本文に移動

[ハンギョレ21企画] 死ぬほど仕事をしたのに死ねとばかりに

原文入力:2011/07/24 15:11(7167字)

  MB政府になって改悪された労働災害関連法…
事業主 政府の内心ばかり気をつかい主要疾病は除き
労災認定基準を厳格化

←25日午前ソウル、清渓広場で2011年国際労災死亡労働者追慕の日をむかえ労働健康連帯、毎日労働ニュース、民主労働党ホン・ヒドク議員、民主労総、韓国労総で構成された'労災死亡対策準備のための共同キャンペーン団'会員たちが2011最悪の殺人企業選定式を開いている間、労災死亡者を象徴する靴に菊をたむけている。 キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr

 "この法は労働災害補償保険事業を施行し勤労者の業務上災害を迅速且つ公正に補償し、災害勤労者のリハビリおよび社会復帰を促進するため、それに必要な保険施設を設置・運営し、災害予防とその他勤労者の福祉増進のための事業を施行し勤労者保護に尽くすことを目的とする。" 労働災害補償保険法1章1条だ。 法は労働者が働いて負傷したり疾病にかかった場合、‘迅速’且つ‘公正’な補償を約束している。早い時期に再び仕事が出来るよう支援するとも定めている。だが、現実はそうではない。 _編集者

パク・ソンチョル(34)氏は2010年12月、白血病の判定を受けた。 高麗大九老病院に入院し白血病検査と坑癌治療を受けた。 その費用が2千万ウォンを越えた。 それ以上は使える金がなかった。 去る4月22日に退院して現在までソウル、九老5洞にある自宅で過ごしている。 病院から 「また来て治療を受けなさい」という督促電話がかかってくるが暮らし向きが許さない。黒くくすんだ首の注射跡とまだらになった髪の毛が治療の痕跡を見せる。

疾病の場合、半数近くが‘不承認’

パク・ソンチョル氏もかつては健康な労働者だった。 2008年から仁川南東工業団地のK産業で働いていた。 この会社は三星電子とLG電子に携帯電話部品を納品している。パク氏は印刷回路基板(PCB)に電気が通じさせるメッキ作業をしていた。 この過程で1級発ガン物質であるホルムアルデヒドなどの化学薬品を使った。パク氏は「仕事をしているときにゴム手袋をはめたりマスクを着用したことがない」として「仕事がやりにくく使う人は殆どいなかった」と話した。

仕事は非常に忙しかった。 2010年には名節にも二日しか休めなかった。普段も1ヶ月に休める日はせいぜい三日程度だった。それも一日は夜勤明けの休日であり、休日らしい休日は二日しかなかった。そのようにして働き1ヶ月に170万ウォン取った。それでも夢があった。お金をたくさん稼いで両親を楽に迎えるという夢。白血病がその夢を壊した。 今は労働災害が認められ治療も継続できるようにという願いだけだ。パク氏は「夢をかなえられる境遇ではない」として 「治療だけでも受けられれば」と話した。
労働災害の認定を受けるには遠く険しい戦いを勝ち抜かなければならない。パク・ソンチョル氏は初めの段階から拒絶された。姉のクンジャ氏は去る7月5日、会社を訪ねた。労働災害申請書類に会社の印鑑を貰うためであった。だが、会社関係者は「1990年の会社設立以後、病気による労働災害は一件もなかった」として署名を拒否した。 それどころか「会社で仕事がよくして退社したのに、今さらそういうことを言われるとはさびしい」と咎めた。 パク・ソンチョル氏は7月20日、勤労福祉公団に労働災害を申請する予定だ。 結果が出るまでどれくらいかかるかわからない。 その時まで治療は先送りしなければならない。 認められない可能性も高い。 その時は完全に治療をあきらめなければならない。

白血病被害者が労働災害の認定を受けるには長時間待たなければならないという事実を見せる事例は多い。三星電子半導体工場で働き、白血病で亡くなったファン・ユミ、イ・スギョン氏らは6年間にわたり勤労福祉公団と三星電子を相手に戦った。勤労福祉公団が労働災害を認めずに審査請求、再審査請求を経た後、訴訟を起こした。結局、去る6月23日 裁判所は労働災害を認めた。だが、最近 勤労福祉公団は控訴を決めた。

