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1番文字 燃焼有無、天安(チョナン)艦 合調団も反合調団も共に誤り

原文入力:2012/06/22 19:56(5356字)

←天安艦民・軍合同調査団(合調団)が去る2010年5月20日ソウル、龍山区(ヨンサング)、梨泰院(イテウォン)路の国防部で開かれた天安艦調査結果発表で公開した魚雷のプロペラ部分. 合調団は魚雷の吸着物と天安艦筐体の吸着物質はどちらも爆発で生じたアルミニウム酸化物で同一と主張している。 シン・ソヨン記者 viator@hani.co.kr

‘化学工学学会 講演取り消し’キム・グァンソプ博士の論文を見てみれば

合調団、アルミニウム酸化物と言うことは魚雷説を自ら否定すること
水中爆発では発生せず
船体全体に広がったという吸着物もアルミニウム、鉄板材でのみ発見
腐食が原因である可能性を示す
反合調団 科学者らの実験は海中環境と余りに違う
爆薬すら使っていないことが弱点

 キム・グァンソプ博士は民官合同調査団(合調団)と反合調団の科学者(イ・スンホン米バージニア大、ヤン・パンソク カナダ メニトバ大、チョン・ギヨン安東(アンドン)大教授)間の論争で第3の独自見解を示した。彼の主張は天安艦とペクリョン島近隣海域で回収された魚雷推進部品の吸着物質(白色粉末)の成分と、マジックインキで書かれた‘1番’文字の燃焼有無を巡り合調団と反合調団が共に誤った実験と分析に立って論争を繰り広げたということだ。

ブリック コミュニティで "吸着物質ターミネーター" として知られる

 彼は2010年7月、米科学専門紙<ネイチャー>に文を書いて以来、国内報道機関とインターネットを通じて15編以上の科学技術的な報告書と論評を通じてこのような見解を明らかにした。

 例えば吸着物質が合調団が主張するように非結晶性アルミニウム酸化物ならば、それは魚雷の水中爆発で生成される物質ではないため、自ら魚雷説を否定する自己矛盾に陥るということだ。 合調団が主張する非結晶性アルミニウム酸化物は海水に存在する硫酸イオンと反応できない。 しかし合調団最終報告書には、すべての吸着物に相当量の硫酸イオンが存在しており矛盾するためだ。 その上、そのような物質が水中爆発で生成されたとか、生成される可能性があるという報告がないということだ。

 反面、吸着物質が非結晶性アルミニウム酸化物ではないと疑問を提起したイ・スンホン教授の反論なども弱点があるということだ。イ教授の主張はアルミニウム粉末を空気中で1100℃で加熱し溶かした後に水に入れて冷却させた自身の実験結果に根拠を置いている。 しかし、彼の実験は実際の海中爆発と類似の実験とは全く異なる。 最も脆弱な点は彼のシミュレーション実験では爆薬が使われなかったために生成されたアルミニウム酸化物は結晶性を持つようになるということだ。 合調団の水槽爆発実験は爆薬を使った。しかしこれまた誤りだった。 アルミニウム粒子の大きさやその量がいくらかも問題だが、爆薬を弾頭という外皮なしで海水中に直接入れたためだ。 すべての海軍の魚雷に使われるアルミニウム合成爆薬は爆発の瞬間には爆弾自らの分解物や爆弾製造時にあらかじめ置いた酸化物質と直ちにそして最大限反応するよう設計されている。 周辺の水や酸素と反応するのは爆発後、弾頭の外皮が破壊されてその時に海水と接触しながら反応するわけだ。 また、この爆発はアルミニウム粉末粒子の大きさ、爆薬との成分比率、酸化剤の添加有無などにより衝撃波、バブルジェット、温度などがそれぞれ違って現れる。 キム博士によれば、したがって魚雷製造に使われた同じアルミニウム合成爆薬なしにシミュレーション(実際と似た)実験をすることはほとんど不可能だ。

 すでに1940年代から性能が優れた魚雷を開発するために米海軍の主導で吸着物に関連した実験的理論的研究があった。 キム博士はそれでも合調団と反合調団のいずれもそのような研究を参考にした跡がないと指摘した。

