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北、追放前旅行証など身分洗濯緻密…政府は通例のみを信じた

登録:2013-06-02 10:26 修正:2013-06-03 07:07
ラオス、脱北者9人 北へ送還 転末

北韓側 万全の準備
北韓方言の老夫婦 通訳に参加
24日夜 自筆署名受け取った後
外食・外出禁止など状況急変
北-ラオス高官交流「反映」

政府は安易な対処
ラオス側「待て」のみ信じ
韓国大使館、面談を一度もせず
中国入国後「追放」通知受け
北への送還翌日 事態把握「後の祭り」

 ラオス当局に摘発された脱北者9人の北への送還は、北韓の対応が前例のない積極的介入へと変わったにも関わらず、政府がその様な事情を適切に把握できず、安易に対処して起きた事件と見られる。

警察不審検問…北韓方言の老夫婦が通訳

 脱北者9人がラオス当局に捕まったのは、5月10日昼12時頃。案内人である韓国人チュ・某宣教師夫婦と15~22才の青少年9人(男7人、女2人)ら11人がラオス国境地域に移動するのを怪しんだ警察が、彼らを不審検問したのだ。 案内人である夫婦は、直ちに電話で韓国現地大使館に助けを要請した。大使館職員は検問警察と通話後、案内人夫婦に「北韓から来たことを知っているようだから、警察に協力するのが良いだろう」と助言した。

 大使館はこの電話を受けて直ちにラオス公安部に接触し、抑留脱北者との面談を要請したという。当時ラオス当局は大使館に「過去の前例に則り協力する。待っていてほしい」と話したと言う。しかし、ソウル駐在ラオス大使館関係者は、ウォール・ストリート・ジャーナルに「ラオス政府は南北韓大使館の双方に彼らの逮捕を知らせたが、韓国が公式面談を要請したことがない」と話した。これに対して外交部当局者は「わが国の大使館が先に脱北者の逮捕事実をラオス政府に伝え、面談斡旋を要請した。また『脱北者を国外へ追放しないでほしい』という内容の文章も別に送った」と反論した。

 脱北者たちは16日、ラオスの首都ビエンチャンにある移民局収容所へ移された後、本格的な調査を受けた。調査過程には北韓方言の老夫婦が通訳として参加した。彼らと共に抑留されたチュ宣教師は翌日、大使館に電話してこの事実を知らせ「子供たちが不安だ」と話した。しかし大使館は、特別な措置を講じなかった。チュ宣教師はマスコミとのインタビューで「大使館は『脱北者が本当に韓国行きを希望しているのかを見守ろうとしている』として、心配しないでくれと言った」と話した。北韓が介入している兆候があったが、大使館はラオスが脱北者の韓国行きに協力的だった過去の通例のみを信じて、大事ではないとやり過ごしていたのだ。大使館は脱北者との面談も全く行わなかった。外交部はこれに対して「何度も領事面会を要求したが、ラオス政府が拒否し、行うことができなかった」と釈明した。

ラオス高位要人 北韓訪問後 雰囲気 急冷

 脱北者一行は移民局で調査を受けながらも、外食や外出をするなど、比較的自由に過ごしていたと言う。ラオス当局の態度が急変したのは23~24日前後であった。24日夜、通訳を受け持った老夫婦が現れ、脱北者9人の自筆署名を受け取り、外部出入りも厳格に禁止された。その頃、現地大使観も状況が何かおかしい方向に流れていると感じたと見られる。外交部当局者は「ラオス側が20日『脱北者を引き渡す』との意向をほのめかしたが、23日突然『時間がさらに必要だ。待っていてほしい』と態度を変えた」と話した。

 偶然にもこの時期の前後に、北韓とラオスの間で高官級要人交流があった。ラオス政権党の人民革命党中央委員会の秘書兼ビエンチャン市長であるスカン・マハラートが、20~24日の日程で平壌を訪問していたのだ。ラオス政府の脱北者問題の処理に、いかなる形であれ影響を及ぼす可能性のある変数であった。しかし、政府や現地大使館が微妙な時期になされたこうした重要な北韓-ラオスの外交接触に、どれほど警戒心を持って注意を注いだのかは疑問だ。

 そして数日後の27日、韓国大使館はラオスから「彼らを中国へ追放した」との通知を受けた。しかし、その時はすでに北韓大使館が彼らの身柄を引き取り、彼らを旅客機に乗せて中国昆明に連れて行った後であった。北韓は昆明に到着した後、全く遅滞なく直ちに旅客機を乗り換えるようにして、この日の夜、北京へ彼らを移動させた。チュ宣教師は「(調査過程で)子供たちの証明写真を撮り、署名を受け取ったのが、彼らのパスポートを作るプロセスであったことを一歩遅れで気が付いた」と話した。北韓はかれら脱北者の移動のために何人かの要員を同行させるなど、前例のない計画的で組織的な動きを見せた。

北韓 脱北者を旅行者に身分洗濯し中国へ。政府 対応 後の祭り

 韓国政府は突然の状況展開に大きく慌てた。大使館は直ちに本庁に脱北者の中国への追放事実を報告し、ソウルではこの日の夜、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官主宰で緊急対策会議が開かれた。対策会議では、ラオス、中国など関連国に協力を要請することにして、李京秀(イ・ギョンス)次官補を団長とするタスクフォースが組まれた。 しかし「牛を失ってから牛小屋を直す」であった。

 脱北者はすでに北韓要員の統制を受けながら中国を旅行中だった。その上、彼らはラオス駐在北韓大使館が用意したと見られる旅行証明書など関連書類を全て備えた合法的旅行者に「身分洗濯」を終えられた状態であった。外交部当局者は「彼らが他の脱北者とは異なり合法的な中国旅行者になったので、中国当局が彼らの北への送還を防ぎたくとも、法的にそうしにくい状況になった」と話した。

 政府の無能は、脱北者の北への送還経路を把握する際に、もう一度現れた。北韓は、脱北者一行を北京到着の翌日である28日昼に高麗航空機に乗せて平壌に送った。 しかし政府は、このような事実を全く知らずにおり、翌29日に把握した。政府は今回の脱北者問題を、人権関連国際機構に訴える方針だが、すでに脱北者が北韓領内に入った以上、「後の祭り」に終わる公算が高い。

 外交部は脱北者一行が平壌に入った28日、李廷観(イ・ジョングァン)在外同胞領事大使を尹長官の特使資格でラオスに急派した。脱北者の北への送還経緯を把握してラオスに再発防止を要求するためだった。しかし、李大使はラオス高位当局者から、今後は脱北者問題に原則的に対応する方針との説明を聞いただけだった。ラオス側は「法的に不法入国者は、所属国家と協議して送還するようになっている」として「不法入出国を容認する国、人身売買犯が経由する国というラオスの汚名を払うために努力すると最近の高官級会議で決めた」と背景を説明した。今後、ラオスは脱北者問題には過去のようには協力が難しいとの意向を明らかにしたのだ。

パク・ビョンス先任記者 suh@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/590005.html 韓国語原文入力:2013/05/31 21:27
訳M.S(2895字)

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