雨脚がガラス窓を叩いた。バスは急いで‘痛み’を訴える南方の都市へ向かった。
全国的に冷たい風雨が吹きつけた6日朝、ソウル・光州(クァンジュ)・全州(チョンジュ)などから‘生命のバス’の前に市民たちが一人二人と集まった。 廃業強行に対抗して厳しい戦いを行っている晋州医療院の職員たちと患者を応援するためだ。 フロントガラスには‘お金より生命を’という字句が貼られた。
ソウル発3号バスの後方に乗ったキム・ムンジュ(30・写真)氏は‘再生不良性貧血’という難病と11年にわたって戦っている。 この前までは生活保護対象者であったキム氏は、今は医療給付を受けられない次上位階層だ。 この病気にかかれば骨髄の血液を作る機能が壊れ免疫力が下がり止血もうまくいかない。 目まいと無気力症をしばしば感じるというキム氏はどうして往復9時間を超える‘生命のバス’に身を乗せたのだろうか。
"難病を病んでいるので病院利用が頻繁だが、公共医療機関を閉鎖されれば低所得層としてとても不安です。 朴槿恵(パク・クネ)政府が大統領選挙時の(重症疾患)無償医療の約束は後回しにしているけれど、公共医療だけはどうかなくさないで欲しいです。"
ソウル瑞草区(ソチョグ)のソウル聖母病院前で3台の生命バスに分譲した人々の考えは少しずつ違っても‘公共医療のき損だけは防がなければならない’という点だけは同じだった。 3号バスに乗った大学生イ・アへ氏は 「ホン・ジュンピョ慶南道(キョンナムド) 知事が‘慶南のオ・セフン’になろうとしている。 公共医療機関の赤字は‘良い赤字’なのに、廃業するという。 お金より生命の方がもっと重要だ」と話した。
生命のバスの搭乗者たちは、朴槿恵政府も医療を国民健康増進および病気治療という公共目的としてよりは、金を儲ける手段だと思った李明博政府の政策基調を踏襲するのではないかと憂慮した。 2008年全国的に起きたろうそくデモで医療の商業化反対の声が高まったが、結局は2012年10月営利病院設立が可能になるように経済自由区域法施行規則が用意された。 また、政府は2009年から毎年約60億ウォンをかけて民間病院の国外患者誘致事業を支援してきた。 その結果、国外患者は2009年約6万人から2012年には15万人を突破した。 行き場のない低所得・老人層患者たちが晋州医療院から追い出される状況と極端な対比を見せている。
バスが忠南(チュンナム)天安(チョナン)を過ぎる頃、去る4日から国会で晋州医療院の廃業に反対して断食座り込み中のキム・ヨンイク民主統合党議員の文字メッセージが記者の電話機に舞い込んできた。 「今日は私が晋州に下って行きます。 座り込みは国会でなく晋州で続けます。" キム議員はこの日、昌原(チャンウォン)で晋州医療院の解決方法を探す円卓会議に参加した。
大粒の雨滴が止んで来る頃、生命のバスは座り込み39日目の晋州医療院に到着した。
"お金より生命が大切…ホン・ジュンピョ知事、慶南のオ・セフンなるつもりか"
低所得層・応急医療などを引き受け
公共医療の赤字は‘良い赤字’
利益が出ないからと閉鎖するなら
生き残る地方医療院はない
今回の機会に公共医療に関連して
中央政府の統制さらに強化すべき
‘病める人々’と‘病める人々を世話して辛い人々’を訪ねて‘共に痛みを分かち合いたい人々’が晋州に集まった。 医療院2階講堂では103年の伝統を誇る晋州医療院の歴史が動画で流れた。 15年目になるという職員は 「私たちの病院の歴史が走馬灯のようにかすめる」として涙まじりに話した。 39人だけが残った患者の澄みきった目には不安がいっぱいだった。 特にお金がなく扶養義務者のいない老人たちは、病院から追い出されれば行く所がない。
