本文に移動

「韓国、2050年までに超強力台風の影響受ける人口が10倍以上に」…世界4位

登録:2022-05-03 02:52 修正:2022-05-03 07:07
[イ・グニョンの奇想天外な気候の話] 
1980~2017年と2015~2050年を比較 
国際研究チーム「サイエンス・アドバンシス」掲載論文で予測 
2050年までに3等級以上の熱帯低気圧発生が2倍に 
気候変動により最大風速が20%上昇と分析
気象衛星「千里眼」による2020年9月6日の「超強力」な台風10号「ハイシェン」の写真=気象庁提供//ハンギョレ新聞社

 「全世界で強い熱帯低気圧(3~5等級)の発生比率は過去40年にわたり増加し続けており、北太平洋西方海上の熱帯低気圧の勢力が最高潮に達する緯度は北に移動した可能性が高い」

 昨年8月、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会(WG1)の第6次報告書(科学的根拠)に記載された、台風やハリケーンなどの熱帯低気圧の変化に関する記述だ。3~5等級とは、熱帯低気圧の風速を基準として分類したサファ・シンプソンン・ハリケーン・スケール(シンプソン・スケール)によるもの。報告書はまた、「地球温暖化の深刻化に伴い、強力な熱帯低気圧(4~5等級)の割合は世界的に高まり、最も強い熱帯低気圧の最大風速は強まるだろう」との見通しについて、「信頼性が高い」と述べている。しかし、「地域的変化によって熱帯低気圧や温帯性暴風は強まるだろう」との予測をめぐっては研究が不十分で、「信頼性は中」と評価している。

 IPCCが提起したこのような熱帯低気圧の地域的変化について、オランダのアムステルダム自由大学などの国際共同研究チームは最近、「世界のほとんでの地域で、今世紀半ばまでに気候変動によって強い熱帯低気圧の発生頻度は2倍以上になるだろう」との回答を示した。研究チームはまた、「人間が誘発した気候変動は、熱帯低気圧の最大風速を20%ほど上昇させ、世界のより多くの地域が危険に陥るだろう」と明らかにした。研究チームの論文は科学ジャーナル「サイエンス・アドバンシス」に掲載された(DOI : 10.1126/sciadv.abm8438)。

人口3800万人の東京の現在(1980~2017年)の年間の熱帯低気圧の影響確率は4.6%だが、気候変動により今世紀半ばまでには確率が13.9%にまで高まると予測された=「サイエンス・アドバンシス」提供//ハンギョレ新聞社

 論文の第1著者であるアムステルダム自由大学環境研究所のナディア・ブリュメンダル研究員は、「様々な気候変動の条件が地域規模で熱帯低気圧にどのような影響を及ぼすかについては、科学的な合意形成が足りていないため、熱帯低気圧に対するリスク評価を難しくしており、緩和戦略の樹立の壁になっている」と述べた。

 熱帯低気圧は1年に80~100個ほど発生するが、大半は上陸しない。熱帯低気圧についての精密な史料もほとんどない。このことは、強力な熱帯低気圧がどこで発生し、どのような備えが必要なのかを予測しづらくしている。

 研究チームは、過去の熱帯低気圧の資料と地球気候モデルを結びつけ、数万個の「合成(模写)熱帯低気圧」を作った。また「合成熱帯低気圧生成モデル(STORM)」というプログラムを用いて、最大で1000年の再現周期(1000年に1度の確率)で、10キロメートルの解像度で全世界の風速地図を作成した。

 分析の結果、3等級以上の強い熱帯低気圧の頻度は、現在はほとんど発生していない地域を含めて全地球的に増加し、特に香港と南太平洋で高い等級の熱帯低気圧の確率が大きく上昇すると予測された。一方、弱い熱帯低気圧や熱帯性暴風は世界のほとんどの地域で減ると分析された。ただしインドのベンガル湾とメキシコ湾では、強い熱帯低気圧の頻度が減少すると推定された。

 研究チームの分析結果は、「大気中の二酸化炭素濃度が2倍になれば、3等級以上の上陸台風が50%ほど増加するだろう」とする基礎科学研究院(IBS)気候物理研究団の研究内容と一致する。

相対的変化は現在の状態と未来予測を相対的な比率で評価したもので、絶対評価とは異なる。かつて台風の影響をさほど受けていなかった地域では、気候変動による相対的な変化がはるかに大きく表れる=「サイエンス・アドバンシス」提供//ハンギョレ新聞社

オーストラリアは3等級にさらされる人口が9375%増と予測

 今回の研究結果は、2年前に台風強度分類に「超強力」等級を新設した韓国にとっても示唆するところが大きい。気象庁は2020年5月、「この10年間に発生した台風は『非常に強い』(最大風速44メートル以上)の頻度が半分を占めているため、最大風速が54メートル以上の『超強力』等級を新設する」と発表している。超強力台風はシンプソン・スケールにおける3等級(最大風速50~58メートル)に当たる。

 国際共同研究チームによると、強い熱帯低気圧の発生頻度増加に伴う影響人口の変化予測において、韓国は3等級以上の熱帯低気圧の影響を受ける人口が、基準となる1980~2017年に比べて2015年から2050年までの間に相対的に935%増加するという。また、絶対的な影響人口は延べ5940万人に達すると推計された。相対的な変化では世界4位。

 100年再現周期の1等級台風の影響の変化が最も大きい国はカンボジアで、1万2550%も増加すると分析された。基準となる年には海岸線に隣接する小さな村で4万人程度が1等級の風速の影響を受けたのに対し、気候変動の下では首都プノンペン(危機にさらされる人口は100万人)までも影響を受けるとの見通しを研究チームは示した。500年再現周期の3等級熱帯低気圧の影響を受ける人口の変化はオーストラリアが最も大きく、9375%に達した。

 研究チームは「現在、熱帯低気圧の影響が相対的に少ないカンボジア、ラオス、モザンビーク、ソロモン諸島やトンガなどの太平洋の島国が、将来増える危険に直面するだろう。 熱帯低気圧にさらされる人口が最も大きく増加するのはアジアで、中国、日本、韓国、ベトナムなどで数千万人が強い熱帯低気圧の影響を受けるだろう」と語った。

 研究チームが分析した100年および500年再現周期の熱帯低気圧にさらされる人口が10位以内に入る国の大半は開発途上国だ。論文の共同著者であり英サウサンプトン大学教授のアイバン・ヘイグ氏は「熱帯低気圧を経験していない一部の地域が気候変動によって近い将来熱帯低気圧を経験すると研究結果が予想しているのが懸念」だと述べた。

イ・グニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1041272.html韓国語原文入力:2022-05-02 17:25
訳D.K

関連記事