18日、イム・ファンス国税庁長候補者に対する国会人事聴聞会の場まで飛び火した「トップスターS嬢の巨額脱税事件」に疑惑の視線が集まっている。特に、必要経費に対する領収書を提出しないという極めて単純な手法の脱税を数年間にわたり繰り返し実行したという納得し難い行為に、疑惑が深まっている。
国税庁と監査院によれば、S嬢は2011年に年間42億7500万ウォン(1ウォンは約0.1円)の収入を得たと税務当局に届けた当時、「旅費交通費等」の項目で18億8000万ウォンを使ったとしながらも、この内17億4900万ウォンに対する領収書を添付せずに申告書を提出した。旅費交通費等項目の93%を領収書なしで提出したわけだ。これは税務当局の目に容易に留まり、税金の追徴を受けやすい行動と判断されるために疑問が呈されている。
なおかつ、この様な手法の税金逃れを1年ではなく数年にわたり繰り返し行っていた。総収入54億5400万ウォンを得たと届けた2009年の「旅費交通費等」項目では23億7100万ウォンを使ったと明らかにした。その年も95%にあたる22億4500万ウォンは領収書で裏付けされない「無証憑」申告だった。2010年(総収入40億5300万ウォン)も「旅費交通費等」(17億200万ウォン) に占める無証憑割合が88%(15億200万ウォン)に達した。3年間の総額を見れば、全旅費交通費等項目の内92%が無証憑(59億5300万ウォンのうち54億9600万ウォン)だった。
必要経費を裏付ける領収書を添付しないこうした手法の税金逃れは、理解し難い行為と判断される。そのうえS嬢が税務代理人である公認会計士を別に置いて税務業務を処理してきたトップスターという点で、疑問はより深まる。以前にも論議をかもした芸能人らの税金逃れを見ると、所得自体を隠して届けるとか、虚偽の領収書を添付して必要経費を脹らませる手法だった。S嬢の事例はこれとは異なる。脱税論議に巻き込まれたことのある放送人カン・ホドン氏の場合、虚偽の領収書から足がつき、それでも担当税理士の単純な手違いだったと後に国税庁で明らかにしたことがある。
興味深い点は、S嬢の税金逃れに対して税務当局と専門会計士側から全く異なる解釈を聞けた点だ。
税務当局側は一種の「行跡を隠す」目的だった可能性を挙論し注目を集めた。国税庁関係者は「領収書を提出しにくい事情があったのではないか」と述べた。この関係者は「推測にすぎず、正確な事情は分からないが、数年間連続して同じ方式の税金逃れを行ったことを勘案すれば、単純な間違いとは言い難い」と付け加えた。領収書を提出して行跡を見られるよりは、無証憑による追加税金を納める選択をしたかもしれないとの分析だ。S嬢の税金逃れは国税庁に摘発されたのに続き、国税庁の処置に対する監査院の指摘により数十億ウォンの納税につながった。
税務分野の専門家である会計士のイ氏は、税務当局側とは異なり「納税者と税務当局の連携説」を申し立てた。イ会計士は「必要経費の90%前後を領収書なしで届けたことは理解できない」として「収入隠しが領収書無しに変えられた疑いがある」と語った。税務代理人を別に置いているにもかかわらず、領収書を添付せずに税金申告書を数年にわたって繰り返し提出したということは、納得しにくいためだ。
イ会計士は「本来、税務調査の核心は所得隠しの有無であり、それを摘発すれば連鎖的な波及効果を起こす」と説明した。所得自体を隠したことが発覚すれば、収入(売上)が増えた分、所得税を追加で納める必要が生じるだけでなく、それによる付加価値税10%、加算税を追加で納めなければならないためだ。これとは異なり、必要経費に対する領収書を添付できないために発覚した場合には、経費認定を受けられない分の所得税を納めれば済むので差が大きいとイ会計士は説明した。国税庁の税務調査時に、所得(売上) 隠し問題を核心にするのはこのためだ。
イ会計士はこのような事情により「多くの金額を追徴される所得隠しが、無証憑に変更する方向で処理された可能性があり得る」と述べた。また「国税庁が所得隠しを疑って調査したはずなのに、経費に対する領収書がないとして処理したことは理解しにくい」と付け加えた。一方、S嬢の所得隠しの件は18日、イム・ファンス国税庁長候補者に対する国会人事聴聞会の場で国税庁の「見逃し調査疑惑」に飛び火して注目を引いた。
キム・ヨンベ記者 kimyb@hani.co.kr