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[寄稿]韓国軍の真の「市民統制」のために

登録:2021-09-11 09:25 修正:2021-09-11 12:41
パク・クォニル|社会批評家 

 「いっそのこと、軍隊が変わるだろうと言ったらどうですか」

 「変わるかもしれないじゃないか。俺たちが変えればいい」

 「うちの部隊に水筒があるでしょう、何て書いているか知ってます?1953年の戦争の時に使っていたものなんですよ。水筒も変わらないのに…」

 ネットフリックスのドラマ「D.P.」の台詞だ。大韓民国の軍隊。極端な暴力と不条理が隠蔽と幇助で引き継がれる所。朝鮮戦争時代の水筒があるというのは呆れるが、水筒は人を殺したりはしない。だが、韓国の軍隊は今この時刻にも構成員を死に追いやっている。

 この文章を書いている間(9月7日午後)、速報が出た。海軍の姜邯贊(カン・ガムチャン)艦でいじめを受けた兵士が、休暇中だった6月に自殺したという。軍人権センターのイム・テフン所長によると、被害者は過酷行為を申告したが2次加害が起きただけで、調査はまともに行われなかった。海軍だけだろうか。陸軍も空軍もみな同じだ。女性兵士の性暴力被害と隠蔽、被害者の自殺も後を絶たない。軍の暴力の被害者はいたるところにいる。一家の期待を一身に受けていた私の伯父は、軍隊での暴行により深刻な障害を負った。彼は除隊後、いっさいの社会活動ができず苦しみ、若くして亡くなった。前途有望だった工学徒の人生が根本から崩れたにもかかわらず、軍隊の誰も責任を負わなかった。

 問題が改善されない理由は様々だが、第一の理由は司法機関だ。具体的には平時軍事裁判所だ。軍事裁判所の軍検事と軍判事は、法務部ではなく国防部所属だ。軍隊内部で捜査と裁判がすべて行われるため、被害者に対する懐柔や脅迫、組織的2次加害、事件の矮小化や隠蔽などが日常的に行われる。内部者が内部者を裁判するかたちだから、犯罪を十分に断罪できるわけがない。ある人は軍事裁判所の存続理由として「分断国家の軍隊の綱紀確立」を主張するが、構成員を殴り、苦しめ、強姦するのは綱紀確立ではなく犯罪に過ぎない。

 もちろん、軍事裁判所とは異なり形式上独立した韓国の司法府が、果たして「法の前の平等」を実現しているのか、市民らにそのような信頼を与えているのかと問うならば、肯定するのは難しい。しかし、司法府は法の公正性を少なくとも形式的には確保している一方、軍事裁判所は形式であれ内容であれ公正ではない構造だ。平時軍事裁判所、まさにこれが韓国軍創設以来70年間、軍隊を腐らせ破壊してきた「暗黒の核心」だ。

 軍の対応はいつもまったく同じだ。批判が高まれば平伏して実態調査を行い、改革案を作るふりをして、静かになればいつそんなことがあったのかとばかりに元の状態に戻る。2014年の「ユン一等兵死亡事件」当時、国民の憤りが高まり、官民軍兵営文化革新委員会が設置された。軍事裁判所の廃止が議論されたが、結局実現しなかった。最近、軍隊の性暴力事件の暴露が相次ぐと、また委員会が設置され、国会は法改正を実施した。高等軍事裁判所は廃止されたが、今回も平時軍事裁判所は全面廃止されなかった。さらには、国防部は先日、官民軍合同委員会がまるで平時軍事裁判所の存続を主張したかのように歪曲し、国会に報告していたことが明らかになった。事態がこのようになったにもかかわらず、軍は市民を愚弄し続けているのだ。

 軍事裁判所だけでなく、憲法にも問題がある。「維新憲法の毒素条項」と批判されてきた憲法29条2項だ。「軍人・軍務員・警察公務員その他法律が定める者が、戦闘・訓練等職務執行と関連して受けた損害に対しては、法律が定める補償以外に国家または公共団体に公務員の職務上不法行為による賠償を請求できない」。同条項は、軍人や警察などが公務員の不法、不当な行為によって被った被害に対し、国に賠償を請求できないよう基本権を剥奪した悪法だ。近い将来、必ず正さなければならない。

 階層的で権威的な組織は自浄が難しい。軍隊はその中でも悪質だ。特に、大韓民国の軍隊は絶対に自ら変わることはない。軍隊そのものを直ちになくすことができないなら、少なくとも軍の人権レベルを時代に合うように現代化しなければならない。そして、これは必ず外部から、市民の力によって強制されなければならない。金泳三(キム・ヨンサム)政権の「ハナ会」撲滅後、軍の文民統制時代が開かれたという。しかし、大韓民国の軍隊の現状は、私たちが真の意味での「市民統制」に至っていないことを裏付けている。軍をこれ以上人権の死角地帯に置いてはならない。市民の積極的な介入だけが、軍隊を変えることができる。

//ハンギョレ新聞社

パク・クォニル|社会批評家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1011140.html韓国語原文入力:2021-09-10 02:34
訳C.M