本文に移動

重ねられた唇の間で燃えた「自由恋愛の熱望」

登録:2013-05-30 20:15 修正:2013-05-30 20:18
トルコ アンカラの中心で「キスデモ」
トルコ首都アンカラの中央のクルトルルスィ地下鉄駅で25日(現地時間)、 市民200人余りが「キスデモ」を行った。/AP ニューシース

地下鉄の駅で男女愛情表現に
駅側「不道徳行動中止」放送
政府も地下鉄側擁護に出る
SNSで集まった市民 駅前デモ

「イスラム主義」エルドアン総理の下
脅威を受ける世俗主義者「奇襲抵抗」

 25日午後6時30分、トルコ首都アンカラの中心のクルトルルスィ地下鉄駅前に市民約200人が集まった。「主に若いトルコ人たちだった」と <アルジャジーラ> など外信は伝えた。

 彼らは小さなプラカードを準備した。「自由なキス」、「キスはあなたのために良い」、「私たち、愛そうか」と書いた。愛の秘密のメッセージに似ている文章は、彼らの政治的スローガンだった。

 「我々はキスをする権利がある」と叫ぶ若者達が駅の中に入って行くのを警察が阻んだ。カメラ記者たちが近付いた。アンカラの若者達は抱き合い、キスをした。カメラの前でキスをするのが人々の目的だった。ただ、当初彼らが期待していたカメラは地下鉄の駅の中にあった。

 22日、クルトルルスィ駅構内の拡声器から案内放送が流れた。「乗客の皆さん、道徳に沿った行動をしましょう」。どういう意味なのかは後でわかった。国営地下鉄当局は「構内セキュリティーカメラが不適切な行動をする乗客を捉えた。私たちはこの種の行為から公衆を保護する権利がある」と明らかにした。

 「不適切な行動」が何かはまだ明かされなかった。地下鉄を待っていた男女がキスをしたというニュースもあるが、単に手を握っていただけとの主張もある。議論が起き、トルコ政府スポークスマンは「表現の自由と不道徳を混同する人々がいる」と明らかにした。火に油を注いだ形になった。

 ある市民が 「フラッシュモブ」(稲妻デモ)を提案した。「その地下鉄駅で自由にキスをしよう」との提案がソーシャルメディアを通じて広がった。駅構内のセキュリティーカメラの前で集団でキスをしようというのだった。

 若者達は結局キスには成功したが、長時間唇を重ねていることはできなかった。政権与党である正義開発党(AKP) 青年党員たちが側で反対デモを起こした。「不道徳は自由ではない」、「神は偉大だ」、「イスラムが勝利するだろう」と叫んだ。経典から引き出した峻厳な文章は、彼らの政治的スローガンだった。

 「キスデモ」は数分だけで終わったが、2つの集団の政治的スローガンに込められた緊張まで消えたのではない。トルコ最大野党である共和人民党は政府に対して公開質疑書を送った。「セキュリティーカメラの目的は安全を守ることか、道徳の基準を作ることか、 一体誰が乗客の道徳性を判断する根拠と定規を持っているのか」などを尋ねた。

 その質問には「イスラム律法政治」を主導するレジェップ・タイイップ・エルドアン首相に対する批判が込められている。議会多数を占める正義開発党の主導でトルコ議会は先週「酒類取締法案」を通過させた。夜10時以後、すべての公共場所での酒類販売を禁止する内容だ。医療施設、カフェ、食堂などでは酒類の販売自体が禁止される。

 すでにトルコ航空はすべての路線で酒類サービスを中断した。最近トルコ航空は、女性乗務員に頭からつま先までを覆うチャドルを制服に採用しようとしたが、抗議に押されて留保したりした。

 一連の措置がトルコの「国体」に違いない世俗主義・政教分離原則を揺さぶっていると反対派は責める。ムスタファ・ケマル・アタチュルク初代大統領は、1924年に制定した憲法で、ムスリムを国教に定めるという条項を無くした。公共場所でのヒジャブ着用禁止、イスラム政党閉鎖などの世俗主義の措置も後に続いた。

 以後、世俗主義は軍部、検察、裁判所などによって擁護されてきた。一方、エルドアン首相は、2002年以後長期政権を続けながら世俗主義勢力の支持基盤を侵食した。彼が軍事独裁を終息させて民主主義を強化したとの評価もあるが、その裏側にはイスラム主義政治路線がある。イスラム圏の代表的な世俗主義国家であるトルコが、イラン式「政教一致・神政政治」に移るのではないかとの憂慮が内外にある理由だ。

 今日のトルコ大衆はイスラム主義側にやや傾いている。2010年9月、世俗主義とイスラム主義が取り組んだ改憲投票で58%がイスラム主義を強化する内容の新憲法を支持した。当時国民投票を控えてエルドアン首相は「イスラム的法律制定を遮った将軍たちと裁判官らの時代を終わらせなければならない」と主張した。

 反対派の力が消えてしまったのではない。世俗共和国樹立記念日である去年10月29日、数千名のデモ隊は国父として崇められているケマルの墓地に向けて行進して「トルコは世俗主義国家であり、今後も世俗主義に留まるだろう」と熱唱した。25日、集団でキスをした若者達の舌も、同じことを言いたかったのだ。

アン・スチァン記者 ahn@hani.co.kr

http://pictorial.hani.co.kr/slide.hani?sec1=004&sec2=001&sec3=069&seq=0 ショートカット:
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/589019.html 韓国語原文入力:2013.05.26 21:41
訳M.S(2302字)