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[寄稿]尹錫悦政権の権威主義的警察国家

登録:2023-06-15 01:07 修正:2023-06-15 10:44
キム・セギュン|ソウル大学名誉教授、ペク・キワン・ノナメギ財団顧問
10日午後、ソウル市庁前の道路で行われた第32回民族民主烈士・犠牲者汎国民追悼祭で、参加者が焼身自殺した建設労組江原支部の幹部ヤン・フェドンさんの写真を掲げている/聯合ニュース

 133周年メーデーの5月1日、春川地裁江陵支院の前で建設労組の幹部ヤン・フェドンさんが政府の労組弾圧に抗議して焼身自殺を試み、翌日に亡くなった。実に悲劇的な出来事だ。

 韓国の歴代大統領の中で自由、人権、民主主義を最も多く叫んだのは、おそらく尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領であろう。先日、首脳会談を行うために訪米した際、米議会で彼は「自由の同盟、行動する同盟」(Alliance of Freedom、Alliance in Action)を力強く提唱した。韓国が独裁と権威主義陣営に対抗する自由民主主義陣営のグローバル中枢国になることは、彼の遠大な夢でもある。これほどなら、彼を自由、人権、民主主義の伝道師と呼んでもいいくらいだ。

 だが、彼が昼夜を問わず叫ぶ自由、人権、民主主義は、一体どんな意味を持っているのだろうか。2019年7月の検察総長就任あいさつで、彼は「これからは自由民主主義と市場経済の秩序の本質を守ることに力をより集中させなければならない」と強調した。続いて最高検察庁報道官室を通じて「シカゴ学派のミルトン・フリードマンと…オーストリア学派の経済学者であるルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの思想に深く共感している」とし、「市場経済、価格機構、自由な企業活動が人類の繁栄と幸福を増進してきた」と説明した。

 そうだ。彼は自由市場経済の熱烈な信奉者だ。したがって彼の言う自由、人権とは「企業活動の制限なき自由」(企業の自由な活動を妨げる一切の社会的規制の撤廃)と、そのような自由を享受できるという企業家の制限なき権利であり、彼の言う民主主義は、本質においてそうした自由と権利を政治的に保障する民主主義だ。彼は、市場の専制(market despotism)を擁護する(企業活動の自由だけを絶対視する)極端な自由至上主義的自由主義のまごうことなき支持者だ。そして彼が理解するところの自由民主主義は、そのような市場専制の外皮機能を円滑に遂行する政治的民主主義体制だ。

 市場専制は、労働者たちが言われた通りに働き、出て行けと言えばつべこべ言わずに出て行き、与えれば単に受け取るだけの存在へと転落させようとし、労働者同士の関係を互いにいがみ合う敵対的競争関係にしようと画策する。市場専制は、資本には自由と人権を保障するが、労働者には非自由と無権利を強制する体制だ。市場専制はまた、金の威力の前にあらゆる人を屈服させようとし、その結果、金持ちには天国を、貧しい多数の大衆には地獄を与える野蛮な社会の成立を促進する。

 しかし、政治的民主主義体制が単なる市場専制の外皮としてのみ機能するのは容易ではない。この難関を突破するためには、民主主義体制を実質的な権威主義体制へと転換させることが求められる。尹錫悦政権は、権力を自らに集中させ、検察と警察を自分の手足とし、与党を手下として、野党をはじめ社会全体を権威主義的に服属させようと画策する権威主義的な政府の典型だ。

 市場専制は労働者が個人としてではなく、団結した力として資本の前に出現することを排撃する。尹錫悦政権が組織された労働者を既得権勢力だとし、労働組合を未組織労働者の上に君臨しつつ韓国経済の発展を邪魔する最大の内部の敵と規定しているのは、全てそのような理由からだ。尹錫悦政権はこのかんあらゆる方法を動員して労働組合を無力化させ、市場専制体制を完成しようと画策している。このような試みの主な標的こそ、現時点では民主労総と建設労組だ。尹錫悦大統領が「建暴(建設労組暴力団)」という新造語まで使って建設労組の弾圧を指示したことを受け、検察はこのかん家宅捜索19回、拘束22人、1千人以上の呼び出し調査を強行しており、警察は50人の特進まで掲げて労組の不正探し(実際は不正のでっち上げ)を行い、労働者の闘争を暴力的に鎮圧しはじめた。今後どれだけ多くの労働者を死に追いやるか分からない「権威主義的警察国家」が本性を現しはじめたのだ。

 しかし、親資本・反労働者の権威主義的警察国家の弾圧に抗議し、自らに火をつけたヤン・フェドン烈士の炎が消えることはないだろう。その炎を燃え上がらせることは、労働者も自由と人権を享受する世を作り、荒廃化しつつある社会を救うことだ。6月17日午後5時、清渓(チョンゲ)広場ファイナンスビル前で開催される「建設労働者ヤン・フェドン烈士汎市民追悼祭」と、それに続くデモ行進に、共に参加しよう!

//ハンギョレ新聞社

キム・セギュン|ソウル大学名誉教授、ペク・キワン・ノナメギ財団顧問 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1095991.html韓国語原文入力:2023-06-14 19:30
訳D.K

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