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[ハンギョレ21 2010.07.16第819号] ブリック(BRIC)が がやがや言い始めた

[特集] ファン・ウソク論難の出発点である科学者の集いサイトで、天安艦討論活発(3342字)
韓国科学技術者連合も問題提起、教授たちも発言し始める

ハ・オヨン

"合調団は多孔質酸化アルミニウムに水が強く吸着していて40%に及ぶ水が試料準備過程と分析過程で起こる蒸発にもかかわらず、探知されたと主張しています。 しかし、多孔質であろうが、なかろうが蒸発条件に変化はないので、これらが湿った状態ではありえません。" (ID ヤン・パンソク) "

天安艦箝口は正しくない"

科学者たちのコミュニティ サイトとして、ファン・ウソク事件当時に重複写真掲載問題を指摘し有名になったブリック(BRIC)。 爆発物質に関して疑惑を提起したヤン・パンソク博士と他の科学者たちの間で討論が進行中だ。

去る7月7日、科学者の集いインターネット サイトの ‘ブリック’(BRIC・bric.postech.ac.kr)の声の広場掲示板に上がったこの文には、2日間でコメントが130ヶ余り寄せられ、照会数は2200件を越えた。 カナダ マニトバ大 地質科学科分析室長であるヤン・パンソク博士があげた文だ。彼は天安艦 ‘爆発物質’ の成分が民・軍合同調査団(以下 合調団)が主張するアルミニウム酸化物(Al2O3)ではなく、水酸化アルミニウム(キプサイト・Al(OH)3)ではないかという疑惑(818号イシュー追跡 ‘爆発物質は天安艦から出た?’ 参照)を提起した後、国防部が去る7月6日に説明資料を出し、それに再反論する文をブリック掲示板に上げた。

5年前のファン・ウソク事件を覚えている人なら ‘生物学研究情報センター’ と呼ばれるブリックを覚えているだろう。当時、米国<ニューヨークタイムズ>はこの事件を報道しつつ 「ファン・ウソクをなぎ倒したすべての批判は若い科学者たちのウェブサイトで先ず出てきた」 としてブリックを紹介した。当時、幹細胞写真重複掲載疑惑を最も最初に提起したのがブリックの科学者たちだった。当時、ブリックの活躍はヤン・パンソク博士がこちらを訪ねた理由でもある。ブリックは低劣な非難ではなく建設的な議論をするための土台が用意されたところとしても有名だ。

天安艦事件が起きた直後からブリックでの事件に対する議論が活発だったわけではない。天安艦事件初期には科学的議論ができる領域が殆どなかったためだ。だが、合調団調査結果に対するイ・スンホン バージニア大教授(物理学)とヤン・パンソク博士の科学的反論が始まる中で雰囲気が少しずつ変わってきている。天安艦の話を自制しようという文が飽くことなく上がってきたが、従来とは異なり 「天安艦問題が科学的に一点の疑惑なしに解決される時まで、皆さんは絶えず疑問を提起しなければなりませんね。以前、ファン・ウソク事態のようにです。バイオ専攻だから天安艦事態に対して口を閉ざすという態度は科学者として正しい態度ではないようです" (ID チナダ(過ぎる))等の内容がコメントにあがり始めた。

ヤン博士の文を契機にブリック掲示板ではヤン博士と若い科学者たちの間のコメント討論が進行している。討論は7月7日朝8時に始まり9日午後2時を過ぎた現在まで続いている。2日間、眠らずに夜を明かしたわけだ。その中では地域がカナダなのかソウルなのか、専攻が生物学か物理学か地質学かは問題にならなかった。自身が分からない部分は論文を紹介され、また自身が他の論文を紹介して知恵を集めるところだ。

