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「フェイクニュース」法律で取り締まろうとして「国民の口」を塞ぐ恐れも

登録:2019-10-09 09:08 修正:2019-10-10 14:31

「韓国の表現の自由の現住所」カンファレンス 
国連人権調査官・専門家の声 
「フェイクニュース遮断法、人権侵害の恐れも 
刑事処罰の代わりに言論がバランスを取るべき」 
「公営マスコミの検証機能が対応手段」 

「1人放送に対する規制、大型メディアと区別すべき 
違法サイトの遮断、裁量権が多すぎる」 

事実の適示による名誉毀損罪に対する批判も 
「MeToo・パワハラの暴露の抑制に悪用される」

ダニエル・メウィステル国連人権調査官(左)とパク・キョンシン高麗大学教授が今月4日午前、ソウル江南区(株)スタートアップ・アライアンスで開かれたカンファレンス「韓国の表現の自由の現住所」で、自由規制論について発表と対談を行っている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 虚偽のねつ造情報である「フェイクニュース」に対する社会的議論が広がる中、フェイクニュースの温床とされるYouTube(ユーチューブ)などに対する政権与党の強力な総合対策が今月1日に発表された。しかし、一方ではこのような対策が表現の自由を萎縮させ、国民の口を塞ぐのではないかという懸念の声もあがっている。

 今月4日、オープンネットの主催でソウル三成洞のスタートアップ・アライアンスで開かれた「韓国表現の自由の現住所」カンファレンスでは、韓国のフェイクニュース遮断法の制定が、国際人権法などに照らして人権侵害の恐れがあるという問題提起が行われた。国連人権委員会は、表現の自由が恣意的に裁断される可能性があるという点で、基本的にこのような動きに反対している。

 第1セッション「韓国の特殊なデジタル表現の自由規制論」で、パク ・キョンシン高麗大学法科大学院教授と開いた座談会で、ダニエル・メウィステル国連人権調査官は「国ごとに選挙の局面では法的に表現の自由を一部制限することがありうる。各候補の選挙キャンペーンで相手を根拠もなく誹謗した場合、法条項で制裁することができる。全体的な枠組みでは、独立メディアなどが自由に発言し、バランスを保つことが重要だ。追加的な刑法的処罰や制限をする傾向は正しくない」と誤用・濫用の可能性について懸念を示した。

 フェイクニュースをめぐる政治的意図を警戒し、これを防ぐために放送などのレガシー(伝統的な)メディア、特に公営メディアが本来の役割を果たすべきだという意見もあった。パク・キョンシン高麗大学教授は「これまでは、インターネットを若者たちが掌握していたが、今は技術の発展で比較的保守的な壮年層までみんなが公論の場に参加できるようになった」とし、「革新陣営ではすでに約10年前に、李明博(イ・ミョンバク)政権の経済政策を批判して処罰を受けた『ミネルバ波紋』を経験した。フェイクニュースに国家的規制を加えるのは妥当ではない。インターネットの中で競争させた方が公平だ」と述べた。さらに、「フェイクニュースのシェアが歴史を変えるほど政治に影響を与えたという証拠はない。フェイクニュースが流れると、公営メディアがこれを早期に検証・整理して解決することで、社会的混乱を減らすことができる」と強調した。

 韓国社会で急浮上したネットフリックスなどOTT(Over The Top オンライン動画サービス)規制に対する国際的基準はどうだろうか。事実上1人放送体制であるYouTubeやアフリカテレビなどは放送とプラットフォームが違うだけで、サービスは似ているため、放送だけに厳格な審議を適用するのはダブルスタンダードという意見もある。これに対し、国会でも法制化を進めている。メウィステル人権調査官は「1人放送は法的義務を負う必要はない。大型メディアとは異なる制限を受けなければならない。コンテンツそのものを規制し始めれば、表現の自由を侵害する結果を生む。国際法上、適法性や比例性、長期性などの原則を考慮し、OTTサービスに対する政府の規制が公共の権利にどのような影響を及ぼすかを考慮して、慎重に決定しなければならない」と述べた。

 これに先立って、2月に放送通信審議委員会が導入した「SNI(Server Name Indication)フィルタリングを通じた海外違法サイトへのアクセス遮断制度」についても、過度に広範囲な裁量権を与えているという批判の声が上がった。メウィステル人権調査官は「違法コンテンツの概念が曖昧だ。どれが違法なのかについて、法に明確に明示しなければ、規制が濫用されかねない。また、コンテンツの遮断の予測可能性も保障されない」と懸念を示した。しかし、放送通信審議委員会は外国の違法サイトを遮断することは主に賭博や、麻薬、淫乱サイトなど国内法上明白な違法に該当する場合に限っており、個別サイトを検閲するためのものではないと主張している。

 第2セッションの「事実の適示による名誉毀損罪、侮辱罪は国際人権基準に合致するか」では、批判的な世論を萎縮させる行為に対する激論が交わされた。国連人権委は「民主主義で、互いに対する建設的な議論が妨げられてはならない。個人の自由を侵害する懲役刑は行き過ぎだ」とし、韓国の名誉毀損罪の廃止を一貫して勧告してきた。しかし、韓国は名誉毀損罪と侮辱罪の告訴・告発が最も多い国の一つで、今でも告訴・告発が増え続けている。韓国外国語大学のキム・ミンジョン教授(メディアコミュニケーション学)は、「政治家など公人が自分たちに不利な報道やオンライン上の掲示物が出れば、ひとまず告訴して脅しをかけるケースが多い」と批判した。ナ・ギョンウォン自由韓国党院内代表が最近、選挙法上虚偽事実公表罪、候補者誹謗罪条項などを積極的に活用し、ハンドルネーム約170個を侮辱罪で告訴し、チョ・グク法務部長官が民情首席時代、自分に対する誹謗文をブログに掲示したネチズン2人を名誉毀損罪で告訴したことなどを例に挙げた。

 オープンネットのソン・ジウォン弁護士も、「性暴力の加害者がMeToo暴露を初期に鎮火する手段として名誉毀損の告訴を悪用する」とし、「MeTooのほかにも企業の不正、上司のパワハラ、権力者の不正行為などを内部告発し、公論化する過程で多数が経験する弊害だ」と述べた。そして、「記者も十分な根拠と事実確認をもとに記事を書いても訴訟を経験したり、告訴 ・脅迫を受けて後続報道を控えて自制したケースもある」と指摘した。 メウィステル人権調査官は「ノルウェーには刑法上の名誉毀損条項があるものの、ほとんど死文化した。公人や政治家がこれを乱発するのは懸念すべきことであり、ジャーナリストを名誉毀損罪で脅迫することは人権法に違反するもので、改善しなければならない」と強調した。

ムン・ヒョンスク先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/media/912480.html韓国語原文入力:2019-10-08 20:01
訳H.J