本文に移動

‘血を吸って生きる怪物’米 軍産複合体

登録:2013-06-22 11:18 修正:2013-06-23 00:03
F-35戦闘機に見るその生存戦略
ロッキード・マーチンのフォートワース(テキサス)にあるF-35戦闘機組立工場 2011年10月13日(ロイター/連合ニュース)
米国で軍産複合体の危険性に対する最初の警告は、逆説的にも軍人出身のドワイト・アイゼンハワー前大統領の口から出てきた。 彼は1961年1月17日退任辞で米国軍部と軍需産業勢力の結託体制を批判して‘軍産複合体’という概念を初めて提示し、米国がそれらのために常時的に戦争の危機に置かれることになったと指摘した。 ユーチューブ画面キャプチャー

世界の深層‘50州に工場’働き口を武器に議員を圧迫
1兆5000億ドル投入したと推算されるF-35事業
各種欠陥が問題化しても事業推進 加速
州毎に工場分散 地域働き口の創出
政界圧迫し予算削減を阻む戦略
‘軍産複合体 災難的成長 警戒せよ’
アイゼンハワーの初の警告以来 52年
冷戦解体で停滞…9・11後 再跳躍
最近は外国も参加‘世界化’戦略まで
*シクゥェスト:連邦予算自動削減措置

 2008年米国大統領選挙に共和党候補として出たジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)は上院軍事委で相当な影響力を持っている政治家だ。 マケイン議員は2011年12月上院演壇に出てきてこのように話した。 "F-35統合打撃戦闘機プログラムはスキャンダルであり悲劇だ。" 翌年11月、米海兵隊はアリゾナ州に初めてF-35飛行部隊を創設して、マケイン議員を部隊創設式に招いた。 するとマケイン議員は態度が変わった。 彼はその場で "何年か前の失望と挫折の後に全般的なプログラムが正しい方向に向かっていることに鼓舞された" と話した。

 マケイン議員が見せた態度は米国の議員が所属州の働き口創出にどれほど敏感であるかを見せる事例として広く知られている。 これはまた、米国の軍需業者が莫大な政府資金が投入される先端兵器開発事業をどのように推進しているかを見せる生々しい事例でもある。

 我が国の次世代戦闘機入札に参加した競争機種でもあるF-35統合打撃戦闘機事業は、米国最大であり世界最大規模の軍需業者であるロッキード マーティンが2001年から推進しているプロジェクトだ。 F-35は敵のレーダー網を避けるステルス機能と各種先端装備で標的の動態を把握し操縦士に知らせるセンサー融合機能を備えた、自称‘5世代戦闘機’だ。

 この戦闘機は米国史上最も高額な兵器だ。 開発費だけで3910億ドルが投入される予定であり、今後50年間にわたる運営・維持費用まで含めた総費用は1兆5000億ドルと推算される。 莫大な財政赤字に直面した米国政府はシクゥェスト(連邦予算自動削減措置)を断行したが、F-35事業は特に影響を受けていない。 むしろロッキード マーティンは最近米国防総省から朗報を聞いた。 開発を始めて12年ぶりに初めて国防部が‘F-35の実戦配置が2016年に可能だろう’と米国議会に通知したのだ。 デイブ スコット ロッキード マーティン国際事業開発理事は「米国防総省が他の事業は調整してもF-35事業に対する支援は減らさないと明らかにした」と話した。

 F-35事業は試験飛行過程で胴体亀裂、エンジン タービン翼亀裂などの欠陥が相次いで発見され、米国内でも論議をかもしてきた。 開発遅延のために開発費が当初予想より60%以上急増しもした。

 天文学的な数字の財政赤字問題を解決しなければならない米国政府が、F-35関連予算を削減できない理由は何だろうか。

 ロッキード マーティンの巧妙な戦略が最大の理由に挙げられる。 ロッキード マーティンは強大な政治的影響力を確保している。 この事業の最大購買顧客である米国防総省がこの戦闘機を購入するには議会の承認を得なければならない。 議員の支持確保が何よりも重要な構造だ。 米国の軍需業者が工場を色々な州に分散配置して、関連部品を50州の大部分から調達しているのも各地域の議員の支持を引き出そうとする計算ということが業界の定説だ。

