日帝強占期(日本による植民地時代)に朝鮮女子勤労挺身隊として強制動員された被害者で、30年間韓国と日本を行き来しながら「法廷闘争」を行ってきたヤン・クムドクさんの国民勲章牡丹章の叙勲が突然保留された。外交部が「省庁間の協議が必要だ」として、ブレーキをかけたためだ。強制動員被害者支援団体は「外交部が日本の顔色をうかがっている」と反発した。
国家人権委員会は9日に開かれる「世界人権の日」(12月10日)記念式でヤンさんに国民勲章牡丹章の叙勲を行う予定だったが、土壇場で保留したことが7日、確認された。強制動員被害者支援財団の関係者は本紙に「ヤンさんが牡丹章の受賞者に決まったという話を人権委から聞き、授賞式で使う写真などを用意していたが、6日、突然保留されたという知らせを聞いた」とし、「極めて異例のことなので、困惑している」と語った。賞勲法は叙勲が推薦された場合、行政安全部が国務会議に案件として提出するよう規定しているが、ヤンさんの叙勲の件は6日の国務会議に上程されず、8日に開かれる臨時国務会議でも取り上げられない予定だ。
強制動員被害者を支援するイム・ジェソン弁護士は7日、ソーシャルメディアで「外交部がヤン・クムドクさんの叙勲について『事前協議が必要な事項』という意見を出した事実を確認した」とし、「大統領が、強制動員問題で30年間戦ってきた被害者に賞を与えたら日本側が不快に思うことを恐れ、現在議論されている強制動員関連の韓日協議に影響を与えることを懸念して、外交部側との協議が必要だと言っているとしか思えない」と批判した。
強制動員被害者支援団体は同日、光州(クァンジュ)で行われたソ・ミンジョン外交部アジア太平洋局長との面会でも、「ヤンさんの叙勲を阻止し、国務会議(の案件)に上程しなかった理由は何か」と強く抗議した。同団体によると、外交部は「叙勲に反対しているわけではないが、手続き上、関係機関との事前協議が必要であり、関連報告が遅れたため、意見を出した」と説明したという。外交部が強制動員被害者側と公に会ったのは、パク・チン外交部長官が9月、光州で強制動員被害者のイ・チュンシクさんとヤンさんに会って以来3カ月ぶりだ。
外交部は同日の面会で、日本と協議中とされる強制動員問題の賠償案、「代位弁済」や「併存的債務引受」などについて被害者側に説明した。代位弁済は、韓国政府が日本戦犯企業の賠償金を肩代わりして被害者側に支給し、後で日本側にこれを請求する方式だ。併存的債務引受は、強制動員被害者支援財団が韓日両国企業から寄付金を募り、被害者に支給する方式だ。だが、被害者側は「日本の謝罪を前提にすべき」という立場を貫いており、これらの案を受け入れるかどうかは未知数だ。
ヤンさんは1992年2月、太平洋戦争犠牲者光州遺族会に参加し、人権活動家として活動してきた。ヤンさんは日本企業に一人当たり1億~1億5千万ウォン(約1000~1500万円)の賠償金の支給を命じた最高裁(大法院)の確定判決にもかかわらず、これに従わない三菱重工用に対し、同社の韓国商標権2件を差し押さえ、今まで抗告と再抗告につながる長い戦いをしている。裁判は最終段階を迎えたが、外交部が7月26日、担当裁判所に事実上判決の保留を要請する意見書を提出し、判決はまだ言い渡されていない。