韓国放送(KBS)はパク・ミン社長就任初日から、与党勢力が「偏向放送」と批判してきた時事番組を編成から除外するなど、放送の独立性と制作の自律性を侵害する姿を露呈している。公式の人事が出る前に幹部内定者が出演者の降板を通知することもあったという。ある程度予想されていたことではあるが、程度がはなはだしい。原則も手続きもない占領軍のような行動に、言葉を失うほどだ。
韓国放送は13日、月~木曜日に放送されていた時事番組「ザ・ライブ」(KBS2TV)を今週3日間番組編成から削除すると公示した。編成削除の決定は制作スタッフとの協議なしに突然行われたという。予告もなかった当日の放送休止に、「ザ・ライブ」の視聴者掲示板には「何が怖いのか」、「ザ・ライブを返してほしい」などの題の抗議文が続々と上がってきている。ラジオ時事番組「チュ・ジヌ・ライブ」の進行役のチュ・ジヌ氏も、突然降板の通知を受けた。この番組の場合、ラジオセンター長の内定者として名前の上がった幹部が、人事発令の下る前に担当プロデューサーに電話で進行役の降板を通知したというのが労組の主張だ。
「ザ・ライブ」と「チュ・ジヌ・ライブ」は、与党「国民の力」が「偏向放送」だと攻撃してきた時事番組だ。7日に開かれたパク・ミン社長候補の人事聴聞会でも、国民の力のパク・ソンジュン議員が「チュ・ジヌ・ライブ」を取り上げ「一罰百戒」を要求した。これに対してパク候補は「そのように措置する」と答えた。社長に就任するやいなや与党の注文に忠実に従ったわけだ。
もちろん社長が変われば番組改編や出演者の交替がなされることもありうる。しかし、その過程は合理的で透明でなければならない。構成員が合意した手続きを経て、道理に従って進めなければならない。韓国の放送で今起きていることは、このような常識からかけ離れている。「取材および政策責任者は、放送の適合性判断および修正に関して実務者と誠実に協議し、説明しなければならない」というKBSの編成規約は全く眼中にないようだ。「軍事クーデターが起きたのかと思った」という言葉が聞こえるくらいだ。
パク社長は14日、国民向け記者会見を開き「この間の不公正な偏向報道について謝罪する」と述べた。偏向報道で社会的物議を醸す記者やプロデューサーは、直ちに業務から外し、厳しく懲戒するとも述べた。これらのすべてが「尹大統領のための放送」に向かっているということを知らない国民はほぼいない。政治権力と手を組んで公共放送を蹂躙した行動は必ず審判を受けるだろう。