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【ハンギョレプリズム】“ムン・チャングクショー”に気を取られている間に/アン・ソンヒ

登録:2014-06-23 17:59 修正:2014-06-24 06:26
アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長

 新内閣の候補者が指名された後、世論の関心が一部候補者たちの“過去”に注がれている。弟子の論文を常習的に自分の研究成果として横取りしたという社会副総理 兼 教育部長官候補者(キム・ミョンス)、“チャテギ(訳注:車に不法政治資金を積んで車ごと渡した事件)”の不法政治資金配達責任者を務めたという国家情報院長候補者(イ・ビョンギ)、ビール瓶で記者の頭を殴りつけたという民政首席(キム・ヨンハン)など内容も多彩だ。

 特にムン・チャングク総理候補のワンマンショーは目を離し難い。「植民地支配は神の意志」という発言も尋常ではないが、その後の動きもそうだ。 19日、記者たちの前で自分の安重根(アン・ジュングン)義士関連のコラムを読み上げ、安重根義士記念館に献花した写真をかざして見せて「私は親日ではない」と声を高めた時には、一瞬、“理解してもらえない者”に対する憐憫を感じそうになった。

 新内閣候補者に対する検証も重要だが、この騒ぎのおかげで隠されていることがある。

 16日、政府は行政規制基本法改正案を立法予告した。規制評価基準に“企業活動”を入れ、規制コスト総量制を導入し、規制体系をネガティブ方式に変えるなど、全部で37ある条文の大半に手を付けた。朴槿恵(パク・クネ)政府がセウォル号惨事以前に推進していた規制緩和ドライブに拍車をかける内容だ。セウォル号惨事によって、企業の利潤だけを優先した規制緩和に対する批判世論が高まったが、このような世論の反映された部分はと言えば「規制改革委員会は生命、安全などの保護のために必要と認める場合、各省庁に規制の新設・補完・強化などを勧告できる」という形式的条項の一行だけだ。

 来る29日は最低賃金委員会が来年の最低賃金を議決し、政府に提出する日だ。労働者側は時間当たり6700ウォンを、使用者側は凍結を主張している。最低賃金の引上げは所得不平等がますます深刻化する現実において、総理候補者の歴史認識と同じくらい重要な問題だ。朴槿恵大統領も大統領選公約に「経済成長率と物価上昇率、所得分配調整分を勘案して最低賃金引上げ基準を設け、労働者の基本生活を保障する」と約束した。しかし、今年も“労働者の基本生活”が保障される可能性は大きくなさそうだ。

 私たちがその“過去”を注視すべき候補者は、誰よりもチェ・ギョンファン経済副総理兼企画財政部長官候補者だ。彼は経済省庁の公務員、言論人などを経て2004年に国会議員になって以来、減税、規制緩和、民営化などを主張し、経済民主化と分配には否定的だった。「最も効果的な規制緩和は減税政策だ」(2009年12月)、「ヒポクラテス精神で医療事業をする人がどこにいるか。 みな金を儲けようとしているんじゃないか。営利医療法人を育成すべきだ」(2009年12月)、「経済民主化のイシューを大統領選挙まで持っていくことはできない」(2012年8月)、「不動産市場は真冬なのに、夏服(融資規制)を着ていてはだめだ」(指名直後)など“珠玉” のような発言が際限なく続く。

 セウォル号惨事により、企業中心の成長至上主義に対する反省がかつてないほど高まった。“新自由主義”が大衆語になるほどに、韓国社会の経済体制の非人間的利潤追求傾向に対する批判が大きな共感を得た。しかし、惨事後2ヶ月で全てが元通りだ。 朴大統領は、セウォル号惨事に対する反省文に当たる新内閣の経済副総理の座に、一方しか見えない成長主義者を座らせた。規制緩和ドライブは再びエンジンがかかった。最低賃金は今回も“現実化”されないだろう。ムン・チャングク候補者が自ら辞退したとしても、イ・ビョンギ、キム・ミョンス候補者まで退いたとしても、これらの現実は変わらないだろう。304人の命を失いながら、私たちは何も変えられなかった。

アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長 shan@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/643474.html 韓国語原文入力:2014/06/22 18:17
訳A.K(1767字)

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