本当に強迫なのか、あるいは見えすいた脅しなのか。
常識外れな戦術で有名なドナルド・トランプ米大統領の急変で、世界経済の展望と金融市場に再び赤信号が点灯した。昨年12月1日、習近平・中国国家主席との休戦合意以後静かだった“トランプ・リスク”が再発し、彼の意図が局面を壊そうとしているのか、あるいはテコを強化しようとしているのかが焦眉の関心事に浮上した。
トランプ大統領は、脅迫で交渉力を強め、より多くの譲歩を受け取ろうとしていると見られる。重要な貿易交渉で、関税を武器にした彼の荒っぽい言動と態度の逆転は日常的だ。昨年には、隣国のカナダ・メキシコに北米自由貿易協定(NAFTA)破棄を掲げて威嚇したあげく、新しい貿易協定を結んだ。1回目の朝米首脳会談を控えては、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長に送る会談取り消し書簡を公開するという瀬戸際戦術を繰り広げた。
しかし、今回見せた急変は、このような事例の中でも圧巻だ。彼はわずか二日前の3日にも、中国との貿易交渉が「とてもうまくいっている」「きわめて歴史的な合意に近づいている」として、妥結に対する期待を抱かせた。先週北京で交渉に参加したスティーブン・ムニューシン財務長官も「最後の段階」と話し、米国のマスコミは早ければ10日にも妥結に達するとの展望を流した。
ニューヨークタイムズは、両側の交渉団は意見を接近させたが、穏健派のムニューシン財務長官と強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表の評価が食い違ったと伝えた。トランプ大統領は、このままでは合意できないというライトハイザー代表の肩を持ったということだ。来年大統領選挙を控えた状況で、中国からはさらに確実なものを受け取らなければならないと、共和党と民主党の双方から圧迫が加えられもした。
最近出てきた米国の経済指標が、トランプ大統領の度胸を強めたという解釈も出ている。第1四半期の国内総生産(GDP)増加率は、年率3.2%に達し、4月の失業率は3.6%で半世紀ぶりに最低だ。このような状況で、中国商品に高率関税を賦課しても米国が被る被害は相対的に少ないので「一度やってみよう」という態度に転じたということだ。
成果を劇的に誇示するための撒き餌との見方もある。ピーターソン国際経済研究所のチャド・ボウン氏は「今週後半に妥結が発表されれば、トランプ大統領は自身が強く出たので実現したように振る舞えるだろう」とウォールストリートジャーナルに語った。