麗水(ヨス)産業団地で1989年から2005年まで足場工(建設現場で臨時の足場を設置する労働者)として働いたイ・ジェビン(53)氏も同じだ。彼は2006年に肺癌にかかった事実を知り労働災害を申請した。建築の仕事に携わり吸入した石綿が原因だと考えた。だが、拒絶され訴訟を選んだ。2010年3月 1審、2011年2月に2審で全て勝訴した。 だが、イ氏は治療費を受け取れなかった。 イ氏は長く険しい戦いに耐えられず去る1月に亡くなった。イ氏の代わりに夫人が遺族給付と葬儀費を受け取った。

このように働いて亡くなったり負傷した人々が労働災害の認定を得ることは難しい。李明博政府になってからは一層難しい。2007年に労働災害を申請した9万9729人の内、9582人(9.6%)が認められなかった。李明博政府スタート初年度の2008年には10万5734人の内9928人(9.4%)が、2009年10万9300人の内 1万1479人(10.5%)が不承認を受けた。2010年には11万1088人の内 1万2443人が申請から落ち不承認率が11.2%を記録した。これらの内 疾病の場合、昨年48.5%の不承認率を記録し申請者2人中1人の割合で認定を受けられなかった。李明博政府になって時間が経つほど労災申請の不承認率が高まっているわけだ。

苦痛を訴え自殺する人も

労働災害の認定率があまりにも低い現実に絶望し自殺するケースもある。韓国GM(旧 GM大宇)に通っていたムン・某(46)氏は去る7月9日、自ら命を絶った。遺書に「腰が痛くても痛いとも言えずに死ねとばかりに働いた。(中略)仕事によってかかった病気であることが明らかなのに、何一つ肩を持ってくれも慰労することもない」と訴えた。 彼は「私の代わりに私の家内を入社させ私達の子供たちが無事に大きくてなって行けるよう配慮を望む」と書いた。 韓国GM労組関係者は「ムン氏は労災申請を準備中だった」として「椎間板のような筋骨格系疾患が認められるケースは10%にもならず悩みが多かったと理解している」と話した。 また「労使団体協約の中に、職員が亡くなった場合、遺族が就職できる条項があり、未亡人が会社に出勤する予定だと理解している」と付け加えた。

労災申請不承認率の増加問題は勤労福祉公団側も知っているようだ。公団関係者は「労働部が作った法規定により処理しただけ」としながらも「最近、不承認率が高まり問題と指摘されていることを知っている」と話した。 彼は「これを改善するために労働部でタスクフォースチームを作り議論している」と付け加えた。

状況がこのようになった理由として、専門家たちは関係法律と‘業務上疾病判定委員会’を挙げる。現行の労働災害補償保険法は労働災害を業務上事故と疾病に区分している。労災認定基準は大統領令で定める。施行令(大統領令)には業務上の事故に対しては‘業務遂行中の事故’ ‘施設等の欠陥などにともなう事故’ ‘出退勤中の事故’ ‘行事中の事故’ ‘特殊な場所での事故’ ‘療養中の事故’ ‘第三者の行為にともなう事故’等、比較的詳しく決めている。

反面。労災と認められる疾病は一般人が法を調べても簡単には理解できないほど複雑だ。労働災害と認められる業務上疾病を知るには産業災害補償保険法とその施行令、労働部長官告示などを全て調べなければならない。 具体的には2008年6月に改定された施行令で業務上疾病と認められるためには△勤労者が業務遂行過程で有害・危険要因を取り扱ったり露出した経歴があり△取り扱い・露出した業務時間などが病気を誘発するに足り△取り扱い・露出と病気間の因果関係が医学的に認められるなど三条件を全て充足させるよう定めている。しかも具体的な認定基準が厳格だ。 施行令の別表3には脳心血管系疾患、筋骨格系疾病、難聴、化学物質中毒など23項目について業務上疾病の認定基準が定められている。

この内、脳心血管系疾患は短時間内あるいは慢性的に業務負担が増え脳血管や心臓血管に影響を与えた場合にのみ認める。更に労働部長官告示を通じて、増えた業務負担は短時間の場合、一週間以内の業務量や業務時間が日常業務より30%増えたり一般人が適応しにくい強度に変わった場合と基準を定めている。慢性的な業務負担増加は3ヶ月以上、日常的な業務に比べ過重な肉体的・精神的負担を発生させた場合に認めるようにしている。