現在まで天安艦と関連した議論は韓国科学技術者連合(www.scieng.net)で一層活発だった。このサイトの時事討論掲示板は、イ教授とヤン博士など2人の研究者の報告書が言論に公開される度に、それを紹介し活発な討論が展開した。過去のファン・ウソク事件当時、研究倫理などの問題を提起し物静かな省察を主導したのとは異なり、議論がだいぶ攻撃的だ。1日に平均2~3個の文が載り、照会数は多い時には2千件を越える。会員数が2万8千人余りであることを勘案すれば少ない数ではない。内容は主に ‘爆発物質’ であるアルミニウムと関連した論文を探し紹介しながら討論を誘導し、それを土台に質問と答をやりとりする形だ。去る7月7日、国防部の説明が出てきた後には「試料が水酸化物ではなかったことを証明すれば良いことなのに、煙突などからキプサイトが見つからなかったと?」 (ID PrimaMateria)等、直接的に説明の弱点を指摘する文が載ってきたり、「成分分析をする際に、基本的に行う実験(DSCデータ)で、アルミニウム酸化物なのか水酸化アルミニウムなのか、融解点の違いで確認でき、水分含有有無、非結晶質可否も知ることが出来ます。データを見せないことが変です。 (中略) 熱分析を行えば、どんな物質なのか簡単に知ることが出来ます」(ID 緑柱石)等、具体的な解決策を提示する文も上がってきた。

こういう雰囲気は学界でも感知されている。これまで学者たちはインタビューはさておき、一言記事化されることすら敬遠する雰囲気だった。記者が諮問を求めても「イ・スンホン教授は物理学教授だから物理学教授が答えざるをえないのではないか」と言ったり、「私は物理学専攻だが、イ教授のような固体物理学専攻ではないので、よく分からない」という返事が大部分だった。最も多い答は「政治的論難に関わりたくない」ということだった。だが、去る6月29日、言論団体を対象に開かれた合調団の説明会が報道された後から、雰囲気が段々に変わってきている。疑惑提起に対し説明をほとんどしなかった合調団が返事をし始めるや、かえって学者たちの疑問はより大きくなったのだ。
ある国公立大教授は「今、通話しながらでも実験できる程に簡単な実験なのに、なぜそのようなつじつまが合わない返事をするのか理解できない」として「我が国には数万人の材料分野の専門家がいる。専門家たちが出れば爆発物質と関連した問題だけは簡単に解決されるだろう」と声を高めた。彼は7月初め<ハンギョレ21>との電子メール インタビューで、合調団の今後の説明を予想することもした。 ‘爆発物質は堆積物質?’(<ハンギョレ21>インターネット版6月30日報道) 記事を見た後、電子メールを送ってきて「キプサイトという単語より水酸化アルミニウムを一緒に併用するのが正しい」として「キプサイトだけを用いた場合は、それが我が国に存在しないという話だけを繰り返すことができる」と提案した。これは天安艦事件を記事化して以来、記者が国内科学者から初めて受けた自発的助言だった。この教授の予想はずばり的中した。国防部は実際に去る7月6日「キプサイトという鉱物は我が国の一部地域だけに存在し、ペクリョン島地域では発見されないと伝えられている」と発表し、一部言論でもその話をそのまま引用し報道した。

科学者が先に実験を提案

具体的に方向を提示したり直接実験を提案してくる科学者もいる。ソウル大のある理科系列教授は「グラフだけを見て、ああだこうだと話すのは変数を考慮できないこともある」として「公開的な直接実験に進まなければならない。試料を出せと要求しなければならない。」と話した。別のある国公立大教授は「私たちは若いころから学界で、嘘をついた途端に終わりだということを絶えず注入された人々」としながら「専門家たちがもう少し範囲を広げて議論を進行すれば、真実が明らかになるほかはない」と話した。ある国策研究所の研究員も立ち上がった。「エネルギー分光器とエックス線回折機とは、全国的に数千台に達する機械」だとして「実験を巡って論議を起こすこと自体が話にならない。学部生でもできる実験であり分析できる結果」と話した。

ハ・オヨン記者 haha@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/special/special_general/27721.html 訳J.S