先月27日、ポーランドがK2戦車980台やK9自走砲670門、FA50軽攻撃機48機など、韓国産兵器購入の基本契約を結んだと発表した。輸出金額の規模は具体的な本契約条件により変わるだろうが、少なくとも10兆ウォン(約1兆円)台以上であり、兵器導入後の中長期の後続軍需支援まで合わせると、最大30~40兆ウォン規模と推算される。国産の単一兵器輸出契約としては過去最大規模だ。
LIGネクスワンは今年初め、アラブ首長国連邦(UAE)に35億ドル規模の国産迎撃ミサイル「天宮2」の輸出契約を結んだ。これまで天宮2が国産兵器の輸出契約では最大規模だったが、半年でポーランドへの防産輸出によってその記録が塗り替えられた。同社は昨年12月、オーストラリアとK9自走砲輸出契約を結び、今年2月にエジプトとも2兆ウォン以上のK9自走砲などの輸出契約を締結した。
大規模な兵器輸出が続き「K防衛産業」という新造語まで登場した。最近の傾向が続けば、世界の兵器輸出で現在8位の韓国が世界5位になるだろうという見通しも示されている。防衛産業界では、国産兵器の優秀な性能や米国と欧州の兵器に比べて高いコストパフォーマンス、迅速な供給能力により適時に納品が可能で、現地生産も可能だという点などを輸出の成功要因に挙げている。
冷戦が終わった後、欧州などの軍事強国は戦車や自走砲のような通常兵器を大量生産する必要がなくなった。しかし、韓国は北朝鮮の脅威に備えて、このような兵器を大量生産する防衛産業体制を維持している。ロシアの脅威に対抗してポーランドが望む兵器を大量生産し、早く供給できる産業力量を備えた国が韓国だ。「冷戦の遺物」と考えられていた韓国の防衛産業が力を発揮したのだ。
しかし、K防衛産業の躍進は韓国の兵器のコストパフォーマンスだけでは説明できない。兵器輸出には経済的要因だけでなく、国際情勢と地政学的要因が大きく作用する。 K9自走砲を輸入した国々を見ると、ロシアの軍事脅威(ポーランド、フィンランドなど東欧・北欧)と中国の軍事脅威(インドとオーストラリア)に対応する目的だ。ロシアのウクライナ侵攻以後高まった安全保障に対する不安が、先月のポーランドへの大規模な兵器輸出の背景となった。
兵器は携帯電話や自動車とは全く違う商品だ。兵器は命に直結した商品だ。兵器輸出は対立するどちらか一方に立つ選択になりうる。兵器は使用対象になったもう一方の恐怖と反発を招く。兵器輸出は民主主義と人権という価値の面では議論を呼んできた。
トルコは韓国が1997年にK9自走砲を初めて輸出した国だ。もともとトルコはドイツの自走砲の内部装備を免許生産し、独自の自走砲を開発する予定だったが、紛争助長の可能性や人権弾圧問題などを理由にドイツが輸出を拒否し、韓国のK9自走砲を輸入した。そうして自国モデルの自走砲を開発したトルコは、2019年10月、この兵器で国境を接するシリア東北部のクルド人たちを砲撃した。当時、韓国の市民団体はトルコのクルド侵攻を糾弾し、韓国政府にトルコへの兵器輸出を中止するよう求めたが、韓国政府は何の立場も示さなかった。一方、ドイツやオランダ、ノルウェーなど欧州諸国はクルド人の人権問題などを問題視し、トルコへの兵器輸出を禁止した。
ポーランドが、指折りの戦車大国であるドイツがすぐそばにあるにもかかわらず、遠く離れた韓国からK2戦車980台を輸入しようとする理由がある。ウクライナ戦争で状況が変わってきてはいるが、ポーランド政府はドイツなど欧州連合(EU)と仲が悪かった。EU側はポーランドを人権侵害、言論弾圧などが日常的に行われる国とみなしてきた。ウクライナ戦争前、ポーランドは「ドイツがロシアに融和的すぎる」と批判し、両国関係がぎくしゃくした。
現実的には、韓国が防衛産業の輸出をあきらめることは難しい。防衛産業輸出を産業として「大儲け」だと狭く見るのではなく、人権問題や国際政治などが複雑に絡んだ問題として扱わなければならない。
今年1月、米国の民間安保シンクタンクのケイトー研究所(CATO Institute)は「2021年世界兵器輸出危険指数」(Arms Sales Risk Index)報告書を発表した。ケイトー研究所は、腐敗の有無▽政局不安定の水準▽国内人権蹂躙の有無▽内戦など武力紛争といった4つの要素によって、米国の兵器輸出が該当国にどのような役割を果たし、影響を及ぼしたのか点数を付けた。点数は1~100で、点数が高いほど否定的な影響と見なした。
2021年に兵器輸出危険指数40以上の国は、サウジアラビア、イラク、パキスタン、エジプト、トルコ、インド、メキシコなどだ。このうちエジプトやトルコ、サウジアラビア、インドなどは韓国が兵器を輸出する国だ。
一方、イ・ジョンソプ国防長官は、「兵器輸出の際、人権のような普遍的価値も見ている」と述べた。イ長官は11日、ソウル龍山区(ヨンサング)の国防コンベンションで開かれた担当記者団懇談会で、「(兵器輸出の際)国益も重要だが、人類の普遍的価値と哲学も重要ではないかという指摘に全面的に共感する」と発言した。イ長官は同日「米国のジョー・バイデン政権が人権を強調する方向に兵器輸出政策を変えたが、韓国もそれについて考える時期ではないか」という質問に対し、このように答えた。イ長官は「韓国が兵器を輸出する際、ただお金だけを見て特定の国家に輸出するかどうかを決めるわけではない」とし、「外交部でそのような部分をきちんと確認し、外交安全保障関係省庁間の協議に従って行う」と述べた。