 キム博士のこのような第3の科学的分析は多くの言論が合調団と反合調団の激しい攻防に集まり、ほとんど注目をあびることがなかった。 ここには彼の分析を正しく理解し判断するのが難しかったせいもある。 彼の論文に出てくる複雑な化学式を理解するには、化学一般はもちろん熱・流体力学、吸着などに関する専門的知識が要求されるためだ。 ファン・ウソク博士の幹細胞論文捏造を明らかにした科学者(生命工学)のホームページ ブリック コミュニティには天安艦カフェ<科学の目で見た天安艦事故原因>(http://bric.postech.ac.kr/scicafe/?SciCafeId=warship)がある。 ここの一部論者は彼を‘吸着物質論争のタミネーター’と呼ぶ。

"アルミニウム酸化物が部分的に硫酸化"

 キム博士が準備した去る4月末の化学工学学会総会発表論文は "天安艦沈没事件:吸着物と1番文字に基づく魚雷説を検証するためのバブルの温度計算" (パワーポイント60余スライド)だ。 この論文はアルミニウム爆薬の水中爆発に関する既存文献らと合調団データを根拠としている。 論文の焦点は吸着物質の形成とその成分、バブルジェットの温度を計算することだ。 外圧によって招請講演は取り消しされたが、キム博士はこれを学術的な論文に再作成し国際学術誌に掲載する予定だ。

 この発表論文でキム博士はまず吸着物質の成分を非結晶性アルミニウム酸化物(AlxOx)とは根本的に異なる‘吸着性を持つ(ジェラティノス,gelatinous)’硫酸化アルミニウム水酸化物(SaGAHs)と提示した。

←2010年4月24日に引き揚げられた天安艦. 船首がバージ船に載せられている。 写真共同取材団.

 これはアルミニウム爆薬が水中爆発そして海水の硫酸イオンとの化学的変化を経て生成されたものだ。 その根拠は既存文献に発表された資料とキム博士の既存研究結果に従ったものであり、何よりも合調団が最終報告書に付録として含ませた吸着物質の熱分析実験資料(TGA/DTA)がこれを確認しているとキム博士は明らかにした。

 それに従えば、合調団のアルミニウム酸化物主張は色々な誤りを指摘することができる。 その中の一つが吸着物質が天安艦船体、船尾の中でアルミニウムと鉄の板材だけから発見されることを説明できないということだ。 彼は合調団の吸着物質生成に対する見解を‘弾丸説’と比喩する。 衝撃波とバブルの崩壊過程で爆薬に由来した吸着物質が弾丸のように飛んできて船体船尾などに分散して付着することになったということだ。 しかし現実は吸着物質がアルミニウムおよび鉄の板材だけから発見されている。 それだけでなく、爆発の影響圏外からも発見されている。 この問題は反合調団側の依頼でヤン・パンソク、チョン・ギヨン教授が独自に吸着物質を分析して下した結論にも該当する。 2人は爆発によって生成されたアルミニウム酸化物ではなく、沈殿によって生成された物質(アルミニウム硫酸塩水化物、バスアルミナイト)だと明らかにした。 しかし沈殿説ではこのような吸着を説明できないということだ。 キム博士は自身の‘SaGAHs説’は海水による分散と水素結合による吸着でこれを説明できると明らかにした。 吸着物から得られたすべての実験結果とそれに関連したすべての観測が説明可能だということだ。

 合調団は1番魚雷の残骸のプロペラなどから発見された吸着物質をアルミニウム爆薬によって生成された物質とだけ見た。 この爆発で生成された吸着物質だけでも合調団が分析したように均一または単一な物質ではない。 何よりも吸着物質と関連したキム博士の主張のもう一つの核心的論拠はこの吸着物質が爆発でのみ形成されるものではなく、したがって一つではないということだ。 それによればアルミニウム板材が鉄と電気的に連結されればいわゆるガルバニック(Galvanic)腐食現象によって吸着物質が形成されるが、これはアルミニウム爆薬の爆発で生成された吸着物質と化学的でも肉眼で見てもほとんど同じだということだ。 したがって回収された魚雷部品のプロペラが50日間海水にあったとすれば、その吸着物質は爆発ではなく腐食によるものでもありうる。 アルミニウムと物質分析に専門性のある科学者は、場所により爆発なのか腐食なのか答えを得ることができる。 しかし合調団はこれを区分しなかった。 したがって自分たちの実験から出た白色粉末と1番魚雷、船体などで発見される白色粉末の同質性を証明できなかったということだ。 吸着物に対する再調査が必要な理由だ。