23年間入院しているというイ・ガプサン(79)おじいさんは「娘がいるが連絡がつかない。 他の病院には金がないので行けない」と話した。 白いゴム靴をはいたアン・ウヨン(91)おじいさんは「胃癌の手術を受けて病院で余生を終えようとしたが…」として喉をつまらせた。 黒いゴム靴を履いたソ・ヘソク(66)氏は「住民と患者の意を無視するホン・ジュンピョ知事は支持票が一票もない‘ホン・ムピョ(無票)’」と言い切った。 7階と8階の老人病棟の中で7階はすでにがらりと空いていた。 8階にもわずか24人が残っているだけだ。 顔がほんのりと桃色のソン・ユンソク(84)おばあさんは「糖尿のために死にそうだったが助かった」として「子供もなくて本当に行くところがない。 どうか廃業だけはやめてほしい」と訴えた。
事実、晋州医療院は‘金にならない’ホスピス病棟を運営して赤字を増やした。 金がないという理由で一般病院が冷遇する医療給付患者が全体の40%を占める。 晋州地域の低所得・老人層の‘強固な生命の紐’の役割をきちんと守ったことを立証する。 だが、ホン知事は晋州医療院が収益を出せず借金が大きく積もったという理由で廃業に追い詰めている。 このような論理であれば全国に34ヶ所ある地方医療院の中で胸を張って生き残れる所を見つけるのは難しいというのがチョン・ペククン慶尚(キョンサン)大医学専門大学院教授の説明だ。
"保健福祉部の資料を見ても、34ヶ所の地方医療院の中で黒字は7ヶ所程度であり、その規模も僅かな水準だ。 全体の65%が100億ウォン以上の借金を負っている。 そのために、もし晋州医療院が廃業されれば他の地方医療院も次々と同じ道を辿りかねない。"
そうでなくても去る2月には民間医療機関も公共保険事業を行なうことができるようになり、これを政府が支援できるようにする方向で公共医療法が改定された。 現在、医療機関全体の6%にも達し得ない公共医療機関をもはや拡充する必要性を感じられない政府の認識をそのままに表わした‘改悪’だ。 イ・ジンソク ソウル大医大医療管理学教室教授は、この際地方医療院など公共医療に対する中央政府の統制をさらに強化すべきだと見ている。 「感染病対処、応急医療、低所得層診療など民間病院が(低い)収益のためにやろうとしない領域に対して公共病院が損害を甘受して責任を負ってきた。 中央政府が地方医療院に対する責任を強化して、国家中央医療院や国立大病院が地方医療院を支援するようにする公共医療発展網を備えなければならない。」
‘チョ・○ソン(f/76)’。ホスピス病棟の病室に掲示された76才の女性患者の表札だ。 ドアの隙間から末期胆道癌患者が見えた。 病棟の裏山にはあんずの花、菜の花が見事だった。 眩しく美しくて、それでかえって危うげに見えた。 生の最後をかろうじて持ちこたえているホスピス病棟が、公共医療機関 晋州医療院の現実と重なった。
夜の帳が下りた。 皆がロウソクを持って歌を歌った。 ‘貴族労組ガールグループ ミスB’という横断幕を掲げた労組員の踊りは羽毛のように軽やかだった。 マイクを握ったウ・ソッキュクン保健医療団体連合政策室長の話は重かった。「慶南道(キョンナムド)が展示性・でたらめ事業をして、赤字を積み上げ、貴族労組・強硬路線労組のためだと責任をおっかぶせている。 医療給付患者だからと、無力な老人だからと踏みにじっている。」晋州医療院事態は‘地方自治体の仕事’とし、公共医療拡充公約を破っている朴槿恵(パク・クネ)政府に対する糾弾が続いた。
経験21年の看護師パク・ヨンエ(45)氏は「来てくれてありがとう。 再び力が沸いた」と話した。 2010年韓進重工業の整理解雇に対抗して‘希望のバス’があったし、2011年には江汀マウル海軍基地に対抗した‘平和の飛行機’があった。 疎通拒絶の時代をかろうじて通過してきたバスと飛行機は今度は‘生命’の戦闘服に着替えてまた別の疎通拒絶の時代と対抗している。 夜8時が近づき、バスは再びソウルへと向かった。 出発場所に再び到着した夜12時頃、ソウルの雨脚もだんだん弱まっていた。
晋州/ソン・ジュンヒョン記者、キム・ヤンジュン医療専門記者 dust@hani.co.kr himtrain@hani.co.kr
韓国語原文入力:2013/04/07 21:08