ドイツの化学・製薬会社のバイエルは24日(現地時間)、子会社のモンサントの除草剤「ラウンドアップ」によりがんになったとして訴訟を起こした米国人らに、最大109億ドル(約1兆1600億円)を支払うことに合意したと発表した。有害性と違法の有無に対する判決を避け、和解金で議論を終了する制約関連訴訟の戦略にそのまま従ったのだ。
バイエルは現在進行中の集団訴訟を終了するために88億~96億ドルを支払い、今後提起される訴訟に備えて12億5千万ドルを追加で出すことにしたと、ロイター通信などがこの日報道した。
今回の法廷外での合意は、訴訟を提起した米国のラウンドアップ使用者12万5000人のうち9万5000人を対象にしたものであり、バイエルは残りの3万人を代理する弁護士と交渉を続ける予定だ。米連邦裁判所の指名により交渉を仲栽してきたケン・ファインバーグ氏は、残りの訴訟も数カ月以内に妥協点を見つけるだろうと語った。
バイエルはラウンドアップに関連した違法行為を認めず、ラウンドアップの販売も継続する予定だ。22日、米連邦控訴裁判所がラウンドアップに発がん性の警告文を付けなければならないとするカリフォルニア州政府の要求を棄却したことにより、発がん性の警告文を表示する必要もない。
ラウンドアップは1974年、当時米国企業だったモンサントが販売を始めた除草剤であり、この除草剤に耐性を持つよう遺伝子を操作した農産物種(「ラウンドアップレディー」製品)と共に使用することは珍しくない。モンサントの遺伝子組み換え種と除草剤の危険性は、これまで議論が絶えない事案だ。
バイエルは、ラウンドアップの危険性を独立的に検討する5人の専門家会議を構成することで訴訟代理人と合意した。専門家はラウンドアップとがんの関係を調査し、結果を米国の裁判所に提出する予定だ。4年以上を要する調査が完了するまでは新たな訴訟手続きは開始されないだろうとバイエルは説明した。
ラウンドアップはがんを誘発しないという結論が出れば、以後、米国内での訴訟は不可能になる。この除草剤はがんを誘発しうるという結論が出れば、バイエルは個々の事件別にがんの誘発の有無について訴訟を進めなければならない。
庭師として14年間働いた後に骨髄腫瘍を患ったジョン・ラムノーさん(72)は、この合意は大して役に立たないものだと思ったと米国経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」が伝えた。彼は和解金の40%を弁護士費用として支払わなければならず、治療費の10万2000ドルも負担しなければならない状況だ。今後の生活費までを考慮すると、少なくとも和解金として50万ドルが必要だと新聞は伝えた。最大96億ドルの和解金は、1人当り約10万ドル受け取ることができる金額だ。
今回合意しなかった2万4000人の原告を代理するジム・オンダー弁護士は「和解金が極めて少なく、合意を拒否した」とし、「私たちは引き続きバイエルの責任を追及するだろう」と語った。
バイエルは2018年6月に630億ドルでモンサントを買収したが、その後、現在までに株価は29%下がった。