 キム博士のこのような主張は水中爆発によるバブルジェットを否定してきた反合調団とは異なり、アルミニウム爆薬のバブルジェット爆発を前提としている。 その前提で見ても、合調団は1番魚雷の天安艦攻撃という結論を立証する科学的論拠を全く提示できなかったということだ。

‘1番文字’燃焼論争が消耗的な理由

 特に水中爆発でのバブル温度計算は吸着物質の形成と特性を把握する上で重要な鍵になるにも関わらず、合調団はこれを全く考慮しなかった。 そうするうちに途方もない爆発があったとすればマジックで書いた1番文字は当然に焼けてなくならなければならないという疑惑が提起され、合調団は一歩遅れてソン・テホ カイスト(韓国科学技術院)教授の熱力学理論を土台にしたバブル温度に関する研究発表(0.1秒後に28℃に冷却)を受け入れた。 ソン教授によればバブル温度と圧力、その伝達速度、距離などを計算してみれば爆発熱は魚雷後尾部の文字を焼く温度にはなれないということだった。

 ソン教授のバブル温度計算にはイ・スンホン教授が反論を提起したことがある。 しかしキム博士はその反論は適切でないとし「バブルが破壊された時は高温だが低圧(0.01気圧)であるために接触する物体が熱による影響を受けないことがある」と指摘した。 その上、衝撃波で高熱が伝わる前に魚雷後尾部が本来の位置より爆発地点から大きく押し出された可能性もあるということだ。 また、このようなバブル現象は「負傷兵や死骸に火傷跡がないことを説明できる」ということだ。 問題はソン教授のバブル温度計算が誤っているところにある。 キム博士はソン教授の研究がアルミニウム爆薬モデルの使用、アルミニウム酸化度計算、爆発エネルギーの衝撃波とバブルへの配分、その分配にアルミニウムが及ぼした影響などの条件を全く考慮しなかったとし「それは天安艦事件の爆発とは何の関係もないことになった」と指摘した。

 キム教授はしたがって1番文字の燃焼有無ではバブルジェット爆発の有無を判断できないと見る。初めから1番文字は天安艦を沈没させた魚雷ということを立証する直接的な証拠にはなりえないものだった。 そうした点で1番文字を巡る論争は非生産的というのがキム教授の判断だ。

 当初から合調団が公正で能力のある独立的な調査ができるかについて疑問が提起された。 キム博士はそれは合調団が国防部に属する機構(国防科学研究所など)と多くの調査人員を国防部内の組織から抽出した点が原因を提供したと見る。 実際、吸着物質調査と分析に見るように、合調団は無能で不正直な態度を見せた。

 米国にも似た事例がある。 彼は1989年米戦艦アイオワ砲塔爆発事件で47人の海軍将兵が死亡した時、米国も論難に包まれたと話した。 米海軍の自主調査はある将兵が意図的に爆薬を爆発させたという結論を発表した。 しかし、遺族、報道機関と多くの上下院議員は信じなかった。 論争の素地がある事件に対する自主調査は信頼を得難い。 特に軍が自主調査を始める場合には上司の命令に服従の組織文化のためにより一層不信を受ける。 結局、この事件は米議会会計監査院が乗り出し、独立的な調査機関である米センディア国立研究所に科学技術的な調査を任せるようにした。 センディア研究所が40人の科学技術者を動員して徹底した調査をした結論は、この事件の責任は将兵でなく海軍にあるというものだった。 キム博士は国政調査を通じて 「合調団が米海軍の調査のように、すでに決まった結論を支持する方向で調査を導こうとしたか否かを明らかにしなければならない」と強調した。

カン・テホ記者 kankan1@hani.co.kr

←キム・グァンソプ博士

キム・グァンソプ(72). ソウル大化学工学科、米パデュー大化学工学科博士. 現在ボストン在住. アルミニウム腐食およびアルミニウム爆薬の専門家であり、多国籍企業エクソンで金属表面酸化、物質の腐食と触媒に関し研究した。 米国科学財団では物質特許紛争に関与. 天安艦‘吸着物質(白色粉末)’論難では該当分野の最高専門家と言える。

原文: https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/539134.html 訳J.S