった。尹大統領は、人事騒動後の6月28日に国家情報院の業務報告を受けた後、「国家の安全保障と国民の安全のため、最善を尽くして献身してほしい」と述べ、キム院長を後押しした。
しかし、今月の初めに内紛はふたたび拡大した。人事騒動当時に更迭されたA氏が変わることなく人事に介入しているとする説が出回り、大統領室が内部調査に着手したという話が出てきた。その後、海外情報を担当するクォン・チュンテク第1次長が企業関連の不正問題で職務監察を受けたという話が浮上した。キム院長が今月の尹大統領の外国訪問中に、重要な職務である人事企画官を議員免職形式で交代させたことも、「更迭」に影響を与えたことが分かった。
尹大統領が英仏歴訪から帰国した当日、唐突に辞表を受理する形で国家情報院の首脳部3人を交代させたのは、内部のあつれきと対立をこれ以上放置しておくことはできないと判断したためだ。これら全員を代えないかぎり、すでに指導力を失ったキム・ギュヒョン院長の体制では、内紛の暴露を防ぐのが難しいと考えたのだ。与党関係者はこの日、ハンギョレに「どちらか一方の肩を持つよりも、両方の責任を問うたものと考えられる。国家情報院長が組織をまともに取りまとめることができなかったことを含め、総合的に判断したものとみられる」と述べた。
次期国家情報院長の候補としては、キム・ヨンヒョン警護処長やイ・ジョンソプ元国防部長官、李明博(イ・ミョンバク)政権時に外交安保首席を務めたチョン・ヨンウ「韓半島未来フォーラム」理事長などの名前が浮上している。大統領室は、年内の人選を目標に、国家情報院長の後任を探しているとしている。
さらに尹大統領が、海外情報の責任を担う第1次長に職業外交官出身ではなく陸軍士官学校出身のホン・ジャンウォン元英国公使を任命したことも異例だとする評価が出ている。また、別の与党関係者は「韓米情報共助や情報力強化などの優先的目標が達成された」とし、「(第1次長については)北朝鮮の挑発状況などを考慮して任命した」と説明した。