だが、普段から世界最長労働時間に苦しめられている韓国の労働者が‘業務負担増加にともなう疾病’を認められることは容易でない。韓国は経済協力開発機構(OECD)国家中で唯一、年間勤労時間(2074時間)が2千時間を越える国だ。日常業務より30%以上過重に仕事をすれば勤労基準法違反だ。その上、施行令が変わる過程で主要疾病が除かれた。既存の高血圧性脳症(激しい高血圧により発生する脳血管合併症),狭心症などが外された。そのために脳心血管系疾患の不承認率は跳ね上がった。 この他に筋骨格系疾患は‘退行性’という理由で、職業性癌はその種類や発ガン物質の認定幅が制限的なため労働災害と認められないケースが増加している。

完治していないが“家に帰れ”

←労働災害申請不承認率推移

ドイツは労働者の業務が一般の人たちと比較して特定疾病に露出する憂慮が高い場合、これを職業病と認定する包括規定を設けている。また、業務上疾病として64種を挙げていて、連邦労働社会部内の独立機構で二ヶ月に一回ずつ会議を開き新しい職業病追加を検討している。日本では労働災害を認めない免責条項を設け、この条項になければ労働災害と認定している。また、被害が発生する場合、労働者が‘業務関連疾病’を立証しなければならない韓国とは異なり、事業主が労働災害に該当しないという証拠を立証してこそ免責を受けられるようにしている。民主労総金属労組ムン・キルジュ労働安全保健局長は「李明博政府になって関係法律が改悪され、勤労福祉公団が財政安定性を追求する中で労働災害不承認率が非常に高まった」とし「被害者の大部分が家長であるため労働災害と認められなければ被害者はもちろんその家庭の生計が脅威を受ける」と話した。

産業災害の認定を受けるために労働者が体験しなければならない困難はそれだけではない。 疾病は勤労福祉公団傘下の業務上疾病判定委員会が判断する。2010年12月基準で、委員会には6ヶ支部に医師258人、弁護士・労務士32人、労災専門家13人、教授3人など計306人が参加している。 医師は大部分が神経外科と整形外科専攻(122人)だ。 多様な疾病が労働災害として申請されるが専門家抜きで審議が進行されるケースが発生する所以だ。 さらに6ヶある支部の委員長は勤労福祉公団の職員が引き受ける。延世医大 ウォン・ジョンウク教授(予防医学)は「疾病は多様だが一度の審議で20~30件を処理しており、専門的知識がない医師が参加する場合も多い」として「医学的知識がない弁護士や教授なども判定委員会に参加し疾病を判断している」と話した。委員会は7人の委員が参加して過半数の賛成で決める。ウォン教授は「6ヶ支部委員長が公団所属なので疾病の労働災害判断を独立的に行うことは難しい構造」と指摘した。

多くの関門を通過して労災を認められても困難は多い。 労働災害給付だけではすべての治療費を賄えないためだ。蔚山のキム・ジュンヒョン(35)氏は、去る1月 白血病で労働災害を認められた。発病原因は現代重工業の下請け業者KNDT&iで行った非破壊検査だ。この検査は設備を壊さずに放射線を利用して欠陥を確認するものだ。彼は船舶溶接の仕事が終わった夜に放射線撮影を10年間続け放射線に露出した。 キム氏の兄は「放射線撮影の時、露出程度を確認する‘熱ルミネッセンス線量計’(TLD)バッジをつけさせず2人1組作業を一人でさせるなど作業環境が劣悪なことと知っている」と話した。キム氏は労災認定の後、公団から1100万余ウォンを受け取った。 だが、それはそれまでにかかった費用3千万ウォンの3分の1水準に過ぎない。キム氏の兄は「認められても医療保険が適用されない部分は費用が払われない」として「少しでも良くなるためには骨髄移植や新薬と治療技術を使わなければならないが、そうすると自分の金を使うほかはない」と話した。