 F-35の場合、戦闘機一機に使われる部品だけで約5万ヶに及ぶ。 ロッキード マーティンは50州の内47州に工場や研究施設、部品調達業者などを分散配置している。 スコット理事は 「F-35事業を通じてアメリカ国内で12万7000ヶの直・間接的働き口を創出している」と話した。 この会社はF-35が完全生産体制に入れば働き口を26万ヶまで増やすことができるとし、相当な経済的効果があると話す。 ロッキード マーティンはこれを非常に戦略的に活用している。 各州の部品企業等と職員を動員して地方区議員にこの事業に対する支持意志表明を要求する手紙送り運動も展開した。

 このような方式は戦略爆撃機B-2で初めてお目見えした。 軍需業者ロックウェル インターナショナルは、1950年代末からB-52の代替としてB-2を開発するため議会の説得に入ったが、天文学的な開発費のために毎度拒絶された。 ロックウェルは1975年に政界を説得するキャンペーンに乗り出した。 48州で部品を調達しながら、これら部品企業等を背に負って各地方区議員を攻略した。 結局このプロジェクトは1980年代初めロナルド・レーガン行政府から承認を得た。

 ロッキード マーティンの場合、議員に相当な政治資金も提供しているという。 米国の政治資金公開団体であるオープンシークレット ドットコムの分析によれば、昨年ロッキード マーティンは総計535人の上.下院議員中の425人に政治資金を提供した。 超党派的支持を確保するため共和・民主党双方に献金した。

 ロッキード マーティンが採択した開発・購買方式の問題点を指摘する報道も相次いでいる。 ロッキード マーティンは模型を作って評価をした後に生産に入る伝統的方式の代わりに、試験飛行前にも生産と購買が可能だという新しい開発・購買方式を提示した。 コンピュータ シミュレーションを通じてエラーを確認できるという主張を前面に出した。 無謀な方式だという批判も提起されたが、米国国防部は2007年から試験飛行も経ずに戦闘機を生産することを承認した。 国防部はすでに65機を購入した状態だ。 ところが初期試験飛行をする中で深刻な問題があらわれ始めた。 一部の専門家たちは試験飛行前に生産を始めれば、後になって問題があらわれても事業の後戻りが困難になるという点をロッキード マーティンが狙ったと見ている。

 米国で軍産複合体という用語は、1961年ドワイト・アイゼンハワー前大統領の退任演説で初めて登場した。 彼は 「我々は意図しようがしまいが軍産複合体が不当な影響力を取得する事態を警戒しなければならない。不適切な権力が災難的に成長する潜在力が現に存在しており、今後も存続するだろう」と警告した。 軍産複合体とは米国の軍事関連既得権勢力が国防産業の成長で莫大な利益を得るために相互扶助する形態をいうもので、国防部、軍需業者、議会、科学・工学者など大きく4部類が含まれる。

 軍産複合体の概念は今や米国内に限定されない。 F-35を契機に世界化の道を歩んでいる。 ロッキード マーティンはF-35を企画しながら‘グローバル パートナーシップ’という新しい頁を開いた。 戦闘機開発段階から外国を引き込んだのだ。 そこには英国をはじめとしてオランダ・ノルウェー・デンマーク・オーストラリア・イタリア・カナダ・トルコなど8ヶ国が参加した。 F-35に使われる部品中の10%程度が外国から調達される。 イタリアにはF-35組立ラインも作られる予定だ。

 17日に訪問したフロリダ州エグリン空軍基地第58戦闘飛行大隊には、F-35統合訓練センターが設置されている。 ここでは8ヶ国の技術陣と操縦士が合同で教育・訓練を受けている。 教育・訓練に責任を負っているA.J.パーキントン中佐は 「2011年から現在までに訓練を受けた操縦士は計50人に達する」と話した。

 グローバル パートナーシップはこのプロジェクトの生存率を高め、販売先を多様化する効果を狙っている。 特に戦闘機の国外販売が増えるほどロッキード マーティンの収益も大きくなって、米国国防部も一機当たりの単価下落で購買予算を節減できることになる。 米国国防部がロッキード マーティンと積極的に協力してF-35の国外セールスに立ち向かっている理由でもある。

ワシントン・エグリン空軍基地(フロリダ州)/パク・ヒョン特派員 hyun21@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/592678.html 韓国語原文入力:2013/06/21 10:22
訳J.S(3584字)

関連記事