21日(現地時間)に行われる文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領の初の首脳会談では、北朝鮮と北朝鮮核問題についての協議が“議論の中心”になる予定であり、両首脳が発表する共同声明には、2018年4月27日に南北首脳が合意した「板門店(パンムンジョム)宣言を尊重する」という趣旨の文言が含まれることが分かった。あわせて今回の首脳会談では、韓米ミサイル指針の解除問題および両国間での原子力産業の協力案も議題として扱われる見込みだ。
4・27板門店合意を尊重…南北間の独自性を認定するという意味
文大統領に随行し米国のワシントンを訪問中の大統領府関係者は20日、記者団に「米国の対北朝鮮政策の検討に、韓国はそれほど寄与しなかったのだろうか」とし、「南北関係に対する(米国の)尊重と認定の意味で、板門店宣言が含まれることがあり得る」と述べた。文大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の初の首脳会談の成果物として出てきた板門店宣言には、核のない朝鮮半島の実現、年内の終戦宣言、敵対行為の全面中止などの内容が加えられた。同関係者は「朝米間の合意だけではなく、南北間の合意もすべて尊重するということ」だと説明した。板門店宣言が両首脳の共同声明に含まれるとすれば、これは、米国が南北間の合意の履行のレベルでなされる協力を尊重するという意味とみなせる。南北関係の改善が朝米交渉と速度を合わせることを望んだドナルド・トランプ政権とは異なるアプローチを示唆したものでもある。最近、バイデン政権側が「実用的な」北朝鮮に対するアプローチを強調し、「最大限の柔軟性」を維持するという意向を表明したことの流れに沿っていると考えられる。あわせて、対北朝鮮制裁の枠組みを破らないにしても、南北間の独自の協力事案については米国側の支持を確保しようとした韓国政府の要請を、米国が受け入れた形だ。過去にはトランプ政権が、制裁を理由に人道的な協力のレベルで推進されたタミフル(インフルエンザ治療薬)支援事業や南北の鉄道共同点検にもブレーキをかけ、議論が起きたことがある。
「完全なミサイル主権」への道が開かれるのだろうか?
大統領府関係者はさらに「我々の外交安全保障チームは、文大統領の任期が終わる前に“ミサイル指針解除”問題をなんとしても解決するという意志と構想を持っていた」とし、「その可能性について、明日(韓米首脳会談で)肯定的な結論を出せるのではないかと思う」と述べた。両首脳の議論により韓米ミサイル指針が解除される可能性が開かれているという意味だ。同関係者は「韓米ミサイル指針は作られて42年になる。当時、我々がミサイル技術を得るために“米国の統制のもとでミサイルを持ってくる”ことにしたが、むしろ足かせになった」とし、「そのため文在寅政権の発足時から、ミサイル主権をいかに確保できるかを課題として抱えていた」と述べた。1979年の朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代に作られたこの指針は、締結当時はミサイルの最大射程距離を180キロメートルに制限した。以後4回の改訂を経て、ミサイルの射程距離は880キロメートルとされるが、弾頭の重量制限はなくなり、宇宙ロケットに対する固体燃料の使用制限も解除された。両首脳が指針の解除に合意する場合、韓国は42年ぶりに完全なミサイル主権を確保することになる。
同関係者はそれ以外にも、韓米協力の具体的な事例として「両首脳が原発での協力を論議し、会談後にその結果を公にする可能性がある」と明らかにした。彼は「中国を除くと韓国ほど、価格競争力、品質管理、施設管理面での優秀性を持った国はない」とし、「基礎固有技術や設計技術については韓国も水準は相当高いが、米国も優れた技術を保有している」と説明した。中東や東欧などに原発建設の需要があるだけに、原発技術が進んでいる両国が共同で第三国に進出する案が考慮されているということだ。これを通じて「(両国が)未来に進まなければならない到達点を共有」し「明示」するという点で意味があると、同関係者は強調した。
米国「北朝鮮が首脳会談での議論の中心テーマ」
米国側は、韓米首脳会談で議論される議題として、北朝鮮問題、気候、経済パートナーシップ、中国、新型コロナに対する協力などを挙げた。米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はこの日の定例会見で記者団の質問に答え、「私たちはもちろん、北朝鮮が議論の中心テーマになると予想している」と述べた。彼女は「しかし、彼らは気候、経済パートナーシップ、中国についても論議するだろう。それらはすべて、明日の両者の対話と出会いの一部になるだろう」と述べた。今回の首脳会談で、新型コロナワクチンの共有、半導体やバッテリーなどの技術協力および投資、中国問題を含めたインド太平洋地域の安定、気候変動への対処など幅広く議論されるが、北朝鮮問題も引き続き大きな割合を占めるはずだという話だ。
これについて米政府高官は前日、韓米首脳会談関連の記者会見で「今回の(文大統領の)訪問は、北朝鮮の挑戦と両国がどのように対話で前進していけるかについての議論に相当の時間を使うはずだと予想できる」と述べた。
サキ報道官は会見で「バイデン大統領は、北朝鮮の金正恩国務委員長との対面会談を行う可能性を排除しているのか」という質問には「それがこの議題の最優先事項になるとは予想していない」と述べた。
サキ報道官は、中国を牽制する性格を持つ米国・日本・インド・オーストラリアの4カ国の協議体であるクアッドに韓国が参加する問題には距離を保った。彼女は「クアッドのメンバーシップに変化を加えることについては、予測したり予想することはない」とし、「韓国は米国とって極めて重要なパートナー」だと述べた。韓米首脳会談後に出される共同声明にも、中国牽制を念頭に置き地域内の平和と安全に関する表現が含まれるはずだと米高官は伝えた。
サキ報道官は、米国の新型コロナワクチンを韓国と共有する問題についての質問には「二人の指導者は必ず、新型コロナとの戦いにおいて米国が韓国を支援する方法と、全世界のパンデミックと戦うために協力する方法を論議すると予想している」と述べた。彼女はワクチンをどう均等かつ公平に世界に分配するのかに関する決定がまだ未確定だとしながら「その評価は明日(首脳会談)に先立ち決定されはしないと予想している」と述べた。