軍事政権時代に九老(クロ)工業団地造成という理由で土地を奪われた農民と遺族たちが、52年目にしてようやく損害賠償を受けることになった。
ソウル中央地裁民事26部(裁判長チョン・イルヨン)は、1960年代に九老工団一帯の農地を奪われて訴訟を起こし軍事政権の弾圧を受けて訴訟をあきらめた農民の遺族キム・某(43)氏など36人が出した損害賠償請求訴訟で「国家は総額330億ウォンを賠償せよ」として原告一部勝訴の判決を下したと5日明らかにした。
朴正熙政権は1961年9月から九老輸出産業工業団地(九老工団)を造成するという名目で、30万坪の土地を強制収用し農民たちを追い出した。 農民たちは1964年国家を相手に土地を返してほしいと訴訟を起こし、4年目の1968年最高裁は「国家は土地を農民に返還せよ」と判決した。
しかしまた別の弾圧が始まった。 国家が訴訟で負けた後、検察と中央情報部は「訴訟書類を偽造した」として農民を不法連行・監禁し、民事訴訟をあきらめるよう迫った。 このようにして被害をこうむった人は200人余りに達した。 大部分が強圧に勝てずに訴訟を取り下げた後に釈放されたり不起訴処分を受け、最後まで持ちこたえた40人余りは結局起訴されて処罰を受けた。 朴正熙政権は捏造された捜査結果を基に「民事訴訟は農民の詐欺によるもの」として再審を請求し、1989年最高裁は「この土地は国家所有と見るのが正しい」と判決した。
処罰を受けた農民とその遺族は2006年<真実・和解のための過去事整理委員会>(真実和解委)に真実糾明と名誉回復を申請した。 真実和解委は2年後「国家が政府の政策を押し切るために民事訴訟に介入して公権力を不当に乱用した」として真実糾明決定を下した。 処罰を受けた人々は2009年刑事裁判に対する再審を請求して2011年無罪を宣告された。 彼らは1989年の最高裁の民事裁判再審宣告に対しても再再審を請求し、昨年ソウル高裁は「農民の不法行為を前提に下された当時の最高裁判決は不当だ」と判決した。 この判決で被害者たちは、現在国家名義となっている土地は所有権移転が可能になった。 しかしキム氏など36人の場合、国家に奪われた土地がすでに第三者の名義に渡った状態なので土地を譲り受けることができなくなるや、国家を相手に損害賠償を請求したものだ。
イ・ギョンミ記者 kmlee@hani.co.kr