その上、労災被害者が完治しなくとも勤労福祉公団が治療終了を決める事例もある。労働災害を認められたピョ・某氏は47才だった2007年3月に自ら命を絶った。 2000年に職場で脳出血で倒れた後、労働災害を認められ  治療を受けてきた。だが、勤労福祉公団は2007年に長期患者という理由で諮問医師協議会を招集し治療終結を決めた。治療がさらに必要だという主治医の判断は無視された。民主労総チェ・ミョンソン労働安全保健局長は「公団は労働災害被害者らの費用負担を減らすため、しばしば治療を終結させている」として「最近では直接病院を訪ねて行き治療終結を強要するケースもある」と話した。

事業主と政府が労働災害を立証すべき

このような事情のため、専門家たちは関連法律を直さなければならないと指摘する。労働健康連帯イム・ジュン委員長は「現在は労働災害被害者が自身が該当法律の認証基準に該当すると立証しなければならない」として「だが、三星電子半導体被害者の労働災害を裁判所で認定したように、立証責任を事業主や政府(勤労福祉公団)が負うことが正しい」と話した。また「労働災害申請手続きとその対象を追い立てるために健康保険を利用するケースが多く、健康保険料の損失が相当ある」として「健康保険のように被害者が病院を訪れ労働災害に該当するか医師が判断して治療を受けることが被害者の健康と回復を確保できる方法」と話した。合わせて「労働災害を認められた時に受けられる失業給付、遺族給付、障害給付などが70%水準に止まっており、被害者補償が現実化されなければならない」と付け加えた。

国会でも一歩遅れて関連法律の改正の動きが起きている。ハンナラ党カン・ソンチョン議員と民主党イ・ミギョン議員は各々、労働災害立証責任を事業者や政府に負わせる法律改正を推進している。 イ・ミギョン議員は「現行法は疾病と業務関連性を労災被害者が明らかにするようにしており、立証が事実上難しい」として「職業性癌の場合、発病原因を確認しようとしても企業秘密を理由に公開しないためなおさらだ」と話した。 また「こういう環境で疾病の業務関連性を労働者が立証するようにするのではなく、疾病が業務と関連性がないという点を勤労福祉公団が立証するようにすることが妥当だ」と付け加えた。

イ・ジョンフン記者 ljh9242@hani.co.kr

クィックサービス(バイク便)運転士、自ら保護しり?

特殊雇用職従事者を愚弄する政府

李明博大統領が去る6月23日、宅配運転手と懇談会を行った。続けて宅配運転手をはじめとする特殊雇用職の労災保険適用を関係長官たちに指示した。 そして半月後の7月8日、政府は宅配運転手とクィックサービス運転手を労災保険適用対象に決めた。

法によれば、労災保険対象はすべての労働者だ。法は勤労者を使うすべての事業または、事業場に適用するよう定めている。ただし別途の年金体系がある公務員、軍人、船員、私立学校教職員などをはじめとして、常雇い勤労者数が少ない事業場は例外としている。

特殊雇用職労働者は勤労基準法上は勤労者でなく個人事業者に分類され労災保険適用枠から抜けおちている。ただし保険設計士と学習誌教師、ゴルフ場キャディー、コンクリート ミキサートラック運転者などは2008年から事業主と半々に負担することを前提に加入を選択することができるようにした。

これに加えてイ大統領の指示により政府が宅配運転手とクィックサービス運転手を労災保険対象に含ませたわけだ。 宅配運転手は事業主と半々に、クィックサービス運転手は本人が全額を負担することを前提に加入を選択できるようにした。

だが、労働界は労働者を愚弄する処置として反発している。特にクィックサービス運転手の場合、政府が政府自らの判断まで否定しているとして批判した。 2010年勤労福祉公団が発刊した‘クィックサービス、代行運転従事者に対する労災保険適用妥当性研究’を見れば「クィックサービス従事者が無線で業務統制を受けており勤労従属性が強いながらも勤労者として享受すべき基本的な保護恩恵を受けられずにいる」とされている。それにも関わらず政府は彼らに事業者の地位を付与し、労災保険料の全額を負担するようにしたのだ。しかも既存4ヶ職種の特殊雇用職労働者の労災保険加入率が2008年の15.34%から2010年9月には9.65%に継続低下している状況を改善する対策を出さずに、宅配運転手を労災保険対象に含めたことも手柄作りに過ぎないという批判が多い。

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/488733.html 訳J.S